偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏番外 烏場山(千葉)

2012年12月14日 | 登山

烏場山(からすばやま) 大日如来(だいにちにょらい)

418【データ】烏場山 266メートル▼国土地理院25000地図 安房和田▼最寄駅 JR内房線・和田浦駅▼登山口 千葉県南房総市和田浦の花園▼石仏 烏場山の北東にある小ピーク。地図の赤丸印

41814182【案内】烏場山から北東に少しはなれた小ピークに石仏が祀られている。像容のある馬頭観音2体と馬頭観音文字塔、そして大日如来である。馬頭は石仏418烏場山で案内した石仏と同様、徳川幕府直轄の馬の放牧地・嶺岡牧の影響による造立と考える。青木更吉氏の『嶺岡牧を歩く』(平成17年、崙書房出版)によれば、牧は馬の放し飼いが基本だが、村から選ばれた牧仕を中心に村民に人足を頼んで牧の管理や馬の監視にあたった。そして病気になった馬の世話から狼対策、野馬捕りして幕府への引き渡しから馬の競りまで、仕事は山ほどあったという。

4183 馬頭とならんで祀られているのが大日如来。智拳印の金剛界大日如来で、「文化九年(1812)申霜月吉日」と「當谷中」の銘がある。當谷中は「谷」という集落名を指すのか、あるいは何かの総称なのか。烏場山の北山麓に「谷」「畑谷」とう集落がある。房総の山里には多くの大日如来が造立されているが、山頂に大日如来を祀るところもあり、それも馬頭観音と一緒に祀られている山があって、このブログの細尾横根の大日三浦三郎山で案内してきた。これに関しても、馬頭と大日を一緒に祀ったのか、あるいは別々に祀ったのかについての、確たる判断はまだできないでいる。

【独り言】石仏418烏場山で、この山につくられた花嫁街道は“関東を代表するハイキングコース”と絶賛しましたが、それはコースのなかに2ヶ所の美しい石仏ポイン4184 4185 トがあるという私流の評価であることを付け加えておきます。和田浦の花園から経文石を経て烏場山へ登るこのコース、山頂から黒滝への下りは花婿コースと名が変わります。黒滝はその下山地点。ここは滝をかこむ岸壁の中程の岩屋に不動明王を祀る静寂な聖地です。この地を選んで入定した行者がいました。その名は「向西坊」。今日1214日は赤穂浪士討ち入りの日ですので、それにふさわしい向西坊の入定のいきさつを『和田町史』から紹介します。

「向西坊は、名を元助といい赤穂四十七士の一人片岡源五右衛門高房の下僕として主君大事と仕え、その誠忠は高房や大石内蔵助を感動させた。元禄15年(1702124186 4187 14日四十七士は吉良邸に討ち入り本壊を遂げられたのを見届け、四十七士自刀後、元助は義士の霊を弔うため、出家して向西と名を改め故郷の上州秋間村の岩戸山に四十七士の石像を建立した」(秋間村では“音外坊”と伝えている)。その後諸国巡礼の後にたどり着いたのが和田浦の長香寺。ここで向西坊と名を改めて村民の救済に力をそそぎ、「自分の天命を知ると黒滝の東側の窟に入り、予を念ずれば火難、諸難を除き家内安全、五福寿を増長せしむ、と遺言して入定した。時享保17年(173253歳であった」。写真左は向西坊入定窟、右は長香寺境内にある向西坊供養塔です。


【追伸】房総の山にある大日如来についは2013年4月に見解をまとめました。

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