口呼吸研究所 E&E

    口呼吸/口唇圧/いびきのメカニズム探究

口唇圧と口唇閉鎖力の違い

2009-08-27 18:55:58 | 健康・病気

 「口呼吸の原因は口輪筋の筋力が弱くて口が開いてしまうから」というのは確かに一面的には真実ですが、だからと言って口を閉じさえすれば、あるいは口を閉じる口輪筋力を鍛えれば口呼吸問題を解決できるという単純な図式ではありません。

 口呼吸問題の本質は”軟口蓋と舌の適切な位置関係や舌根沈下・気道狭窄の抑制に密接に関係する「口唇圧」の問題に帰結する”と考えます。

 口呼吸癖の多くの方達は普通に口を閉じるだけでは舌の先端が上顎の内側に付きませんし、市販の口閉じテープにも「必ずしも舌根の落ち込みは抑制できない」ことを意味する注意書きがあります。これらがまさに口を閉じた際に歯茎に加わる「口唇圧」とこの「口唇圧」がかからない状態で上下の唇が閉じるだけの「口唇閉鎖(力)」の違いを示唆しています。

     

 すなわち睡眠時の正常な鼻呼吸で見られるように、口輪筋に殆ど力がかからなくても吸気の際の口腔内陰圧によって唇の内側が歯茎に密着すると(この時歯茎に対して圧力がかかります)、その口唇圧に連動して舌の先端部を上顎にくっ付かせるように適度な舌圧がかかり、軟口蓋と舌の間隙が閉じると共に口蓋垂(ノドチンコ)等が適度に緊張して気道が拡がります。

  これに対して口呼吸が原因の不正咬合や上顎前突等、歯列や顎の骨格に問題がある場合、単に口を閉じるだけでは上述のような口唇圧/舌圧がかからないので、舌や咽頭組織の弛緩によって気道が狭くなる心配があるのです。(結果、厭でも口は開き易くなってしまいます。)

       

 以上のように歯茎に加わる「口唇圧」は、睡眠時のような無意識下でも舌根沈下や気道狭窄を抑制しつつ、ラクな鼻呼吸を可能にするための絶妙な役割を担っていると言えます。

 他方「口唇閉鎖力」については、(何らかの疾病で)唇あるいはその周囲が麻痺するような状態を余儀なくされた場合の ” しっかり口を閉じるリハビリ訓練 ” において、その回復度を測る重要な物差しになるものと受け止めています。