テニスと読書とデッサンと!

窓。

子どもの頃、音楽の授業が嫌いでした。

大の苦手な歌のテストは言うに及ばず

クラシックのレコード鑑賞に至っては

なんでこんな眠くなるような音楽を

聞かなくちゃならないのだろうかと、

誰も遊んでいない校庭を窓越しに

眺めながらぼんやり考えていました。

以来私はクラシック音楽とは無縁の人生を

真っ直ぐ歩んできたのです。

 

ところが先日ネットで調べ物をしていて

フジ子・ヘミングという女性ピアニストによる

フランツ・リストの”ラ・カンパネラ”と

”愛の夢”を聴いているうちに

すっかり魅了されてしまいました。

こんなにも繊細で美しいピアノの音色を

今まで自分はどうして知らなかったのか。

まるで自分の部屋に新しく窓ができて

その窓から惜しみなく光が降り注いで

いるような感じを受けたのです。

 

彼女の演奏を聴いて涙を流す人は多い。

それってなんか分かるような気がします。

気難しい音楽評論家やクラシック音楽に

造詣が深い人たちに言わせれば

確かに彼女は異端のピアニストかも知れない。

でもそんなことは私にとっては

どうでもいいことで

自分がその奏でる音にいったいどれだけ

強く心を揺さぶられるか。

それがいちばん大切なことなのでは

ないでしょうか。

 

彼女は言います。

ひとつひとつの音に色をつけるように弾く、と。

そしてこうも言います。

私はミスタッチが多いかも知れない。

でもそんなことは気にしない。

機械じゃあるまいし、と。

 

譜面に忠実に弾くだけなら

機械の方が遥かに正確。

でもそれは朗読の上手い国語の先生が

落語を一字一句間違わずに読むのを

聴いているようなもの。

ドキドキなんかするもずもないし、

涙を流すほど笑えるはずもない。

人を感動させるということは

その人の生き方や個性、想像力、

表現力など様々な要素が合わさって

その人らしい新しい味を

作り出すことなのではないでしょうか。

 

彼女の全盛期はヨーロッパで

こんな評判が立ちました。

難易度の極めて高いリストの曲を

まるで小鳥がさえずるかのように

美しく軽やかに奏でる、と。

彼女はスウェーデン国籍を取得して

いたけれど渡航歴がなかったため

無国籍状態であることが判明し、

芸大を卒業後希望していたヨーロッパに

すぐに留学することができず、

避難民としてドイツ(国立ベルリン音楽大学)に

留学できた時はすでに30歳になっていた。

35歳でレナード・バーンスタインと出会い、

栄光を掴みかけながら風邪をこじらせたことで

聴力を2年間にわたって失ってしまった。

治療に専念するも片方の耳が

わずかに40%回復しただけ。

異国の地での孤独な生活、恋人との破局、

母親との確執など失意の中にありながら

ピアノへの情熱だけは失わず、

彼の地に踏みとどまり続けた。

帰国してからは劇団に部屋を貸すことと

ピアノの教師をしながら

生計を立てていたとのことです。

ところが20年ほど前に

彼女のドキュメンタリー番組が

放映されたことでその名が一気に

全国に知れ渡り再び脚光を

浴びることになりました。

 

私はこれから私の部屋に

彼女に取り付けてもらった

新しい窓からその外側に広がる

クラシックの世界を眺めてみたい。

どんな驚きの世界が広がっているか、

すごく楽しみです。

 

https://www.youtube.com/watch?v=cdueOVOKyRA&list=RDcdueOVOKyRA&start_radio=1


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