雪の妖女に関する報告が京都に届いて、当時の朝廷を驚愕させました。名門安倍家の若い当主が命令を承り、各地から魔物を退治する有能な者を召集して討伐隊を結成しました。奥州への行軍途中で、若い当主が出雲からの巫女と知り合い、だんだんと感情が深まり、遂に深く互いに愛し慕いました。
約千年前に、奥州征伐で残存勢力を平定する源頼朝の軍隊が荒野の中で、白い魔女と呼ばれる雪の妖怪に遭遇しました。行軍中の大軍はほとんど全滅されました。地元の噂では、雪の妖怪はもともと地方領主の一族のお姫様でした。数年前に知らぬ原因で死去しましたが、その後各地から男の命を奪い取る妖女の伝聞が始まりました。普通の人間は近づくだけで命を失い、凜烈たる妖気の前に何も打つ手がなかったのです。
「ありがとう。」二人の間にそれ以上話はありませんでした。ただ、暫く見詰め合ってから、男がお礼を言って、そして、自分の命を少女に託しました。来る時と同じように突然、大雪が散りました。駆け付けた部下が発見したのは、もう生気のない男でした。