
旅に出て、現地で時間を過ごし。
そしてやがて帰る時がくる。
旅から帰る時の寂しさったら、ない。
特に、宿や現地から、帰りの電車の駅や、港や飛行場に向かう車に乗った時。
自分の乗った車は、宿のスタッフに見送られ出発し、車が走り出すと・・だんだん宿が遠くなる。
だが、この時は遠ざかる時間はまだ多少はゆったりと流れてる気がする。
なんといっても、寂しさが加速するのは、その車が電車の駅や、飛行場につき、自分が乗った電車や飛行機や船がその場を離れ出した時だ。
特にそれが新幹線や飛行機だと、ものすごい勢いで自分が旅した地方が後ろにながれてゆき、遠くなっていく。
その様は非常に寂しい。
この時は、あっという間に時間が進んでいる気になる。
風景が、自分の旅した現地っぽさがなくなり、見知らぬ田園風景に変わってゆき、やがて田園風景は少しづつ変化し、開けた街の景色が多くなる。
変わらないのは空だけ・・・と言いたいところだが、地方によって天候も変わることも多い。
田園風景がだんだんなくなり、景色は建物が立ち並ぶ都市の風景になってくる。
で、やがて東京の駅に・・・着く。
旅先から帰った電車から降り、東京の駅に戻った時、まるで旅先からテレポートでもしたかのような気分になる。
数時間前まで、山奥や海などの旅先に居たことが、まるで嘘のような気分になる。
で、東京で、自分の住む町に向かう電車に乗り換えると・・・もうすっかり日常に戻ったことになる。
不思議なことに、家に着くと、安堵感も持つ。
旅が終わってしまった寂しさは十分にありながらも、同時に自宅に着いた安堵感も感じる。
家に入れば、旅に行く前と変わらない光景が、当たり前のように目の前にある。
今朝はまだ旅先にいたのだ・・と思うと、旅先にいた時間がまるで夢の中でのできごとであったかのように思えてきたりもする。
特にその旅先が辺鄙なところであったり、人の少ないところであればあるほど。
旅に出る前に感じたウキウキ感が、まるで遠い過去のことのように思えてきたりもする。
現地で過ごしたわずかの期間が、滞在時間の割には中身の濃い内容であったり、思うことや感じるものが多かったりする時間だったりすると、現地への愛着が時間と共にジワジワと増してくる。
とんぼ返りしたくなることも・・ある。
でも・・・そうもいかないのだ。
日常があるからこそ、非日常のありがたみもわかるのだから。
旅から帰って来た日や、間もない日にテレビを見ていて、ニュースや旅番組などで、自分が旅した旅先の映像がながれることがたまにある。
そんな時は・・・その旅先に対してまるで家族のような親近感を持ってしまうし、愛情も感じたりする。
自分が実際に旅したことがあって、しかも印象の良かった旅先というものは・・・やはり特別な存在なのだ。
特別な存在として心に長く残っていきそうな旅先になる予感というものは、すでにその旅先からの帰り道には感じている。
だからこそ・・・そんな旅先からの帰り道というものは・・・切なく寂しい。