ロリータ
ロシアからの移民の息子として生まれ、
歌手・映画俳優・映画監督として多彩に活躍したセルジュ・ゲンスブール。
稀代のプレイボーイとしてもカリスマ的人気を得た彼の素顔に迫るドキュメンタリー。
本人のモノローグや恋愛遍歴を彩った女性達のコメントを通して、
セルジュ・ゲンスブールの内面を映し出す。
往年のスターと言えば絵に描いたような美男美女のイメージだったけど、
フランスはそうでもないのかな?と思った。
ゲンスブールは自分の顔立ちについて世間から言われている事を気にしていた。
ゲンスブールと同世代?の歌手では
『最後のマイ・ウェイ』のクロード・フランソワも
背が高くなくて四角張った顔立ちにコンプレックスを持っていたようだし。
『ノーコメント by ゲンスブール』本編に登場する女優達も
よく観ればメイクが濃いだけな気もしたり。
俳優ではジェラール・フィリップやアラン・ドロンのような完全無欠の美男もいたけど、
フランスのスターは必ずしも顔が全てではなくて、唯一無二な個性や雰囲気重視なのかな。
そういう意味では往年のフランスのスター像は個性重視の現代にも通じているような気もする。
だからこそ、没後何十年も経っても伝説となり、
映画が製作されたりし続けているのかもしれないですね。
ゲンスブールは整った顔立ちの美男ではないし、滑らかな美声でもない。
愚痴ぽくてヘタレ、そのクセ女性にはキザな言動のナルシスト?ではあるんだけど、
最高にカッコ良いんだよね☆
観ていて「とにかくカッコ良い!」と心の中で叫んでしまう。^^
自分の出演映画を“駄作”と言いきったり、
“ロリータ好き”を公言した上で娘まで巻き込んで仕事に活用したり、
自分のイメージをよく見せようと美化する事は一切せずに
ありのままの気持ちを絞り出すように語る姿がムードある。
と言うか、自分を飾る事を知らない人という気がした。
そういう意味では子供がそのまま大人になったような印象。
その反面、タバコ吸う時の横顔は色っぽい。
負け犬の美学を感じさせる男の存在感。
ゲンスブールの全盛期から亡くなるまでを克明に描く半生記ではなくて、
スターであるセルジュ・ゲンスブールにスポットを当てていたね。
髭もなく清潔感のある若者のゲンスブールが映ったかと思いきや、
髭面でやさぐれだった熟年のゲンスブールが映ったりする。
それを交錯させながらもコメントはまるで哲学へと導かれるように繋がっていく。
コメント音源に映像を組み合わせ綿密につなぎ合わせた編集が圧巻。
若い頃と熟年期を織り交ぜながらも一貫してゲンスブールの感性に着目。
選曲もセンスが良かったドキュメンタリーでした。
≪セルジュ・ゲンスブール関連作品レヴュー≫