★画像は、愛蔵版「キャンディキャンディ」いがらしゆみこ先生 原作水木杏子先生より
ローズマリー中心です。
こんな設定、キャラでいいんでしょうか。イメージで書きましたので大目にみてやって下さい。
ラベンダーの香りを風が運ぶ7月のある日の午後。
アルバート10歳。
「これから大切なお客様がみえるからあなたに会って欲しいの!」 ローズマリーがアルバートの部屋に来て明るく告げた。
ローズマリーは薄紫色のワンピースを着ていた。胸元にはアメジストのネックレスが揺れている。母プリシラから譲り受けた象嵌細工のマザーオブパールの付いた大きな宝石箱から取り出した宝石。
長いゆるくウェーブのかかった金色の髪を下ろし、左の耳元には白いつぼみの薔薇を3輪つけていた。姉の大好きな薔薇がよく似合う。
いつも美しいが今日は一段と美しいとアルバートは思った。
お茶の支度をすると言ってローズマリーはそそくさと客間に行ってしまった。
その後少し経ち、客人が到着したとメイドがアルバートを呼びに来た。
「大切なお客様って誰だろう?姉さんおしゃれしてはしゃいでた。」アルバートは首をひねりながら、客間に向かう。
アルバートは大きくなったので、姉のことを、姉さんまたはロージーと呼ぶようになっていた。もうお姉さまと呼ぶのはやめていた。
緊張しながら扉を開けると、ソファーに座っていた客人がすっくと立ちアルバートの方に歩いてくる。
「やあ!アルバート君だね。僕はヴィンセント・ブラウン。ヴィニーと呼んでくれ。よろしく!」と言いにこやかに大きな厚い右手を差し出す。アルバートも右手を差し出し握手する。
ローズマリーより随分歳が離れてるように見えるが、本当はもっと若いのかもしれない。一見優しげな紳士だ。きちんと茶色い背広を着ている。キャラメルブロンドの柔らかな短髪に、口の上にひげを生やしている。そんなに身長は高くないが、がっしりした体躯だった。そして青いとても優しそうな瞳だった。
「姉さん、この方は?」アルバートは救いを求めるような目でローズマリーに聞いた。
「私の婚約者よ。船乗りをしているのよ。」
「えーっ???・・・」
アルバートは驚いた。
(心の声)~ なんだって? 婚約者? 姉さんに恋人がいたなんて。いつの間に付き合っていたんだ? 船乗りだって?~
アルバートはグルグル考えこんで言葉が出なくなった。
「バート。びっくりさせてしまったようね。今まで黙っていてごめんなさい。ヴィンセントさんと結婚するの。」
「もうびっくりしたよ。驚かさないでよ。姉さんおめでとう!ヴィンセントさん結婚おめでとうございます」
やや硬い表情で祝意を表した。
「ありがとう 、バート。」ローズマリーは嬉しそうに笑った。
「おいおい、ヴィニーでいいよ。アルバート君ありがとう。」ヴィンセントもニコニコしている。
喜ぶ2人を見て、アルバートも温かい気持ちになり微笑んだ。
初め緊張していたアルバートだったが、ヴィンセントの大らかな優しい人柄に触れ、打ち解け、3人は仲良く談笑した。外が暗くなってるのも気付かずに。
翌日の朝、アルバートとローズマリーとエルロイの3人は朝食をとっている。
「ローズマリー、来月初めの日曜日は予定が空いていますか?パーティーを開きますよ。あなたにアードレー家の縁者や、由緒ある家柄のご子息の方達から結婚の申し込みが殺到してるのです。あなたは嫌がるけど、もういいかげんこの中から相手を選びなさい。」
エルロイがいかつい顔でローズマリーに話した。
「この間お話したとおり、私はヴィンセントさんと結婚します。パーティーを開く必要はありません。」
ローズマリーはきっぱり言った。
「まだあきらめてなかったのですか。船乗りと結婚だなんて私は絶対許しませんよ。他のアードレー家の親戚達も反対です。」
「船乗りのどこがいけないのですか。ヴィンセントさんはとてもいい方です。アードレー家にあの方のような方はいないのです。家柄や名誉やお金がなんですか。私はそんなものいらない。それより私は心から愛する人と生きていきたいのです。大おばさま、わかって下さい」
ローズマリーは力強くエルロイに訴えた。
「ふん。話はそれだけですか。あなたの目を覚まさないといけませんね。パーティーは必ず開きます。出席するのですよ。命令です。」
エルロイは怒り心頭で席を立ち出て行った。
「姉さん、大丈夫?」
2人の会話を黙って聞いていたアルバートが心配そうに話しかけた。
「大丈夫。あんなのへっちゃらよ。負けないわよ。それより紅茶が冷めてしまったわね。差し替えてもらいましょうね。」 ローズマリーはメイドに紅茶の差し替えを頼んだ。さっきまでの強い顔が消え、いつもの優しい微笑みでアルバートを見つめた。
アルバートは自室に戻り、先ほどのエルロイに言い返すローズマリーを思い出していた。
~ 姉さんって強いんだな。あんな姿初めて見た。ヴィニーのことが大好きなんだな。それなのにエルロイ大おばさまはわかってくれなくてひどいよ。
ヴィニーは優しい人だ。僕も大好きになった。ヴィニーと結婚しなきゃだめだ。~
アルバートは姉を応援しようと心に決めた。
続く