趣味と思いつき

いろいろ書いてます

汽車の夢

2021-06-10 00:14:46 | 掌編小説
ナースコールが響いた。
深夜2時、暗がりの中にぼんやりと浮かぶナース室には私しかいない。301…と数字を確認し、ああ佐藤さんか、トイレかな…と考えながら部屋へ入った。
「佐藤さ~ん、どうされましたか?トイレですか?」
個室なので、ためらいなく明かりをつける。室内にふんだんにばらまかれた光を浴びながら、佐藤さんは静かに首を横に振った。
「いいえ。思い出したんです。」
「え?何をですか?」
佐藤さんは認知機能は割と保たれていると聞いていた。何か重要なことなのだろうか?聞き返すと、佐藤さんは笑顔で実はですね、と続けた。それを話したくてナースコールを押したのだろう。
「私…ここの病院に来たとき、意識がなかったでしょう。」
「そうでしたね。脳梗塞で…意識低下でこちらにいらしたんですよね。」
「そう。全然覚えてなくてね。でもね、ひとつだけ思い出したの。」
痩せた手で、病衣の襟を正す。
「その間ね、夢を見てたの。」
「夢…ですか。」
点頭で続きを促す。そんなことで呼ばなくても…と少し思わなくもないが、こういうときはとにかく話を聞いておくものだ。
「そう。汽車の夢。」
声が少しだけ大きくなった。心なしか姿勢も前のめりになっている。
「私がね…誰かと、汽車を待ってるの。長いこと、本当に長いこと待って…汽車が来たんです。それに乗ろうとしたら、一緒にいた人がね、乗せてくれないんです。」
「誰か…?」
「そう。誰なのかはわからないの。そうこうしているうちに汽車は走っていってしまって…仕方がないから次の汽車を待とう…ってところで、目が覚めたんです。」
「そう…ですか…。もしかしたら、その人が佐藤さんを助けてくれたのかもしれませんね。」
「そうねぇ。」
佐藤さんはうんうんと頷いて笑顔を見せた。よし、これだけ聞けば十分だろう。
「では私は戻りますね。また、何かあったら呼んでください。」
「あ、待って。これまで聞いてほしくて。」
なんだろうか、ちょっとしつこいな。
「なんですか?」
「今も同じ夢を見たの。今回汽車に乗ったのはあなただったわ。」

やる気でね~な~

2021-05-11 18:06:46 | 日記
やる気がでねぇんです。
それではきいてください。

やる気出なさすぎて現実逃避に掃除してたら部屋綺麗になりすぎてもう暇つぶせるものがなくなったので、仕方なく思いの丈を歌にしてみた件~また俺サボりやっちゃいました?~




くだらね~
ではまた。

視界に入る不快に参る

2021-05-10 18:11:35 | 掌編小説
「無視することに慣れることができたら一人前」
誰かがそう言っていた。
でも、私は無視することすらできず、慣れるなんてとんでもなかった。だから「見て見ぬフリ」をした。

今日も知らぬ誰かが男尊女卑を説いている。
私は「見て見ぬフリ」をして、キーボードを軽やかに叩く。

『うんちんちん』

昨日の出来事

2021-05-10 17:39:04 | 日記
昨日、午前2時に目が覚めたんですよ。
私は基本眠りがチャレンジャー海淵なので、何の理由もなく目が覚めることがないんです。
でも思いあたる理由がなくて、あれーなんでだろ二度寝するか~と思った瞬間、部屋の窓が開いてることに気が付きました。
おかしい。
だって窓を開けた最古の記憶は4年前。それ以降一度も開けたことがありません。なんならカーテンも開けない。吸血鬼か。
まあ閉めないことには仕方ないので、そっと閉めて二度寝を堪能しました。二度寝ってなんでこんなに幸せなんでしょうね。

そして、朝。7時に目が覚めて、辺りを見回して思い出したんです。家も窓も電気も机も椅子もベッドも時計も、夜も…朝も。
全て、私のものではありませんでした。
まあるく切り取られた、私の生活。
いつか消えていく幻想と思い出にすがっているんですね。

かげおくり

2021-04-26 16:09:28 | 日記