GWいかがお過ごしでしょうか。本日はほんの少しだけマニアックなネタを。
「泡盛」において最も重要な「微生物」は?という問いに対して、「黒麹菌」と答える方は一定数いらっしゃるかと思いますが、「酒類」において最も重要な微生物は?という問いであれば、ほぼすべての方が「酵母」と答えるのではないでしょうか。
麹菌はデンプンを糖に変える働きをし、酵母はその糖からアルコールを造ります。
つまり元々糖分が存在すれば、酵母はそれだけでアルコールを造る事が出来ます。
ワイン(ブドウ)が最もわかりやすいですね。ワイン醸造には、元々ブドウ中に糖が存在するため、麹菌が必要ありません。酵母が発酵してアルコールを造ってくれます。
対して日本酒や焼酎・泡盛は、原料に糖が少なく(米や芋)、その原料中のデンプン質から糖分を造りだす必要があります。そこで麹菌が必要となってくるわけです。
さて前置きが長くなりましたが、1980年代初頭、個人的には泡盛醸造において大きな転換期と考えていることが起こりました。G-2株の発見です。通称泡盛1号酵母。
現在泡盛醸造では泡盛101号という名称の酵母が主流となっておりまして、その前身は1号酵母となっております。
1号酵母の発見により、収得量(※イメージとしてお米1 kgから出来るお酒の量)は上昇し(添加前年単純平均値比較:101.6%増)、腐敗は減り、泡盛の香味も向上、各酒造所は多大なる恩恵を受けたと言われております。
そこから生まれた泡盛101号酵母は、現在でもほぼ全酒造所が使用している酵母でして、今でも多大な恩恵を与えているものと思われます。
しかし。1号酵母の発見前はどうだったのでしょうか。その当時は各酒造所独自の酵母、いわゆる家付き酵母と呼ばれる酵母を使用していたと言います。
微生物は元々その環境に一番適応した微生物が優先し、他の微生物を淘汰しようとします。
つまり泡盛1号酵母の発見前は、「各酒造所の環境に最も適応されていた酵母」を使って酒造りを行っていたのです。
酵母は糖からアルコールを生成する働き以外にも、重要な役割を担っております。
酒類の香りや味わいに関わる様々な成分を造りだしてくれるのです。
そして。その香りや味わいの成分は、酵母の種類によって「多種多様」です。
さて泡盛1号酵母の発見前後。泡盛の香味が大きく変わったと推察しているのは私だけでしょうか。
例えば、泡盛における重要な香気成分(一説にはクセ、悪く言えば泡盛特有の臭みの原因?)であります、i-ブチルアルコールという成分について比較してみます。
なんと泡盛酵母添加前、1964年に泡盛もろみから分離された酵母は、泡盛1号酵母と比較して、このi-ブチルアルコールの生成量が「半分以下」なのです。もちろんその他成分比も異なります。
ただこのi-ブチルアルコールという成分、流行のバニリン等と異なって泡盛に非常に多く含まれる成分でして、150~200 ppm以上も存在します。(バニリンの200倍以上)
このような成分の生成量が、半分も変わるのです。つまり、泡盛1号添加前後で酒質が変わっていったことは容易に推察できます。
さて泡盛業界でも近年様々な酵母の利用が進み、時折酵母を変えて酒質を変える事に批判的な意見を聞いたりもします。
ただ、一消費者の意見として、私は1号酵母発見以前、つまり1980年以前の泡盛がどれだけ多種多様であったか非常に興味があります。古酒(瓶貯蔵商品含む)であれば、現在も残っているかと思われますが、当時の出来立て、いわゆる新酒の原酒ベースで比較してみたいものです。無理な話なのですが、、。
そして泡盛は、昔の方がバラエティに富んでいて良かったという意見が「多々」あるのも事実です。飛躍的に収得量や香味が向上した反面、酵母の多様性という各酒造所独自に合った重要な技術を失ってしまったことも、無関係とは思えないのですね。
1号酵母の利用に、最後まで抵抗していた蔵元さんが数社程あったという事実もお聞きしました。
酒類業界で、最も酵母に関する技術・利用が単一的であったここ30年の泡盛業界。
(繰り返しますが1号酵母の発見は業界に多大な恩恵を与えていることは認識しております。)
他にも力を入れるべき酒造りの技術が多々ありますことも、重々承知しております。
しかし1980年以前の様に、「蔵元独自の酵母」、他の酒類業界の様に「バラエティに富んだ酵母」が、酒造りの選択肢としてあることは、必要な・大切な技術の1つだなと思うのは私だけでしょうか。
ただただ、わたしは色々なお酒を飲みたいという感情も少しはありますが笑 ともあれ皆様よいGWをおすごしください!
