yokomizoの覚え書き

切手とSFと本が好きなおっさんのひとりごと。

外国・テーマティク

2006-11-18 | 郵趣(旧)
 さて、これまでの私の<JAPEX>出品作品に関するコメントは、日本切手分野ばかりだった訳ですが、競争展では外国切手の伝統郵趣部門にも、テーマティク部門にも作品は出品され、住野賞や小倉賞の受賞作も出ております。当然、審査員の方々からも、きちんと<名品展>向けのマテリアルをあげていただいてはいるのですが、私自身が真剣に集めていないこともあって、外国・テーマティク作品についてはコメントをすること自体、やってはいけないことのように感じております。
 というわけで、以下に書かせていただくのは、門外漢が見た、愚かな感想文としてお読みいただければと思います。

撮影マテリアル その14
「台湾(中華民国)」
・飛雁加刷一版 20圓
・飛雁加刷二版 50圓
・飛雁加刷三版 50圓

 作品自体は初期台湾切手のカタログ・コレクションなのですが、審査員の方にあげられた上記切手のカタログ価を見てビックリ! 切手の状態も良く、オーソドックスな印象を受けつつも、見応えのある作品だったと思います。


撮影マテリアル その15
「ロンバルディ・ベネチア1850-54」
・15センテシミ セント・アンドリュース・クロスの一部付き

 オーストラリアが実質支配していたロンバルディ・ベネチアの最初の切手をまとめた作品。これもある意味カタログ・コレクションとのことですが、カタログはカタログでも、斎藤さんのこの作品は「専門カタログ」のカタログ・コレクション、ベネチアの切手などほとんど知らない私が見ても、この作品がスゴイことは分かります。
 外国切手の伝統郵趣作品はこう作るんだというお手本のような作品で、『郵趣』の連載でオーストリアの伝統郵趣に挑戦中の中原嬢が、この作品の前でN先生からレクチャーを受けてました。


撮影マテリアル その16
「ドイツ インフレ 1922から1923」
・切手105枚貼書状カバー

 第1次大戦後、通貨が天文学的な数字になるような激しいインフレに見舞われたドイツ。その時期の郵便料金の移り変わりを、カバーで紹介するこの作品は、ある意味、ものすごく衝撃的でした。その当時のドイツを描いた映画や本などで、街の至る所で失業者があふれ、ガリガリに痩せた子供たちがたった1枚のビスケットに群がるシーンなどを見ましたが、そういったことを私に信じさせるだけの説得力が、この作品にはあったように思います。
  
撮影マテリアル その17
「鉄道-19世紀から20世紀への軌跡」
・パンアメリカン博覧会2セント 機関車逆刷りエラー
・鉄道図案1番切手5枚貼カバー
・米・1869年シリーズ 再版 3セント切手
・中国塩阜解放区・火車図郵票
・ペルー 世界最初の記念切手5枚ストリップ

 この作品は鉄道図案のあらゆる珍品が収められた作品で、今回の『郵趣』の特集では中心的な作品になりそうな予感がしていました。鉄道というよりも、世界の珍品マテリアルが目白押しでしたね。特にアメリカの機関車逆刷りエラーは、しばらくじっと眺めていたくらいです。ただ、あまりにもそういったマテリアルが個性を発揮しすぎていて、作品全体の流れが非常に悪くなっているように感じました。悪く言えば、そう言ったマテリアル以外、あまり印象に残っていないということでしょうか。

「旧小判切手」2題

2006-11-17 | 郵趣(旧)
 今年の<JAPEX>の目玉だったのが「小判切手」。企画展示「小判切手130年」は今後、これ以上の「小判切手」に関する展示はありえないと思える規模でした。小判切手の珍品の代名詞である「旧小判切手30銭目打11L」が11枚、エッセイやプルーフ、カラートライアルといった資料類、まさに「眼福にあずかる」といった内容でしょうか。私も最近、小判切手の収集を細々と始めたところなので、参観しているうちにハイテンションになっていきました。
 これだけの小判切手の名品が集まったのですから、オールカラーの豪華本に纏めたいと思うのが、私のような出版人の考えることなのですが、様々な事情により、それはかないませんでした。しかし、展示企画者が目指した「記憶に残る企画展示」の実現は十二分にかなったと思います。

 私のブログでは『郵趣』に掲載する「誌上名品展」の掲載対象作品となる、競争出品作品に限ってコメントさせていただこうと思います。

撮影マテリアル その9
「旧小判切手1876~79」
・8銭A完全銘版田型ブロック
・4銭A完全銘版6枚ブロック
・1銭黒・U小判1銭貼異種同額面貼カバー
・12銭単貼外信便カバー
・30銭単貼外信書留便カバー
・45銭ペア貼オンピース

 多くの小判切手収集家が固唾をのんで参観したのではと思える大鐘さんの作品。大村さんのグランプリにケチをつける訳ではありませんが、私は大鐘さんがグランプリの最有力と勝手に考えてました。一緒に見ていた審査員の方が、この作品からなら名品候補がいくらでも出るよ、と言われ、この作品のすごさを改めて痛感した次第。
 個人的に惚れ惚れと拝見したのは、4銭A銘版の完全6枚ブロック。この額面の初期独特の青色が非常に映えていて、美しさすら感じました。最近亡くなられた小判切手の大家・番野氏の旧蔵品とのことですが、旧小判切手の中で4銭に人気があるのも納得できるものでした。その他では、1銭黒とU小判緑1銭が貼られた、異種同額面カバーがユニークでした。1銭黒の後に発行された1銭茶と黒、茶と緑という組み合わせの異種同額面貼カバーは拝見したことがありますが、黒と緑の組み合わせは話には聞いていたものの、実物を拝見したのは初めてです。
 いずれにせよ、企画展示のショウケース展示に続くフロント作品として、それに相応しい内容だったと思います。

