「クリエイターたちの夢」

※このエッセイは2005年夏に書いたものです。


今年の夏は、２８年前に１作目が公開された「スター・ウォーズ」の６作目にあたる完結編が、日本でも公開された。この映画を観たことがなくても多分タイトルくらいは誰でも知っていることだろう。
これだけの大作ともなると、当然ながら監督と役者たちだけで、ひざをつきあわせて完成させることは出来ない。映画の後のエンドロールのスタッフの膨大な人数の名前をみれば分かるように、いろいろな分野のクリエイターたちが、それぞれの才能を発揮して、気の遠くなるような作業をこなしたからこそ生み出された壮大なイマジネーションの世界なのだ。

映画の公開にあわせて東京ではアートワークの展覧会が開かれた。スケッチや背景の絵、模型、小道具に衣装など、ファンなら一度は見てみたいものばかりだ。細部までこだわって作りこまれた模型は、見れば見るほどその凄さが分かる。映画のために描かれた絵はどれも、眺めるだけでも十分に楽しいものだし、映画ではほんの一瞬しか映らないようなものでも、クリエイターたちの手を抜かない完璧な仕事で作られているんだなぁと感心する。特撮のスタッフには日本人も多く、音響や音楽に至るまで、すべて監督の意図を形にするための最高のスタッフが集結している。

特に衣装には大変興味があるので、今回いくつかの衣装が展示されていたのは、とてもうれしかった。
すべての衣装は、ひとりの才能あふれる女性デザイナーの手で創造されたものだそうだ。登場人物の多さから、そのデザインも膨大な量で、様々な試行錯誤やアイデア、変更につぐ変更を繰り返しながら、監督も満足する最高のものが作られたのだろう。砂漠での撮影にあわせてか、スクリーンの中で見て想像したよりも通気性のよさそうな素材が使われていたりして、デザインだけではない着心地や役者の動きをも計算した作りにはクリエイターの力量が光る。
日本の着物を意識したデザインや素材が使われているのも、私たちにとっては興味深い。

そのほか、インクのしみから生まれた歌舞伎のようなメイキャップというのも面白かった。
アイデアがまとまらずに丸めた紙を再び広げたときに、インクのしみが模様になっていて発想を得たという赤と黒の不思議なメイク。発想のヒントは身近なところに存在する。それを発見して、そこからイマジネーションをふくらませていくのもクリエイターの才能とセンスなのだろう。

監督を頂点とした、たくさんのクリエイターたちの競演。ひとりひとりの夢のパーツがひとつに組み合わさった時に、さらに大きな夢の世界へと姿を変え、人々を感動へといざなうのだ。