口呼吸研究所 E&E

    口呼吸/口唇圧/いびきのメカニズム探究

「口呼吸の改善」総括

2009-12-25 11:45:58 | 健康・病気

 2007年2月からの約3年間に渡り「口呼吸改善」について種々の角度から専門家の論文や自身の考えをご紹介してまいりましたが、ほぼ議論を尽くせたのではと感じております。

          

 そして以下のように総括いたしました。 

             

 口呼吸の原因は、乳児期の授乳状況や子供時代の鼻炎あるいは(習慣的口呼吸が引き金となった)顎や歯の骨格の変形などいろいろな可能性があり一概には言えないのですが、いずれの場合も 結果として、『唇で歯茎を押す力 <口唇圧> がかからない状態』  になっていないかまず疑ってみてください。

 この<口唇圧>がかかることで初めて、舌の先を上顎内側の適切な位置に配置させる(これで軟口蓋と舌の間隙が閉じる状態になります)ためのスイッチが入ります。この場合、単に口を閉じることより、あくまでも歯茎に対して唇からの適度な圧力がかかることが重要です。

        

 他方、たとえ <口唇圧> がかかったとしても、飲酒や睡眠薬の服用あるいは高齢化などのせいで 『睡眠中の舌の運動機能が極端に低下した状態』(すなわち上述のスイッチが入っても舌が所定の位置に移動できない状態) になると、舌根沈下に繋がり易くやはり正常な鼻呼吸は難しくなります。

        

 鼻や口の疾患に起因しない通常の口呼吸問題は上記 『二つの状態』 を改善してやれば必ず解決できると、この3年間の調査や議論から確信いたします。

 そしてそれぞれに対する私の一番のお奨めは 『イムニタス・マスクの装着』 と 『毎日計10分の舌の体操』 です。

 そのような視点でこれまでの記事をご参照いただければ真に幸甚です。


冬の乾燥空気

2009-11-03 16:55:32 | 健康・病気

 ご存知のように喉や鼻の粘膜が乾燥すると細菌やウィルスに感染し易くなり、結果として風邪やインフルエンザにかかり易くなります。そしてこの喉や鼻を乾燥させる主犯は冬の乾いた空気です。

       

 一般に空気の乾燥度を示す湿度は相対湿度というものを指しています。これはそれぞれの気温に応じた空気の湿り具合を意味しますが、この%の数値だけを見ていても簡単には空気中の水分量の目安がつきません。例えば10℃&湿度50%の空気1立方メートル中の水分量は5.5gで、これは20℃の空気の場合の湿度29%にしか相当しませんし、10℃&湿度70%の場合でも20℃だと湿度36.5%です。

 このように湿度%だけでは空気乾燥度の絶対値がわかりにくく、同時に冬の大気が如何に水分量の少ない乾燥した空気だということが数字の上でもお分かりいただけたと思います。

        

 したがいまして冬場の室内空気中の水分量を(鼻や喉にとって)適正な状態に保つためには、まず部屋の気温をある程度高く保った上で湿度%を調整する必要がありますが、「睡眠中も」となるとチョッと大事(おおごと)ですね。

         

 しかもたとえ就寝時に適切な室温&湿度環境(もちろん結露によるカビ対策も必須です)を確保できたとしても、その恩恵を蒙るのは低温・低湿度だと吸気を36℃&100%へ加温・加湿する能力がやや不足気味になる鼻呼吸の場合だけで、元々加温・加湿機能を期待できない睡眠中の口呼吸では相変わらず喉の乾燥状態を余儀なくされてしまいます。


口呼吸と口周りの骨格の関係

2009-10-12 17:08:41 | 健康・病気

 近藤悦子先生の 『Muscle Wins 学説』 に代表されるように、歯列に対する弱くても長期間にわたる不適切な圧力が顎や歯の骨格形成に悪い影響を及ぼすことは、今や専門家の先生の間では常識となっているようです。

     

 その典型的なケースが「口呼吸」によるものです。この場合、上下の唇の内側が歯茎から離開して口唇圧がかからないだけでなく、上顎の内側に付くべき舌の先端位置が下がって歯列を内側から押し続ける格好になります。また臼歯部に対する頬圧と舌圧のバランスも崩れてしまうそうです。

 もちろん大した圧力ではないのですが、何年もその状態が続くと上顎前突や不正咬合の原因になってしまうと。

 そして歯や顎のこのような状態は構造的口唇閉鎖不全に繋がり易く、ますます口呼吸の改善を困難にしてしまいます。

     

