人間
真珠のネックレス
1962年に米国人初の地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士ジョン・グレンの功績への立役者となった
NASAの3人の黒人女性スタッフである
キャサリン・ジョンソン、ドロシー・ボーン、メアリー・ジャクソンをはじめ同僚達の実話をもとに描く。
この作品、邦題で色々あったみたいだけど、
サブタイトルを省いた為に、ありきたりなタイトルになってしまって少し損した気がする。。。
男性社会の中で女性が仕事をするだけでも悶々とする事はある・・・。
それに加え、人種差別が根強く残っている中だと並大抵ではない・・・。
この作品の黒人女性達は意気揚々と改革を求めて闘ったわけではなく、
自分がやりたい仕事を成し得ていくにはどうすれば良いか?
日常の中で模索している。
そういう意味では普通の人達。
だからこそ、慣習?に従いながらも差別に耐えきれなったキャサリンが白人上司に憤る姿に心打たれたよ。
そして、何も知らなかった上司は部下であるキャサリンの主張をすんなり受け入れる。
上司が白人用女子トイレの標識を叩き壊す場面は最高にカッコ良かった!
上司役のケビン・コスナーは若い頃はスマートな二枚目役で主役しかやらないイメージだったけど、
近年は脇役もやっているね。
加齢からか少しふくよかになってお腹回りも微妙な体型になってきたので
気取った台詞言っても嫌味がなくて、品の良さを保ちながらも親しみやすい人情味が出てきている。
正統派の役でも今のほうが等身大の温もりがあって自然に映る。
線の細さがなくなってきて、
『タワーリング・インフェルノ』の頃のスティーブ・マックイーンを彷彿させる名優の風格が備わってきたなと。
文明の利器となるコンピューターの発達で計算学者が不要になってきて、
キャサリンが部署を離れる事になっても、キャサリンは文句を言わずに静かに去っていく。
頭脳明晰な人の中には自らの才能に溺れがちだったりする人もいるだろうけど、
キャサリンや他の二人の黒人女性は頭が良くても偉そうぶったりはしなくて、控えめで真面目。
そんなキャサリンだからこそ、同僚から餞別に真珠のネックレスをプレゼントしてもらえたのでしょうね。
そして、このままお払い箱になるのかと思いきや、クライマックスの重大局面で必要とされる展開。
コンピューター任せだと失敗しても機械のせいにすれば終わりだけど、
人間に計算を任せるともし計算間違えて、飛行士にもしもの事があった場合、
当人に重い十字架を一生背負わせる事になり兼ねない。
上司にしたら一か八かの賭けだろうけど、迷いを感じさせず、キャサリンに任せた。
「金属(コンピューター)よりも人間」
キャサリンの計算能力を認めているのは勿論なんだけど、
キャサリンを人間として信頼して、宇宙飛行計画の命運を託した。
その英断に胸が熱くなったよ。
ちょっと嫌な感じの白人女性上司はいるし、
トイレだけではなく、ポットですら差別されている職場の窮状も描かれているけど、
あからさまに意地悪をしたりする根っからの悪人はいない職場。
仕事って正しいコトが必ずしも通用しない。
何かしらは我慢しないとやっていけない。
でも、人間は自分の良心には嘘をつけない。
業務を全うしたいひたむきな志しの黒人女性達とそんな彼女達を次第に受け入れていく白人同僚達。
人種や立場の垣根を越えて、かけがえのない絆が芽生えていく職場。
宇宙飛行計画だけではなく、女性の社会進出のパイオニアとなった彼女達を後年も評価している国家。
観終った直後に「あっ、こういうの良いなぁ~。」と素直に思えた。
人間愛に満ちていて、心がほっこりした作品でした。
この作品、大阪では普通にシネコンでかかっていたんですよ。
私は公開からしばらく経ってから観に行ったからかもしれないけど、
小さいシアターでの上映だったから公開規模はさほど大きくはないのかもしれないですね。
今年のアカデミー賞はノミネート止まりだったけど、評価は高かったみたいですね。
アカデミーから半年以上経ってからの日本公開だったので、
春か夏頃に日本公開出来ていれば、もう少し公開規模広がったかもしれないですね。
>観終った直後に「あっ、こういうの良いなぁ~。」と素直に思えた。
って本当に思える映画でした。ほっこりとして、そして勇気をもらえました。
なんかこういった映画、なんでおおきなシネコンでやらないのかって思っちゃいました。