鴨川市佐野・路傍の庚申塔の鬼
鴨川市西部の大山山麓。佐野集落の路傍に庚申塔や一石六地蔵などが並んでいました。
庚申塔の主尊は青面金剛で、よく見ると下の方に鬼らしきものが二匹います。
風化がひどく見にくいのですが角があり、一匹は金棒を持っていますから間違いなく鬼です。青面金剛には四夜叉という眷属がいますが、鬼はこの夜叉のようです。金棒を持て余しているような鬼です。
青面金剛の姿は『陀羅尼集経』第九「大青面金剛呪法」に説かれていて、四夜叉については「右辺に二薬叉を作る。一は赤、一は黄、刀を執り索を執。左辺に二薬叉を作る。一は白、一は黒、矟を執り、叉を執る」(注)とあ、金棒は出てきません。庚申の絵図でも金棒を持つ夜叉は見ていません。もっとも青面金剛を含め、説かれた通りに造られる石造物はなく、特に眷属などの姿は石工の裁量に任されることがほとんどですから、夜叉が金棒を持っていてもかまわないのです。
同じ場所に一石六地蔵と、大日如来と馬頭観音の文字塔も並んでいました。
(注)佐和隆研編『仏像図典』昭和37年、吉川弘文館