~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

◇『モンスター』◆ ※原作と本編のネタバレ少々

2013-04-28 19:02:58 | 〔MK〕


  『モンスター』:公式サイト

女性エイト

人々から“バケモノ“と呼ばれ、醜い容姿を蔑まれてきた和子〔高岡早紀〕。
整形手術を繰り返して絶世の美女へと変貌し、未帆と名を変え、
過去への復讐と真実の愛を求めていく姿を描く。
百田直樹の同名小説の映画化。

原作者は男性だけど、監督、脚本、撮影、編集、特殊造型・特殊メイクは女性。
スタッフは女性が多かったそうです。
未帆になってから入院している病院の場面で
パジャマや小物がピンクぽい色(だったと思う)で女性映画らしかったですね。

和子は「チクショー」と叫ぶ場面とキレる場面以外は女の子らしいキュートな口調で話しているから、
恵まれない容姿でも“かずちゃん”と呼ばれているのはわかる気はした。
その上で整形前は暗く沈みこむような声のトーンで演じ、
整形で美貌を手に入れていくにつれ、明るく軽快なトーンで演じ分けた高岡さんは上手かったですね。
整形の過程をポップに演出しているのは
その行為自体を茶化しているような気もしてしまったんだけど、
重苦しさは軽減されて観やすくなったような気もする。

和子が週刊誌の裏表紙に載っている美容整形の広告を見て整形に興味をもつんだけど、
その週刊誌名が“女性エイト”。。。
(だから、高岡さんはセブンのサイトのインタビューを受けたのかしら。^^)

原作よりも崎村〔村上淳〕のキャラクターに奥深さが増している。
追加されている場面もあるし。
その一方で、英介〔加藤雅也〕の要の台詞が省かれ、
浅はかな男なだけになってしまった感が残る・・・。
映画では英介は高校時代の和子の事を「ブサイク」「性格が暗かった」と言っていたけど、
原作では和子の容姿の事を「可哀想だった」という旨も言っているんですよね。
だからこそ、高校時代の英介は和子に冷たくはしなかった。
それは本当の意味での優しさではなく、実質は同情かもしれないけど、
単なる偽善者ではなかったところが王子様ぽくて良かったんだけどな。
整形外科医〔大杉漣〕も原作では和子の良き理解者で彼女を讃える事をもっと言っているのに
台詞が省かれているから人間味が薄れてしまっている・・・。
まぁでも、客観的に見て魅力を感じるのは、
利益や性欲に捉われず、率直に話してくれた崎村だから
崎村だけが救いとなるような演出にするのもわかる気はするんですけどね~。

生々しい物語を泥臭く見せないのは女性監督ならではだと思った。
英介と未帆のベッドシーンは5分ぐらいあって長かったけど、
いやらしさはなく、肌をそっと寄り添わせる感じで映しだしている。
(未帆役の高岡さんは40歳とは思えない程、美しい肌でバストもお椀形でキレイ。)
原作にはなかったラストも余韻は残る。
ただ、崎村に肩入れしすぎな演出は未帆と英介のラブストーリーとしての軸がブレるので
作品としてはバランスが曖昧になってしまった気がした。
崎村と未帆の物語にするなら、崎村役の村上さんを二番手にしたほうが良い気もするし。

この世の中、誰を何を信じていいかわからなくなる時もあるだろうし、
友人であれ恋人であれ、信頼出来る人を自分で見極めるのは本当に難しい。
親に愛されず、友達にも裏切られた和子なら尚更ね。
なので、心から信頼出来る人に出逢えている人はごくわずかだと思う。
だけど、気づけばすぐ傍にいるのかもしれない。
その事に彼女自身が気づけていたら、いや頭ではわかっていたかもしれないけど、
心の王子様を求める情念のほうが上回っていたのでしょうね。
しかも、彼女は自分の気持ちにまっすぐな子なので、
自分で自分の歯止めが効かなくなってしまっているような?

この作品は“初恋モノ”や“整形モノ”というよりも、
“男子を見極める器量がなかった女子の悲劇”なのでしょうね。


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