台風7号が去った一昨日の土曜日の早朝、庭で植木鉢を元の場所に戻していると、見慣れない小さな物体が地面から出ているのに気が付きました。
外観は全体に薄いオレンジ色で角張っていて鉛筆のような印象です。空洞らしく、強度に問題ありそうに見受けられます。先端は濃い茶色の、ちょっと触るのは控えたい感じの粘っこい状態です。(黒い点々は土です。)
午前6時30分頃の謎の鉛筆物件。
何なんだこれは?こんな物体は見たことがありません。金曜日は台風対策で何度も庭に出ていましたが見た覚えがなく、土曜日の朝に忽然と出現したとしか思えません。土から出ているのだから植物のようですが、キノコのようでもあり分かりません。まさか、台風の置き土産とか地球外生物ではないだろうけど。何が何だか見当すらつきませんでした。
取り敢えず、「謎の鉛筆物件」としておき、早速、インターネット検索をしてみました。
ところが、いつもは簡単に答えてくれるグーグル先生も今回はお手上げのようでお門違いの回答ばかり。
ふと、頭に浮かんだのが冬虫夏草。昔、白土三平の漫画にでてきたのを思い出しました。
同9時30分頃に掘り出したところ。すでに萎びて自立はできていませんでした。先端の粘液部分には土が付いてしまいました。先端から白い卵状のところまで約6.5cm、全体では9cm程度の長さがありました。
数多くヒットした冬虫夏草の中でサナギタケが似ているようでしたがピッタリ一致とは言えません。
そこで、冬虫夏草であればその下に虫の蛹があるはずと考えて掘ってみました。ところが、蛹はなく白い卵のようなものと数本の菌糸らしきものが出てきただけでした。
冬虫夏草は外れでした。
仕方なく、次々と検索ワードを変えてトライしてみたのですが、スッポンタケ、キツネノタイマツ、キツネノロウソク、キツネノエフデ、似たような画像はあってもぴったりと一致したものはありませんでした。
もはやこれまでと、最後に検索ワードを一気に簡単、かつ、直截的に「東葛△菌類」として出てきたのがツマミタケ。謎の鉛筆物件と酷似しています。
これだ!と思わず声を上げました。キノコだったのでした。
ツマミタケ(Lysurus mokusin (L. : Pers.) Fr. f. mokusin)の特徴をまとめると、次のようになります。
1:アカカゴタケ科 ツマミタケ属
2:幼時は白い卵形だが、成熟すると先端が割れて、中から4~5角柱形の柄が伸長する。頭部は4~5本の枝からなり先端部は結合している。
3:成長が早く萎れるのも早い。
4:頭部の枝の内側に、悪臭のする黒い粘液部分(グレバ)がある。この粘液には胞子が含まれ、誘引された蝿などの昆虫により胞子が運ばれる。
5:名前は、摘まむこと、あるいは摘みそのものから、あるいは、悪臭が鼻をつまむほどだからなど諸説あり詳細不明。
6:ツマミタケの頂部に角(つの)があるものはツノツマミタケ。
えっ、ツノツマミタケ!?念のため、リンクを辿って別のサイトを見てみると、確かにツマミタケに角(突起)を付けたような形です。自分の鉛筆物件の画像を確認するとちゃんと角が出ています。
ツノツマミタケ(Lysurus mokusin (L. : Pers.) Fr. f. sinensis (Lloyd) Kobayasi)でした。やっと正解に辿り着くことができました。
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キノコって難しいなあ。角の有無で違うのか。でも、同じ種類の成長の差のような気もするけれど。まあ、今日のところは多様性に富んだキノコの世界としておこうかな。
今回、私はキノコの類いはまったく無知であることが分かりました。そのため、調査にたっぷり三日分の時間を費やしてしまいましたが、その分勉強になりました。
そして、狭いながらも雑草に混じって不思議なキノコも生える庭!たまには手入れをした方がよいのか、しない方がよいのか。ちょっと悩んでいます。∎
Nikon D5600 / AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G
参考文献
(1) 今関六也、本郷次雄編『原色日本新菌類図鑑(Ⅱ)』保育社、1989.5.
(2) 今関六也、大谷吉雄他編『日本のきのこ』増補改訂新版(山渓カラー名鑑)、山と渓谷社、2011.12.
更新記録
2024/8/21:文章の一部に加筆しました。参考文献を追加しました。