第三の翼
新しい世紀
カンヌ映画祭パルムドール受賞作の『永遠と一日(1998)』をはじめ、
『旅芸人の記憶(1975)』、『アレクサンダー大王(1980)』、
『シテール島への船出(1983)』、『ユリシーズの瞳(1995)』など
数々の名作を残したギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロスの遺作。
『エレニの旅(2004)』から20世紀を題材とした3部作の第2部で、男女3人の半世紀にわたる愛を描く。
ウィレム・デフォーは横顔がジョニー・デップに似ているような?
顔立ちは濃い?けど、どこか陰があって繊細な雰囲気が印象的。
ウィレム・デフォーは近年は作家性の強い監督と組んでいますね。
半世紀にも渡る負の歴史を背景に描かれているので、
問題提起を投げかける社会派の作品なのかと思っていたけど、
時代の流れの中でさまよっている
2人の男:スピロス〔ミシェル・ピッコリ〕、ヤコブ〔ブルーノ・ガンツ〕と
1人の女:エレニ〔イレーヌ・ジャコブ〕、女の息子:A〔ウィレム・デフォー〕:、
孫娘エレニなどが織りなすメロドラマでした。
とはいえ、扇情的な演出はない。
固定アングルで映しだされる雪景色と人物を深々と綴り、
痛切な悲しみをも包み込む演出に温かさを感じた。
祖母エレニとスピロスは相思相愛だっただろうけど、
祖母エレニとヤコブのほうが恋愛の次元を超えた人と人との絆で
精神的な結びつきはグッと深かったような気もする。
特に、ヤコブは自分の人生を犠牲にしても、祖母エレニの支えになっていた。
ヤコブにとっては祖母エレニの傍だけが帰る場所だったのかもしれない。
そして、祖母エレニにとっても・・・。
少女エレニは祖母エレニの分身みたいな存在なのだろうか?
1999年に廃墟で絶望的に佇んでいた少女エレニが
2000年の年明けにはスピロスと笑顔で雪の街角を駆けて行く少女エレニの姿に希望を感じた。
私はテオ・アンゲロプロス監督の作品を観たのは初めてです。
イレーヌ・ジャコブがヒロインを演じているからかもしれないけど、
社会派のように見えて純愛な作風はクシシュトフ・キェシロフスキを彷彿させる印象でした。
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