哲学以前

日々の思索を綴ります

弁証法、そして相互浸透

2017-04-02 06:47:34 | 日記
ブログの毎日のアクセス数を見ると、閲覧していく方々がどういった方面に関心があるか想像できるような気がします。

今回はそこを意識して、私の本来の主旨ではない面を書いてみようかと思います。引き出しは多いほうが良いわけですから。

最近の私の主張である「論理というものは絵にも!描ける」という理解の一つのルーツは、飽くまでも「ルーツの一つ」に過ぎませんが、三浦つとむの著述にあったように思います。

10代後半に読んだ『弁証法はどういう科学か』の中にマンガからの切り抜きが掲載されていて、私も小学校の時分からマンガ大好き少年でしたから本の理解に大いに役立ったと思います。

この、マンガの登場人物の頭から吹き出しが出ている絵なんですが、英語では「Speech Balloon」というセリフを書いた風船と呼んだり、「Thoght Balloon」という考えている・頭に思い浮かべていることを書いた風船と呼んだりするみたいなんですね。


この「Thoght Balloon」頭に思い浮かべていること、それは何も客観的な外界の映像に限ったものでもなく、言語としての文字を思い浮かべていることもあるでしょうが、そこを媒介として言語としての表現が行われて行きます。


この頭から吹き出しが出ているマンガの絵は『弁証法はどういう科学か』の初版には掲載されていていなかったと記憶していますから、版を重ねる中で掲載されるようになったのだとは思いますが、それもこれも著者である三浦つとむが単に「言語」を専門に研究していた人間なのではなく、小説もマンガも映画も芸術作品も「表現」というキーワードで研究していた在野の人間であったことに絡んでいると思われます。

そこが時枝誠記やソシュールなんかの言語学者と一線を画するところかと思われますし、時枝の著作に三浦のようなマンガからの切り抜き・挿絵があっただろうか?とも思うわけです。

ですので、三浦の著述は単に「言葉だけ」「文字言語だけ」といったものではなく言葉も文字も絵画もストーリーも映像も多様に絡んだものだったとも語れるわけです。

そこを三浦自身の著述から引用するならば、

「でも、それらの方法の間には何の共通点もないのでしょうか?ある分野で非常にすぐれた成果をあげたとき、その方法は、ほかの分野にとって、何の関係もない、何の助けにもならないものなのでしょうか?」(『弁証法はどういう科学か』p12)

この「別のことだと区別・識別された分野の発展が他の分野の発展を助けてくれる」という見方は三浦の著述では「相互浸透」と呼ばれ、「区別と連関」という捉え方の一歩進んだ捉え方でしょう。「連関」という捉え方は言わば「関わりが連なっている」「時系列で関わりが続いている」という捉え方ですが、「相互浸透」というのは単に「関わる」=「相手の運動量で飛ばされる」といった認識ではなく、「水が滲む、相手が中に入ってくる、相手の性格を共有する」といった理解でしょうから。

この言語、絵画、映画、マンガなどを表現というキーワードで研究した三浦を「言語学者」という一言で規定することには首を傾げたくなる私ですが、この三浦の「言葉と絵と、その他もろもろが相互浸透している、入り組んでいる」という認識は、論理を見たときに文字だけという理解を否定するものでしょうし、多くの要素が入り組んでいるということは、文字から絵へ、また絵から文字への移行を促すものでしょう。それを三浦に対する「言語学者ならぬ表現論者」という規定から語れると説くか否かは熟慮が必要でしょうが。

この三浦のマンガからの影響をおそらくは受けたであろう図式が薄井坦子の『科学的看護論』(1974年、初版)に描かれています。

このマンガの絵のような人間の身体からThoght Balloonたる思考の吹き出しが出ている絵を看護的な発想の技にせよとばかりに同じ絵を繰り返し繰り返し描いています。
この薄井坦子の著述から育成されたのが保育論の故・海保静子であることは関係者なら周知の事実でしょう。

この三浦つとむの頭から出た吹き出し=Thoght Balloonが文字による言葉Speech Balloonとして表現されることが興味深いところなのです。この部分は管見ではまだ十分に論じられてはいないように思われます。相互浸透、相互影響というか、絵画があったならそこには潜在的に言語的な理解が潜んでいるとか、文字表現があったならそこには潜在的に絵画的な理解が潜んでいるとかいった理解で果たして十分なものかどうかも不確かです。

以上を別の著者の発言で概括するならば

「あなたはモノを食べるときにどの歯で食べますか?」

ということになるわけでしょう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。