写真は20年以上も前のものとなりました

つれづれなるまゝに日ぐらしPCに向かひて心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつづっていきます

読了。

2020年08月29日 | 随想

 

日本文化の核心「ジャパン・スタイル」を読み解く を何とか読み終えた。とりあえず読了といったところだが、ぅ~ん、「読破」とまでは言い切れない、ちょっとした悔いの念が残っているのも事実。

 

こんなにじっくりと、中味を吟味しながら、時には読み終えた箇所へ何度も戻って、再度、内容を確認したりしながら、熟読に近い読み方をしたのは久しぶりだった。

何しろ、読み終えたときにゃ、最初に何が書いてあったのかを忘れてしまうほどの時間をかけてしまった。

そこで、今一度、目次の紹介をして、内容を振り返ってみることとする。「はじめに・・・」の部分がそのままwebで紹介されており、せっかくなので、リンクを張っておく。

 

はじめに   日本文化解読のためのジャパン・フィルター

第一講 柱を立てる

古代日本の共同体の原点「柱の文化」から話を始めよう。

「稲・鉄・漢字」という黒船/三つの黒船が日本にもたらしたもの/柱の国づくり/”立てる”文化のルーツ/「結び」と「産霊(むすび)」/地鎮祭と『産土」/祖国と常世/「客神」としての日本の神々/近代日本の柱

第二講 和漢の境をまたぐ

「中国語のリミックス」で日本文化が花開いた。

漢に学び、漢から離れる/史上最初で最大の文明的事件/中国語学習ムーブメント/中国語を「リミックス」する/デュアル・スタンダード/紀貫之の革命/『和漢朗詠集』の「なぞらえ」/「しつらい」「もてなし」「ふるまい」/くにぶりの誕生/「古意(いにしえごころ)で思索する/「ジャパン・フイルター」が機能しなくなる

第三講 イノリとミノリ

日本人にとって大切な「コメ信仰」をめぐる。

常民的な生活とお米/「苗代」というイノベーション/稲魂の神格化/祭りのプロトタイプ/「お正月」というおもてなし/日本人の往来観/餅と「いただきます」/「新嘗祭」のあらまし/「大嘗祭」という秘儀/古代のお米管理/稲と藁のミュージアム

第四講 神と仏の習合

寛容なのか、無宗教なのか。「多神多仏」の不思議な国。

多神多仏の国/寛容? 信仰心がない?/日本の信仰はシンクレティズム/多神多仏と八百万の神々/「エディティング・リミックス」という手法/アナロジックな神仏習合/神さまの正体/仏の受容/「顕密体制」と「日本的霊性」/「仏の見せ方」と「神の感じ方」

第五講 和する/荒ぶる

アマテラスとスサノオに始まる「和」の起源。

「静かなもの」と「荒々しいもの一/「和」と「ヤマト」と「日本」/「にほん」と「ニッポン」の使い分け/国号「日本」の成立/なぜ日本がヤマトなのか/和するアマテラスと荒ぶるスサノオ/二つのバンテオンの物語/「すさび」と「あそび」/「サビ」「もののあはれ」「あっばれ」/「数寄」に遊ぶ/「詫び」から「佗び」へ

第六講 漂泊と辺境

日本人はどうして「都落ち」に哀愁を感じるのか。

マージナルを重視する日本/在原業平の「東下り」/歌枕と今様とローカル・ツーリズム/中世のネットワーカー/漂泊者としてのヒルコ=エビス/「無常」と「側隠の情」/「みやび」と「ひなび」/「うつろい」と「負い目」を許容する感覚

第七講 型・間・拍子

間と「五七」調の型と拍子にひそむ謎。

「型」とは何か/日本独特のアンサンブル/伸び縮みする間拍子/「形代(かたしろ)」と「物実(ものざね)」と「憑座(よりまし)」/「定型」の成立/秘伝としての型

第八講 小さきもの

一寸法師からポケモンまで。「日本的ミニマリズム」の秘密。

ポケモンとかぐや姫/小さい神=スクナヒコナ/「小さきもの」と「うつくしきもの」/扇子と手ぬぐいと端唄/昭和の小さきもの/ミニマリズムとの違い/「コギャル」の衝撃

第九講 まねび/まなび

世阿弥が説く学びの本質。現在日本の教育に足りないこと。

日本人はどのように「学び」をしてきたか/官の儒学・民の仏教/江戸時代の読み書きそろばん/「道理」とリクツ/義理人情の限界/お雇い外国人の功績/発見された日本美/教育勅語と国体/世阿弥の「物学(ものまね)」/「まこと」に近づくための「まねび」

第10講 或るおおもと

公家・武家・家元。ブランドとしての「家」について。

「家」というブランド/日本の家はクセモノ/聖徳太子と「国家」/公家の序列/武家の成立/分岐点としての承久の乱/『夜明け前」が間うたもの/「家の死」を見つめた森鴎外/家元性というシステム・茶道の伝承と家/親分子分と侠客たち

第11講 かぶいて候

いまの日本社会に足りない「バサラ」の心意気。

「かぶき者」の登場/「バサラ」の系譜/アポロン的でデイオニソス的な日本/一休の「過差」と「中道」

第12講 市と庭

「庭」「お金」「支払い」に込められた日本社会の意外性。

日本の庭をよく見てみる/「神庭」「斎庭」「市庭」/「市庭」から「市場」へ/貨幣は「まじない」だった/捧げものとしての「幣」/支払いとお祓い/貨幣経済の到来/金の東国・銀の上方/戦国武将の経済改革/日本的な株仲間