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「泡盛」において最も重要な「微生物」は?という問いに対して、「黒麹菌」と答える方は一定数いらっしゃるかと思いますが、「酒類」において最も重要な微生物は?という問いであれば、ほぼすべての方が「酵母」と答えるのではないでしょうか。
麹菌はデンプンを糖に変える働きをし、酵母はその糖からアルコールを造ります。
つまり元々糖分が存在すれば、酵母はそれだけでアルコールを造る事が出来ます。
ワイン(ブドウ)が最もわかりやすいですね。ワイン醸造には、元々ブドウ中に糖が存在するため、麹菌が必要ありません。酵母が発酵してアルコールを造ってくれます。
対して日本酒や焼酎・泡盛は、原料に糖が少なく(米や芋)、その原料中のデンプン質から糖分を造りだす必要があります。そこで麹菌が必要となってくるわけです。
さて前置きが長くなりましたが、1980年代初頭、個人的には泡盛醸造において大きな転換期と考えていることが起こりました。G-2株の発見です。通称泡盛1号酵母。
現在泡盛醸造では泡盛101号という名称の酵母が主流となっておりまして、その前身は1号酵母となっております。
1号酵母の発見により、収得量(※イメージとしてお米1 kgから出来るお酒の量)は上昇し(添加前年単純平均値比較:101.6%増)、腐敗は減り、泡盛の香味も向上、各酒造所は多大なる恩恵を受けたと言われております。
そこから生まれた泡盛101号酵母は、現在でもほぼ全酒造所が使用している酵母でして、今でも多大な恩恵を与えているものと思われます。
しかし。1号酵母の発見前はどうだったのでしょうか。その当時は各酒造所独自の酵母、いわゆる家付き酵母と呼ばれる酵母を使用していたと言います。
微生物は元々その環境に一番適応した微生物が優先し、他の微生物を淘汰しようとします。
つまり泡盛1号酵母の発見前は、「各酒造所の環境に最も適応されていた酵母」を使って酒造りを行っていたのです。
酵母は糖からアルコールを生成する働き以外にも、重要な役割を担っております。
酒類の香りや味わいに関わる様々な成分を造りだしてくれるのです。
そして。その香りや味わいの成分は、酵母の種類によって「多種多様」です。
さて泡盛1号酵母の発見前後。泡盛の香味が大きく変わったと推察しているのは私だけでしょうか。
例えば、泡盛における重要な香気成分(一説にはクセ、悪く言えば泡盛特有の臭みの原因?)であります、i-ブチルアルコールという成分について比較してみます。
なんと泡盛酵母添加前、1964年に泡盛もろみから分離された酵母は、泡盛1号酵母と比較して、このi-ブチルアルコールの生成量が「半分以下」なのです。もちろんその他成分比も異なります。
ただこのi-ブチルアルコールという成分、流行のバニリン等と異なって泡盛に非常に多く含まれる成分でして、150~200 ppm以上も存在します。(バニリンの200倍以上)
このような成分の生成量が、半分も変わるのです。つまり、泡盛1号添加前後で酒質が変わっていったことは容易に推察できます。
さて泡盛業界でも近年様々な酵母の利用が進み、時折酵母を変えて酒質を変える事に批判的な意見を聞いたりもします。
ただ、一消費者の意見として、私は1号酵母発見以前、つまり1980年以前の泡盛がどれだけ多種多様であったか非常に興味があります。古酒(瓶貯蔵商品含む)であれば、現在も残っているかと思われますが、当時の出来立て、いわゆる新酒の原酒ベースで比較してみたいものです。無理な話なのですが、、。
そして泡盛は、昔の方がバラエティに富んでいて良かったという意見が「多々」あるのも事実です。飛躍的に収得量や香味が向上した反面、酵母の多様性という各酒造所独自に合った重要な技術を失ってしまったことも、無関係とは思えないのですね。
1号酵母の利用に、最後まで抵抗していた蔵元さんが数社程あったという事実もお聞きしました。
酒類業界で、最も酵母に関する技術・利用が単一的であったここ30年の泡盛業界。
(繰り返しますが1号酵母の発見は業界に多大な恩恵を与えていることは認識しております。)
他にも力を入れるべき酒造りの技術が多々ありますことも、重々承知しております。
しかし1980年以前の様に、「蔵元独自の酵母」、他の酒類業界の様に「バラエティに富んだ酵母」が、酒造りの選択肢としてあることは、必要な・大切な技術の1つだなと思うのは私だけでしょうか。
ただただ、わたしは色々なお酒を飲みたいという感情も少しはありますが笑 ともあれ皆様よいGWをおすごしください!
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