
シンガーがアルバムを作る時、カバー曲を取り上げるのは普通のこと。
シンガーでも、普段自分で歌を作って歌うシンガー(いわゆるシンガーソングライター)は、通常は自作曲でアルバムなどを埋めることが多いし、それがそのシンガーのポリシーでもあったりしてきた。
だが最近は、シンガーソングライターでも、カバー曲でアルバムを埋めることが多くなってきた気がしている。
以前は、シンガーソングライターがカバー曲ばかりでアルバムを作る時は、そのシンガーが新生面を見せるためだったり、ファンサービスだったり、ちょっとしたサプライズだったりする意味合いがあることが多かった。
だが最近の傾向は、そういう意味合いだけではなくなってきている感が個人的にある。
では、どういう意味だろう。
自分なりに考えてみた。で、感じたことは・・。
昔なら「アルバムの中の1曲」という存在の曲まで、1曲単位でダウンロードで買えるようになってきているから・・というのも影響してる気がする。昔なら、アルバムを買わなければ(聴かなければ)入手できなかった「アルバムの中の1曲群」まで1曲単位でダウンロードで買える時代になっているしね。
そしてベストアルバムというのがやたら出されているというのも影響している気がする。いや、もしかしたらそれは結果的にそうなったのかもしれないが。
1~2曲のヒット曲と、アルバムを埋める「ヒット曲以外の、アルバムの中の1曲たち」で作られた 「通常のアルバム」が売れなくなってきている昨今、アルバムは「出来のいい曲が、そうじゃない曲と抱き合わせになっている」という言われ方をしてるのを見聞きしたことがあり、今は「アルバムの中の1曲」という曲は肩身が狭い状況なのかもしれない。
そうなると、都合ヒットソングにしかリスナーの関心が行かなかったりする。
ましてや、曲別でダウンロードで入手できるとあっては、お金を払うならわざわざ「アルバムの中の1曲」を「買う」人は少なくなるだろうから、なおさら。
へたしたら、ヒット曲以外いらない・・・となったりする。この傾向は大きいかもしれない。
それがベストアルバムがやたらと増えている原因の一つのような気はする。
また、カバー曲が増えてるのも、それと同様なのでは。
カバー曲として選ばれるのは、たいがい有名曲だったり、ヒット曲だったり、スタンダードナンバーだったりすることが大半。
そうすれば、アルバムをヒットソングや有名曲ばかりで揃えることも可能。「アルバムの中の1曲」的なオリジナルなどを含まずに。
「アルバムの中の1曲」というのは、ヒットソングに比べると、やや一般性に欠けたり、好き嫌いが出たり、印象度がヒットソングより弱かったりする場合がままある。
そういうのを入れるなら、カバー曲をやることによって、収録曲を全曲有名曲やヒット曲で揃えないと、アルバムが売れづらくなってるのかもしれない。
ベストヒットアルバムの乱発ぶりに苦言を呈するケースが世間ではチラホラ聴こえたりもするし、シンガーとしてはその人のヒット曲の数がある程度決まっている以上、新作アルバムを毎回ベストヒットアルバムにするというわけにもいかない。
だいたい、本来1曲のヒット曲を作ることすら大変なことなのに、新作アルバムを全部新たなヒット曲で埋めるなんてことはそうそう出来るもんじゃない。
どんな才能あるミュージシャンでも、そういうアルバムは生涯に1枚作れるかどうかでしかないのだ。1枚でもそういうアルバムを作れただけでも、そのミュージシャンは超大物になれるだろう。
例えばマイケル・ジャクソンの「スリラー」のように、まるでベストヒットアルバムのような通常アルバムなんて、そうそう作れるもんじゃないのだ。
そんな時、カバー曲を取り上げる ことによって、有名曲ばかりで新作アルバムを作ることもできるようになる。
カバーが増えてるのは、そんな風潮への対策なのではないだろうか。
個人的には・・・アルバムで育ってきた者としては、そのいう風潮はけっこう悲しい。
「アルバムの中の、ヒットソングではない新曲」に、けっこう楽しみを見出すことは多かったし、「アルバムの中の1曲」だからこそできた冒険や実験的な要素を見つけると、そのミュージシャンのその後が楽しみになったりもしたし、そのミュージシャンの側面や、まだ開いていな引き出しなども見いだせたし。
アルバムの中の、ヒットソングではない新曲を楽しむのは、一部のマニアックな人たちだけの楽しみになっていく風潮なのだろう。商売的には、そういう人をメインに据えてはいけないのだろう。
まあ、カバーでも、そのミュージシャンの側面や新たな引き出しを見出すことはできるけれど、それがそのミュージシャンのオリジナルであるというのは、より楽しみも大きい。
まさにそれは、そのミュージシャン独自のものだと思えるから。
もちろん、空振りもある。
でも、その空振りで得たものも大きいはず。
カバーだと、空振りは少ない気はするから、安心感はある。
でも、少し物足りない気はする。
もしかしたら・・・
すでに世の中には多数の名曲が先人たちによって作られてきている。
へたしたら、もう新たに曲などあまり作らなくてもいいということになりはしまいか。
まあ、めったやたら乱作されるのも、質の低下にはつながるけれど。
言えるのは、今作られる曲は、今の時代だからこそできる曲というものもあるはずだということ。
曲というものは、その時代の色々な要素を反映していたりするものだと思う。
その時代に新たに作られる曲がどんどん減っていくと、それは音楽の衰退につながるような気はしている。
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