里山の石神端書52 静岡県伊豆市菅引・路傍のサイノカミ
菅引集落に入る道端に二体の石像が祀られています。いずれも風化が激しいうえに苔むして像容はよくわかりません。地元の人に尋ねると「サイノカミ」で子供の神様とのこと。
『修善寺町の道祖神』(注)の冒頭には「伊豆の道祖神の場合は、道祖神という文字を宛ててもサエノカミさん、サイノカミさんという気持ちを込めて訓んでいただきたい」とあり、「伊豆ではドウソジンと呼ぶ人も無いではないが、一般にはサエノカミ、サイノカミ、セーノカミである」とあります。
地方独自の子供の神や道の神・塞ぐ神などを、道祖神というくくりのなかに入れてしまったため、また道祖神=双体像というイメージができてしまったために、道祖神が画一化され独り歩きしています。「修善寺の道祖神」も本来なら「修善寺のサイノカミ」としたかったのでしょうが、これでは他所の人たちに本の内容が伝わらないのです。
伊豆のサイノカミの像容は丸彫り単体の神像形坐像が一般的で、合掌や笏・宝珠・帖面など持ち物に変化があります。
改めて菅引のサイノカミを見ますと、頭部のない右側の像は狩衣すがたで笏を持ち。左側は垂髪で女神風のようで、持ち物はわかりません。
(注)『修善寺町の道祖神』1992年、修善寺町教育委員会
(地図は国土地理院ホームページより)