里山の石神端書3 種字(茨城・大子町)
茨城県大子町大生瀬、大和の大生瀬神社
大生瀬は戦後まであった村名。村一番の神社が大生瀬神社でした。小高い山の上の社殿へ登ってみると、パトカーがいてお巡りさんと氏子さんたちが話し中。なんでも賽銭泥棒の調べ中とのこと。この神社は参道とは別に、山の裏側から車が登れる道が造られていました。かつて山中にある神社は参道を歩いて参拝したものでした。しかし今はどこも車で登れるようになってしまいました。これは泥棒にとっては好都合で、鍵を掛けても簡単に壊されてしまい、修理代がバカにならないと氏子の一人がこぼしていました。
大生瀬神社からは、参道と境内で見た供養塔に刻まれた仏菩薩を象徴する種字(しゅじ)を案内します。
阿弥陀三尊 参道の石段を上った先、道をはさんで二つの供養塔が立っていました。向かって左にある「奉供養秩父坂東」の巡拝供養塔の頭に刻まれていたのが、阿弥陀如来(キリーク)と観音菩薩(サ)勢至菩薩(サク)の種字、これで阿弥陀三尊です。
般若菩薩(ジニャ) 左にある「仁王般若経」の経典供養塔には見慣れない般若菩薩の種字がありました。仏書によると仁王(にんのう)経は国家守護のための経典、地方では天災や疫病の息災のために読誦されたそうです。それから仁王般若経は山門に立つ仁王とは無関係の経典です。このような珍しい種字があるこの地方の宗教的背景には計り知れないものがあります。
不動明王(カンマン) 社殿裏の土塁の上にある「奉唱満慈救咒」の種字は不動明王です。慈救咒(じゅくのしゅ)は不動の真言、不動明王に呼びかける言葉(ナウマクサマンダバザラ……カンマン)です。
(集落名は国土地理地図による)