
「私、足が痛むかもしれないので、散歩になるかもしれないよ」「アハハ・・まさか3歩?」「足の薬指一本で体全体が不自由になるなんてね」「じゃあ、単車でのぼる?」「そんなのつまらない。3歩でも10歩でも歩こう。ラジオでガン予防のために一週間に3時間歩けって言っていたよ。」
足が動くよりも口が良く動く。口なら一日3時間だってこなせるんだけれど・・・。
「あれ、あの犬居ないね」いつも飴など与えてちょっと遊んでから登った、あの犬小屋もなくなっている。「死んだんだって」「・・ちょっと淋しいね。」と、いうよりなんだかとてもつまらなくなった・・。妹は猫のなっちゃんの思い出を話し、私は兎のとこちゃんの思い出を話しつつ、しっとりと朝露に濡れた落ち葉を踏んで登ってゆく。
「ね、ね、あそこのもみじ綺麗やろう・・この前の台風で根が傷んでね、去年はほとんど葉を付けなくて駄目だったけど、今年は綺麗に色づいているよ。」
木にもドラマがあるのだ・・回復する木もあれば、痛々しく病んだ白い幹を骸骨のようにさらして林立している桜もある。
「もみじをライトアップしているんだよ。ほら、」電球をいくつも木に向けてセットしてある。「可哀想に夜は木も眠りたいだろうにね・・」人間のどん欲で酷使されている。弱った桜の間にあるもみじまでと、ちょっと辛い光景。本当は桜も紅葉が綺麗なんだけれど、弱っているから色づかないうちに散ってしまう。
それでも空気は清々しくて、向うに広がる山々は、緑や黄色、紅、オレンジ色のモザイク模様が広がっている・・しっとりと潤してくれる空気を感じつつ、紅く柔らかい落ち葉をゆっくりと踏みしめて登る時足の痛みもほとんど感じない。
どこからかエナガの群れがやってきて、紅葉の小枝をさかんに飛び交い小さな体で葉つついては散らしている。
妹が頬をふくらませてプーッと吹く。私も同じようにプーッと吹く。
「駄目だね。これも年の所為だね、若い頃にはこれで山中の紅葉を散らしたものだよ。」二人で笑い転げつつ・・神様のプレゼントを満喫した。
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