(仮)しだらない話

戯れ言日記

彼方なる歌に耳を澄ませよ

2005-04-13 | 

アリステア・マクラウド (著) 中野 恵津子 (訳)

 1700年代の終わりにスコットランドからカナダに移住してきた赤毛のキャラムに率いられしマクドナルド一族。
 現代に生きるマクドナルド一族の一人である主人公の「私」は、歯科矯正士として成功した人生を送る。だが、「キャラムの子供たち」としての過去とのつながりを日に日に強く意識するようになる。
幼い頃に死んだ両親。残された兄弟と養い親となった祖父母。一族に伝わる歌。始祖キャラムの伝説。スコットランド人としての誇り。すべてが「私」の中で混合されることで、一族の歴史が血の通った記憶へと変わる。
 毎週末「私」はアル中となった兄のもとへ参じる。「血は水よりも濃い」というおばあちゃんの戒めに忠実であるために。
 物語の最後に兄と「私」は始祖キャラムが眠る故郷を訪れる。終わりは始まりへと繋がるもの。
 「私」の中で、キャラムの血、スコットランド人の血は静かに流れ続ける。



回転する世界の静止点

2005-04-09 | 

パトリシア・ハイスミス(著) 宮脇孝雄(訳)

読んでいて「異邦人(カミュ)みたい」と思っていたら、この著者、「太陽がいっぱい」の作者とか。
ザラッとした事象のみを積み重ねて心理を描写する、いわゆるサルトル的、実存主義的な文章がステキ。