千歳山(ちとせやま) 蔵王権現(ざおうごんげん)
【データ】 千歳山 471メートル▼最寄駅 JR山形新幹線・山形駅▼登山口 山形県山形市平清水の大日堂▼石仏 大日堂から千歳山の中腹一帯にある石仏群の中、地図の赤丸印は石仏群▼地図は国土地理院ホームページより
【案内】 山形市の街外れにある千歳山は山形市民の山。登山口がいくつもあり、それぞれに寺社がある。一番石仏が多いのは大日堂からの道。大日堂から千歳山の中腹を周回して戻る道に石仏が置かれている。
登山口は恥川の上流にある平泉寺のすぐ先、入口に「新四国八十八ヶ所霊場」の石碑が立つ。参道に入るとすぐ、姥神が高い台座の上から出迎えてくれる。ここは寺の参道だし、貧弱な乳房が垂れ下がっているから正確には三途の川を渡った先、地獄の入口にいる奪衣婆である。姥神の多くは豊満な乳房で山の入口、禊の場所に祀られている。
石仏は大日堂の左側、「大日山八十八ヶ所登山口」石碑から始まる。すぐ十一面、弘法大師、釈迦如来が並び、続いて阿弥陀、釈迦、大日、地蔵、薬師、阿弥陀の6体が並んでいる。この石仏が並ぶ順番は、四国八十八ヶ所寺院の御本尊を石仏にしたものである。それは間隔をおいて1体あるいは5体7体と不規則に立っている。本尊石仏の高さは50センチ前後、光背上部に霊場番号が入り、その左右に各霊場のご詠歌が彫られている。
周回の道は38番千手観音の先に建つ東屋から下りとなり、58番千手観音から67番薬師如来の石仏群の一段高いところに、64番石鉄山前神寺の蔵王権現がある。64番は石仏群のなかにも阿弥陀如来があり、前神寺は二つの石仏が祀られていることになる。
石鉄山という山号は石鎚山を指す。石鎚山は修験の山、蔵王権現の山である。これを支配したのが別当の前神寺だった。前神寺には蔵王堂があった。しかし石鉄山は60番横峯寺の山号でもある。石鎚山に近いのは横峯寺。本尊大日如来の脇侍として蔵王権現を祀り、古くから石鎚山の信仰にかかわってきた寺である。こちらも石鎚山の別当寺を名乗り、信仰登山が盛んになって近世には、前神寺との間で石鎚山別当を巡り対立を繰り返した。これだけ石鎚山は人気があり、前神寺も横峯寺も別当として石鎚山を支配したかったのである。しかし幕府の裁定はいつも前神寺の勝訴だった。
こうして四国八十八ヶ所の蔵王権現といえば64番前神寺となり、千歳山の64番石鉄山前神寺の石仏は阿弥陀如来と蔵王権現が造られたのであろう。
(参考文献)『大山・石鎚と四国修験道』名著出版・山岳宗教史研究叢書12
【独り言】 千歳山山頂へは周回道の38番先に建つ東屋からさらに登り、千歳山公園からの道と合流して山頂に向かいます。一帯は赤松の老木が目立つところです。しかしそのほとんどは松くい虫の被害にあって切り倒されていました。松くい虫にやられて切り倒した木は適当な長さに切りあつめ、ビニールをかぶせて燻蒸して虫を退治しなければならないのでこの作業も大変です。
ビニールにはマツノマダラカミキリ、マツノザイセンチュウ燻蒸中の貼り紙がありました。松枯れが目立ち始めたのは30年くらい前からです。アメリカから入ってきたマツノザイセンチュウが、この国にいたマツノマダラカミキリとタックを組んで悪さをするようになったそうです。
この国の里山は、唱歌・紅葉の「松をいろどる、楓や蔦は‥‥」のように、松が際立っての風景でした。しかしいま、里山の松はどこも松くい虫の被害にあってひどい状況になっています。
千歳山は次回の大通智勝如来に続きます。