お宝じゃなく、仲間のために勇気を出すなんて。
海賊としては、やさしすぎるんじゃないか?
なぁ、ハカセ?
当の本人は、機械いじりに没頭している。
あーだのうーだの言いながら、それでも指先は絶え間なく操作盤の上を動いている。
「ハカセ」
「なぁに?」
声を掛けても、振り返りもしない。
滑るように動く指。
その手が一瞬、止まる。
「っ、」
「どうした?」
何か重大な不具合でも見つかったのか、と手元を覗き込むと、左手の指先に血が滲んでいるのが目に入った。
思わずその手を掴む。
爪が割れていた。
「た、大したことないよ、大丈夫」
「いつやったんだ」
「えっと…」
言い淀むのを見て、なんとなく察しがつく。
「俺を助けた時だな?」
「…う…うん…」
砕けた岩の欠片でもはじいてしまったんだろう。
確かに大した傷ではないが、指先を使うなら痛まないはずはない。
「来いよ」
彼の手を引き、手近な椅子に座らせた。
簡単な処置くらいしかできないが、少しはマシになるだろう。
指先に包帯を軽く巻き終えると、俯いて黙ったままの彼に、終わったぞ、と声を掛ける。
「…ごめん…」
「そこはありがとう、だろ」
努めてあっけらかんとした態度で返せば、うん、そうだね、ごめん、と返ってくる。
「お前が勇気を出した証、お前が俺を助けた証。謝ることなんか何もない」
ただ、
「次からは、俺じゃなく、お宝を選べよ、ああいう場合は」
海賊なんだから、と言えば、彼は小さく首を横に振る。
「そういう勇気は、僕には、出せないと思うから」
呟いて、言葉を続けた。
「マーベラスは、お宝のためなら命を懸けられる。ルカだってそうだろうし、みんな、海賊だから、そうだ」
「まぁ、そうだな」
「でも僕は、僕の勇気は、違う」
はっきりした口調。
顔を上げ、こちらをまっすぐ見つめる。
「僕は、お宝に命を懸けるマーベラスやみんなを、助けたい。だから、そのためならきっと勇気を出せるし、命だって懸けられる」
いつものようにちょっと困ったように笑って、言った。
「…そうか」
「うん。だから、ごめん」
「謝ることはない。それがお前の勇気なんだろう?」
俺はそんなお前のこと、きっと守ってやる。
そう思った言葉は、口には出さなかった。
----------
第3話より、また暴走。
赤がどこまでも緑を引っ張って、でも緑のことを否定するわけじゃなくて、そして緑はそんな赤のために棒高跳び…
でも普段はやっぱりビビりでヘタレな緑でいいと思うの。
しかしまた大妄想だな…。
海賊としては、やさしすぎるんじゃないか?
なぁ、ハカセ?
当の本人は、機械いじりに没頭している。
あーだのうーだの言いながら、それでも指先は絶え間なく操作盤の上を動いている。
「ハカセ」
「なぁに?」
声を掛けても、振り返りもしない。
滑るように動く指。
その手が一瞬、止まる。
「っ、」
「どうした?」
何か重大な不具合でも見つかったのか、と手元を覗き込むと、左手の指先に血が滲んでいるのが目に入った。
思わずその手を掴む。
爪が割れていた。
「た、大したことないよ、大丈夫」
「いつやったんだ」
「えっと…」
言い淀むのを見て、なんとなく察しがつく。
「俺を助けた時だな?」
「…う…うん…」
砕けた岩の欠片でもはじいてしまったんだろう。
確かに大した傷ではないが、指先を使うなら痛まないはずはない。
「来いよ」
彼の手を引き、手近な椅子に座らせた。
簡単な処置くらいしかできないが、少しはマシになるだろう。
指先に包帯を軽く巻き終えると、俯いて黙ったままの彼に、終わったぞ、と声を掛ける。
「…ごめん…」
「そこはありがとう、だろ」
努めてあっけらかんとした態度で返せば、うん、そうだね、ごめん、と返ってくる。
「お前が勇気を出した証、お前が俺を助けた証。謝ることなんか何もない」
ただ、
「次からは、俺じゃなく、お宝を選べよ、ああいう場合は」
海賊なんだから、と言えば、彼は小さく首を横に振る。
「そういう勇気は、僕には、出せないと思うから」
呟いて、言葉を続けた。
「マーベラスは、お宝のためなら命を懸けられる。ルカだってそうだろうし、みんな、海賊だから、そうだ」
「まぁ、そうだな」
「でも僕は、僕の勇気は、違う」
はっきりした口調。
顔を上げ、こちらをまっすぐ見つめる。
「僕は、お宝に命を懸けるマーベラスやみんなを、助けたい。だから、そのためならきっと勇気を出せるし、命だって懸けられる」
いつものようにちょっと困ったように笑って、言った。
「…そうか」
「うん。だから、ごめん」
「謝ることはない。それがお前の勇気なんだろう?」
俺はそんなお前のこと、きっと守ってやる。
そう思った言葉は、口には出さなかった。
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第3話より、また暴走。
赤がどこまでも緑を引っ張って、でも緑のことを否定するわけじゃなくて、そして緑はそんな赤のために棒高跳び…
でも普段はやっぱりビビりでヘタレな緑でいいと思うの。
しかしまた大妄想だな…。