 しかし口呼吸によるこの重大な影響を一般の人達が知り得る機会は殆ど無いのではないでしょうか。

 歯科の先生方も虫歯や歯周病の治療において「口呼吸」を引き合いに出されることは滅多になく、矯正治療に際して「口呼吸を改善しないと折角手に入れた綺麗な歯並びが元に戻ってしまいますよ!」と初めて警告されるはずですから。

        

 長年の間に変形した顎や歯の骨格(およびそのことが原因の口呼吸)が、数ヶ月の口輪筋トレーニングによって改善されることを期待するのは極めて難しいと自身の経験から実感しています。

 


口唇圧と口唇閉鎖力の違い

2009-08-27 18:55:58 | 健康・病気

 「口呼吸の原因は口輪筋の筋力が弱くて口が開いてしまうから」というのは確かに一面的には真実ですが、だからと言って口を閉じさえすれば、あるいは口を閉じる口輪筋力を鍛えれば口呼吸問題を解決できるという単純な図式ではありません。

 口呼吸問題の本質は”軟口蓋と舌の適切な位置関係や舌根沈下・気道狭窄の抑制に密接に関係する「口唇圧」の問題に帰結する”と考えます。

 口呼吸癖の多くの方達は普通に口を閉じるだけでは舌の先端が上顎の内側に付きませんし、市販の口閉じテープにも「必ずしも舌根の落ち込みは抑制できない」ことを意味する注意書きがあります。これらがまさに口を閉じた際に歯茎に加わる「口唇圧」とこの「口唇圧」がかからない状態で上下の唇が閉じるだけの「口唇閉鎖(力)」の違いを示唆しています。

     

 すなわち睡眠時の正常な鼻呼吸で見られるように、口輪筋に殆ど力がかからなくても吸気の際の口腔内陰圧によって唇の内側が歯茎に密着すると(この時歯茎に対して圧力がかかります)、その口唇圧に連動して舌の先端部を上顎にくっ付かせるように適度な舌圧がかかり、軟口蓋と舌の間隙が閉じると共に口蓋垂(ノドチンコ)等が適度に緊張して気道が拡がります。

  これに対して口呼吸が原因の不正咬合や上顎前突等、歯列や顎の骨格に問題がある場合、単に口を閉じるだけでは上述のような口唇圧/舌圧がかからないので、舌や咽頭組織の弛緩によって気道が狭くなる心配があるのです。(結果、厭でも口は開き易くなってしまいます。)

       

 以上のように歯茎に加わる「口唇圧」は、睡眠時のような無意識下でも舌根沈下や気道狭窄を抑制しつつ、ラクな鼻呼吸を可能にするための絶妙な役割を担っていると言えます。

 他方「口唇閉鎖力」については、(何らかの疾病で)唇あるいはその周囲が麻痺するような状態を余儀なくされた場合の ” しっかり口を閉じるリハビリ訓練 ” において、その回復度を測る重要な物差しになるものと受け止めています。 


口呼吸と集中力

2009-07-23 18:49:53 | 健康・病気

 口呼吸の子供は集中力がないと言われていますが、本当でしょうか。

     

 口呼吸の子供が(もちろん大人もですが)無条件に集中することができないわけではないと思います。ただ誰しも物事に集中している時は無意識に口をしっかり閉じ、歯茎に口唇圧がかかっている筈です。(そうしないと臍の下の丹田に意識が集中できないからという説も有ります。)

        

 集中した状態を持続するためには鼻で呼吸し続けなければなりませんが、この条件は口呼吸癖の子供にとって必ずしも容易ではないかもしれません。

 夜眠っている時だけ口呼吸で、昼間は意識すれば無理なく鼻呼吸ができる場合は充分集中力を維持できますが、昼間も習慣的についつい口呼吸になってしまっている子供は、あまり使わない鼻の機能が次第に低下してゆき、鼻の病気に繋がり易いと言われているからです。因みにアレルギー性鼻炎等鼻の疾患があると、鼻呼吸は苦痛そのもので集中どころではなくなるでしょう。

         

 「口呼吸イコール集中力なし」という単純な関係ではなく、「口呼吸癖は鼻の機能を低下させ、集中の際に不可欠な持続的鼻呼吸を困難にしてしまう可能性がある」と考えます。