第13講 ナリフリかまう

「粋」と「いなせ」に見るコードとモードの文化。

そもそも「文化」とは何か/日本文化への三つのアプローチ/「根まわし」と「埒をあける」/文化の様式としての「さま」/日本的モードをあらわす言葉/日本文化のナリフリ/「粋」と「野暮」/九鬼周造が探究した「寂しさ」/いなせな男、伊達な女

第14講 ニュースとお笑い

「いいね」文化の摩滅。情報の編集力を再考する。

笑いを欲しがる社会/時事と風刺の歴史/「ミコトモチ」と「みことのり」/祝詞に残る情報文化の起源/笑いの原点にいる神々/漫才の誕生/社会文化がモノカルチャー化している/編集力と情報/「いいね」が摩滅させるもの/情報文化のダイナミズムを取り戻すために

第15講 経世済民

日本を語るために、「経済」と「景気」のルーツをたどる。

日本に広がる「症状」/日本を支配するフィクション/権力が行方不明の国/哲学なき権力構造/ウオルフレンが語つていないこと/ジャパン・コンセプトを検討する/修身より大事な「格物致知」/「経済」が失ったもの/「景気」も「経営」もアートだった

第16講 面影を編集する

一途で多様な日本。「微妙で截然とした日本」へ。

「面影」が好きな日本人/「ない」のに「ある」もの/「おもかげ」と「うつろい」/内村鑑三と「二つのJ」/清沢満之が考えた「二項同体」/「絶対矛盾的自己同一」と「朕兆未萌の自己」/西洋的な見方から脱出する/面影を編集してきた日本/編集的日本像のために

あとがき

 

 

振り返ってみると、「第一講 柱を立てる」から「第五講 和する/荒ぶる」あたりまでは新しい視点の発見や認識の再発見などもあって結構楽しんでいたのだが、「第六講 漂泊と辺境」や「第七講 型・間・拍子」では、読み疲れもあったかもしれないし、あまり興味をもっていない分野の話題でもあったからかもしれないが、ちょっとモチベーションがダウンしていった。

第八講 小さきもの」からは惰性で文字を追っていた感が否めず、「第10講 或るおおもと」、「第11講 かぶいて候」、「第13講 ナリフリかまう」、「第14講 ニュースとお笑い」などの章については、もとから抱いている芸能関係への嫌悪感なども手伝って、読むこと自体が苦痛、といった状態だった。どうも、「お笑い」と聞いたり見たりするだけで生理的に拒否反応が起きてしまうようなのだ。

 

いくつかの書評等を紹介しておくと、例えば、松岡正剛が読み解く、「日本文化の核心」に迫るための手がかり~「空海の書、定家の和歌、道元の禅、世阿弥の能、長次郎の茶碗、芭蕉の俳諧、近松の人形浄瑠璃、応挙の絵、宣長の国学、鴎外の小説、劉生の少女像に何か感じるものがあるというなら、わかりやすくしようなどとは思わないことです。」、産経新聞「一聞百見」~「日本ではなにかが起こると比喩的に黒船来航といわれてきたが、最初の一撃は「稲・鉄・漢字」という3つの黒船だった。」、「セイゴオちゃんねる」~「お米、柱、ムスビ、型と間、カブキ、神仏習合、古意(いにしえごころ)、武家と公家、まねび、支払いとお祓い、経世済民、二項同体、面影といったキーコンセプトを次々にあげ、さまざまな切り口、角度から複雑で多層的な“ジャパンスタイル”を読み解きます。」、「flier(フライヤー) 」~「日本文化はハイコンテキストで、わかりにくい文脈や表現にこそ真骨頂がある」、読書メーターなど。どれも参考になると思われる。

 

ここで少し著者についてコメントしておくと、数年前に「松岡正剛の千夜千冊」というサイトに出会い、折につけ参考にさせてもらっていた。現在では千冊をゆうに超えて2020年8月12日付けで第1749夜 ニッポン戦後サブカルチャー史および深掘り進化論という本についてのコメントがアップされている。

第1夜 雪(中谷宇吉郎)から第1430夜 仏教の東伝と受容までのすべてが、「全読譜」として紹介されているが、如何せん、第1330 夜 たまたま(レナード・ムロディナウ)より前のリンクが切れている、というか、アドレスが変わっている。

まぁ、https://1000ya.isis.ne.jp/####.html####のところに4桁の数字を入れれば、指定されたページは残っているので見ることができるわけだが。

 

2014年には「にほんとニッポン ―読みとばし日本文化譜」という書が発刊されているようだが、これは読んでいないので、本書(日本文化の核心)がその集大成版なのかどうかはわからぬ。

いままでの「松岡正剛の千夜千冊」の中で、「文化」をテーマとしたシリーズとしては、第0114夜 日本文化総合年表、第0215夜 日本の伝統、第0439夜 近代日本のデザイン文化史、第0666夜 声の文化と文字の文化、第0887夜 禅と日本文化、第1039夜 〈意〉の文化と〈情〉の文化、第1100夜 型の日本文化、第1211夜 日本の思想文化、第1245夜 日本文化史研究、第1283夜 縄文人の文化力、第1674夜 木を見る西洋人 森を見る東洋人、第1675夜 クジラの文化、竜の文明、などがあるようだ。どれもこれも、一読しておいて損はない。