盤石な基礎があって高い建物が建つように、
基本があって応用がある。
だけど応用が上手く機能していれば
基本のことなんて忘れてしまいがち。
問題はその応用が機能しなくなった時なのです。
いわゆる”壁”ってやつですかね。
これがまた道ゆく先々で立ちはだかってる。
どうやってその壁を乗り越えればいい？
高い壁を前にして途方に暮れていた私が
ひょいと横に目をやると
美しい女性が露店を開いている。
その女性がにっこり微笑みながら
私に向かってこう言った。
「お困りのようね。私が力になれるかしら？」
「キミはここでなにを？」
「見ての通りよ。ここで商売をしているの」
「地図、ハーケン、ザイル、カラビナ、トランポリン、
踏切板まである・・・これは竹竿？」
「違うわ。それは棒高跳びのポールよ」
「ははーん、ここにやって来た人たちに売るんだね？
この壁を乗り越えたいと思ってる人たちに」
「そうなの。おかげさまで売れ行きは上々よ。
一番人気はその棒高跳びのポールね」
「なんか高そうだね。
いまぼくあまり持ち合わせがないんだ。
いちばん手頃なのはどれ？」
「それならこの地図ね。回り道が載ってるの」
「え〜っ、壁を乗り越えないで先に進めるの？」
「そうよ。あなたもこれにする？」
「うん」
「ありがとう！お役に立てて嬉しいわ。
74万円になります」
「えっ、この地図が74万円もするの？」
「あなた、先に進みたいんでしょ？」
あの高い壁を乗り越えないで済むと思えば
安い買い物だと思うわよ。どう？」
「ち、ち、ちなみに棒高跳びのポールはいくら？」
「7400円。あなた向きじゃないわね」
「ど、ど、どうしてさ！」
「あなた、高所恐怖症じゃなかった？」
「えっ、なんでそれを」
「ふふーん。ならホントのことを言うわね。
私はあなたにとっての守り神なの」
「マモリガミ？」
「そうよ。だから悪いことは言わないわ。
あなたは回り道をしていくべきよ。
ちょっとばかり遠回りだけどね」
「だけどさぁ、なんで地図の値段が
棒高跳びのポールの100倍もするの？」
「ポールは回収できるからよ」
「あー！そういうことか。
わかったよ、地図、買います。
クレジットカードで支払いできる？」
「毎度ありがとうございます」
「この地図、エッチな本みたいに
ビニールがかかってる。なんだか怪しいなぁ。
買ったからもう開けていいんだよね？」
そう言おうとして目を上げると
もうそこには女性の姿はなく、
露店もウソみたいにきれいさっぱり消えていた。
そしてビニールを破いて地図を開くと
そこには来た道を戻るルートだけが
緑の蛍光ラインマーカーで記されていた。
「ヒョエ？なにこれ。戻れってこと？
あの女にまんまと騙されたってことか・・・
こんなものに74万円も払っちまったぜ！
なにが守り神だ、とんだ食わせ者じゃない。まったく！」
”ソノ チズガ シメストオリニ ススミナサイ”
苛立つ私の耳にどこからともなくそんな声が聞こえ
仕方なしに重い足取りで来た道を戻っていくと
やがてなにやらゲートが見えてきた。
近づいて見上げるとそこには
”お帰りなさい。ようこそ基本へ！”という看板文字。
そしてそのゲートの横には露店が出ており、
美しい女性が私の到着を待っていた。
「戻ってくると思っていたわ。
さあ、もう一度復習よ。基本は大事よね。
あっ、待って！もうすぐお昼になるわ。
あなた、お腹空いてるでしょ。
ここにメニューがあるわ。
本日のランチは冷凍エビドリア1640円よ。
それ以外は4000円のコースになるけど、
どれがいいかしら？」
Don’t kidding me!
But the basics are keys of the breakthrough!
※写真は娘がこっそり買って来たプディング。
チーズケーキのような密度の濃さ。
いったいいくらしたの？って聞くと
黙って食べれば？だって。
