ヨーロッパの憂愁庭園★華麗なる美とロマン

魅せられし19世紀末の美や浪漫。文学・絵画・映画・モード等から導かれる心の放浪♪

『肉体の悪魔』レイモン・ラディゲ:RAYMOND RADIGUET

2007-05-14 | 詩篇・作家
レイモン・ラディゲ(Raymond Radiguet:1903年6月18日~1923年12月12日)。正しく夭折の天才作家ラディゲ。僅か20年の生涯とはあまりにも運命は皮肉なもの。逸早く才能を見抜き寵愛していたジャン・コクトーは、ラディゲの死の悲しみを引き摺り10年(20年とも)阿片に溺れる生活となる。いかにコクトーにとってラディゲの存在が大きなものだったのかと想像するしかないのだけれど...。この小説としての処女作『肉体の悪魔』(習作は14歳頃とも言われている)は17歳の時のもの。高校生の少年フランソワが年上の人妻マルトに恋をするロマンス(悲恋物語)。この作品はラディゲの小説を先に読み、ずっと後になってジェラール・フィリップとミシュリーヌ・プレールによるフランス映画の『肉体と悪魔』(1947年)を観ることに恵まれ、ジェラール・フィリップ(フランス映画史上、未だにこの貴公子”ファンファン”を凌ぐ美しき男優を知らない、きっとこの後も在り得ないと思っているけれど)を始めとする気品溢れる美麗さ、素晴らしい音楽などと共に好きなもの。このクロード・オータン=ララ監督の映画と原作であるラディゲの『肉体の悪魔』は対となって私の心と脳裡に焼きついているという感じもする(三島由紀夫の『ラディゲの死』の感銘も重なっている)。

ラディゲの次作『ドルジュル伯の舞踏会』は、執筆中に病床(腸チフスに侵され)に伏しながら書き上げられたもので、発表されたのは死後だという。コクトーとラディゲの関係も深いものだし、多くの人々がまだまだラディゲの作品を待っていたと思う。パブロ・ピカソもラディゲの才能と魅力に魅せられたおひとりで、17歳のラディゲの肖像を描いている。この絵が表紙の日本語訳の『肉体の悪魔』は古いものなのだろうか...記憶にあるけれど。今は新訳版としてジェラール・フィリップ (彼もまた夭逝)が表紙のものが出版されているようだ。私は一日中でも読書していられる。一日中でも映画を観ていられるという体質なので、お仕事やコンディションとのバランスが難しい。この新訳版もまたそのうち読んでみたいと思うので、読書課題も増える一方の今日この頃。

新訳 肉体の悪魔

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