昨日の朝、風の又三郎に会いました。
又三郎は鼠色のマントを羽織って
中村川沿いの歩道を強い風と一緒に
歩いていたのです。
私はその時クルマを運転していて
前から歩いてくるその男性とすれ違いざまに
ほんの一瞬だけ目と目が合い
それが又三郎だとすぐに分かりました。
又三郎は赤毛の少年のはずだったのに
私の目にはバンカラな20〜22くらいの
寡黙そうな青年に見えました。
ルームミラーに映った又三郎の後ろ姿は
なにか重大な決意を誰かに告げにいくような
強い足取りで遠ざかっていったのです。
重そうなマントが背中で暴れていました。
強風に煽られて揺れている前方の信号が
赤に変わったので私はクルマを停車させて
小さくなった後ろ姿をルームミラー越しに
追っていたら又三郎は右に折れて
すぐに見えなくなってしまいました。
アスファルトの上で踊っている落ち葉が
風で集められ黄土色の大きな生き物のように
なりながら中村川に飛び込んでいきました。
一夜明けた今、このことを思い返してみると
この時代に珍しくマントを羽織って
風の中を歩いていたからそう見えただけで
本当は見間違いだったかも知れない。
たぶん見間違えだったのでしょう。
だけどあの鼠色のマントを羽織った青年には
何か強い意志みたいなものを感じました。
時間にすれば30秒にも満たない
わずかな間に起こった出来事。
今朝の横浜は打って変わってじつに静か。
強風は去ったみたいです。
※写真はずっと前のもの。
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