見出し画像

💠幸せ時間💠

想像作話 自由の羽(3)

★画像は、愛蔵版「キャンディキャンディ」いがらしゆみこ先生 原作水木杏子先生より



ローズマリーはエルロイが1日不在な日を確認し、その日を選び、ヴィンセントを屋敷に呼び出した。
パーティーを7日後に控えていた。
ヴィンセントも仕事が多忙であったが、都合をつけて夕方駆けつけた。
ローズマリーは水色のシンプルなワンピースを着て、ブロンドの髪はサイドにまとめていた。ヴィンセントと会う時はドレスではなく、庶民的なワンピースをなるべく着るようにしていた。今日はネックレスなどつける心の余裕がなかった。
ヴィンセントはラフな白いシャツに黒いコットンパンツを履いていた。
ヴィンセントが客間に入るなり、2人は引き寄せられるように抱き合った。
その後ローズマリーは、はやる気持ちを抑えながら、今までのエルロイとのやりとりを話した。


「大おばさまはあなたのことを認めてくれない。話も聞いてくれないの。」
「・・・。」
「このままではパーティーに参加させられてしまう。監視が厳しくて当日はジョルジュもいないし。あの遠い外の門にたどりつく前に捕まえられてしまうわ。
だから私決めたわ。黙って出て行きます。アードレーの名を捨てます。」
「え? 捨てるって・・・」
「この家を出てあなたと暮らすのよ。駆け落ちって言うのかしら。」
「ロージー、そんな大事なこと…駆け落ちって…。僕だって誰かに君を取られるくらいなら君を奪って逃げて行くさ。でもアードレーの家を本当に捨てられるのかい?」
「ええ。捨てるわ。もう嫌よ。あなたと結婚するにはこの方法しかないのよ。」
「ありがとう。君がそんな覚悟をしてくれたなんて・・僕のために・・。僕はお金も名誉も何もない。家柄だって君と釣り合わない。しがない船乗りだ。本当に僕でいいのか?」
「もう、ヴィニーったらまだ言うの?それは言わない約束でしょう?あなたがいいのに。」
「ごめんよ。もう言わないから・・・。僕の所に来て欲しい。愛してる。」
「私も愛しています。」
ヴィンセントはローズマリーを力強く抱き寄せた。


「ただ…心配なのはバートのこと。あの子が1人になってしまうわ。あの子は外に出れないし、私も屋敷に戻れなくなる」
「ああ。」
「バートも一緒に連れて行きたい。でもそれはできない。あの子はアードレー家の正式な後継者で、母が命をかけて生んで下さった・・やっと生まれた男の子…
私の大切な・・ちっちゃなバート。」

ー かごの中で可愛い天使のような赤ちゃんが泣いている。少女が母の代わりにゆりかごを揺らし子守唄を歌っている。 ・・・”あれはバートと私”・・・ローズマリーは子供の頃をぼんやり思い出していた。 ー

ローズマリーはヴィンセントの胸の中で泣き出した。ヴィンセントは静かに見守り、優しい眼差しで、両頬に流れる涙をハンカチで拭いてあげた。
「ロージー、 アルバート君のことはもちろん僕も心配だ。彼はアードレー家を背負う運命だ。彼にしかできない。誰も代わってやることができない。アルバート君は明るくて賢い少年じゃないか!彼なら大丈夫だ。陰ながら2人でアルバート君を支えていこう!」
「ええ。ヴィニー。ありがとう。」ローズマリーは涙で濡れた緑色の美しい瞳をそっと閉じた。


ヴィンセントをローズマリーが玄関まで見送るため、2人は廊下に出た。そこに、いないはずのエルロイとはち合わせした。予定より早く帰ってきたのだった。
「おまえ達、まだこそこそと会っていたのですか。ここは船乗りが来る場所ではありません。今すぐ出て行きなさい。二度と顔を見たくない。またローズマリーに近づいたらただではすみませんよ。」
エルロイは激しく憤怒した。
「大おばさま。 」ローズマリーが反論しようと一歩体を前に出した時、ヴィンセントはローズマリーの左腕を軽くつかみ、顔を小さく左右に振り、目で合図しローズマリーの言葉を制した。
そしてヴィンセントは真っ直ぐエルロイを見つめ、恭しく礼をし、静かにその場を去って行った。
ローズマリーは長い廊下を歩いて行く後ろ姿のヴィンセントを、見えなくなるまでその場からせつない目で見送った。



続く

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「二次小説」カテゴリーもっと見る