撮影マテリアル その10
「旧小判切手」:成田作品
・4銭大ボタ那覇消し

 私と同い年だという成田さんの作品。ご自身が明治時代の消印収集家で、ある程度のマテリアルもお持ちだったとは思いますが、ほぼ1年で、旧小判切手のこれだけの作品を作られるとは、驚き以外に何の感想も最初は浮かびませんでした。
 審査員の方に言わせると、特に貴重なマテリアルはなかったようですが(私には貴重に映るものがイッパイありましたが)、貼られている切手に消印収集で培ってこられた経験と知識が、作品中にそこはかとなく漂う良い作品だとのことでした。私も作品の中から、成田さんの奥深い知識を何となく感じましたし、その辺が短期間でこれだけの作品を作らせ、評価されたのだと思います。
 ところで、成田さんといえば、文献部門に「明治の全郵便局所沿革」も出品され、こちらも見事、大金銀賞を受賞。本当におめでとうございました。


 それにしても、企画展示「小判切手130年」を取材して思ったことは、本当に収集家同士のつながりが強いこと。それはこの企画の構成を担当された「小判振舞処」の存在と、その会に漂うフランクな雰囲気がなせるワザのような気がします。そして「小判振舞処」という存在が、この分野の人気の高さを支えているように感じました。私が収集する昭和切手の世界にも、「小判振舞処」のようなサークルが出来ないものでしょうか。私も喜んで参加するのですが……

郵便史作品3題

2006-11-16 | 郵趣(旧)
 競争出品の切手展などでは、必ず見どころのある作品が出品される「郵便史」のジャンル。今回の<JAPEX>でも丹下さんの「確立・発展期の近代日本」、本池さんの「関東大震災後の通信事情」など、高い評価を得ていた作品がありました。
 しかし、私自身はいまだに「郵便史」コレクションの見方というか、楽しみ方がよく分からない。考えてみれば、私自身、“切手”や“消印”に魅力は感じても、“郵便”には“切手”や“消印”ほどの愛着は持っておらず、その辺が「郵便史」に馴染めない理由なのかも知れません。ですので、私は「郵便史」作品を見ても、作品のストーリーを追うというより、そこに収録された個々のマテリアルばかりに気を取られ、作品の完成度やすごさに気が付いていないと思います。
 そんな私が「郵便史」作品を語っていいのか、という気もしますが、いちおう、審査員の方が「名品展」マテリアルをあげて下さった作品で、個人的に印象に残ったものの感想を手短に。

撮影マテリアル その11
「確立・発展期の近代日本」
・青島軍事貼実逓カバー
・震災切手全種貼書留外信便カバー YOKOHAMA欧文丸二印消

 改めて言うことではありませんが、「郵便史」とは郵便の歴史をマテリアルで辿るものだと理解しています。その点において、丹下さんのこの作品は非常に分かりやすかった。見どころとなるマテリアルも、上述のものばかりではなく、ふんだんと取り込まれており、飽きることはありませんでした。
 根本的に私にとって、「郵便史」作品にありがちな郵便制度や地域を深く掘り下げた作品は、よほど個人的な好奇の対象でない限り、印象に残りません。逆に、言葉通り「郵便」の歴史を淡々と目で追っていける作品は、そのスケールの大きさが伝わってきて、非常に印象に残ります。しかし、「郵便史」作品で淡々と「郵便」の歴史をまとめることは、ストーリー展開や貼ってあるマテリアルの個性などが多大に影響して、非常に難しいのではないでしょうか。
 丹下さんの作品は、私にとって後者の「郵便史」作品だったかなと感じてます。

撮影マテリアル その12
「関東大震災後の通信事情」
・東京宛書留便書状 引受中止前日差出、引受再開初日配達

 本池さんの作品は、災害によってマヒした郵便をはじめとする通信状況をまとめた作品といえるでしょうか。関東大震災に関しては、現在でもさまざまなマテリアルが残されていますが、この作品の特徴はリアルタイムなマテリアルがふんだんに使われていたことが魅力になっていたと思います。郵便だけではなく、被災地・東京の主要地に設置された臨時電信局の通話券などもあり、当時のリアリティが伝わってきました。

撮影マテリアル その13
「取扱地域指定時代の速達郵便」
・菊8銭単貼速達書状

 伊藤さんのこの作品は、速達の取扱地域が限定されていた時代に限った、“速達”という郵便制度を紹介する内容といったところでしょうか。いわゆる“速達”制度初期のマテリアルが作品の要で、菊8銭単貼書状、田沢・震災切手混貼速達第3種便などが印象に残りました。


「新動植物国宝 1966-1971」

2006-11-16 | 郵趣(旧)
 今年の<JAPEX>の企画のひとつだった「ローマ字入り切手40年」。この企画に寄せて『郵趣』10月号でも「新動植物国宝・1966年シリーズを読み解く」という特集を掲載しましたが、執筆者であるK氏の作品は会場にはなし。多くの方がK氏の「1966年シリーズ」作品が見られると思われていたようで、本当に申し訳ありませんでした。担当編集者としてお詫び申し上げます。
 K氏は「『郵趣』の記事のせいで作品が作れなかった」なんて言ってますが、真相は今年の場合、記事制作と<JAPEX>の企画が別進行で動いていたためなのです。まあ、実際のところ<JAPEX>実行委員会からK氏へ作品出品依頼があり、記事執筆を理由にK氏が断ったかもしれませんが……

撮影マテリアル その9
「新動植物国宝 1966-1971」
・60円延暦寺単貼農産種子便カバー
・75円新蝶単貼簡易書留重量便カバー
・75円新蝶単貼外信印刷物重量便カバー
・発光15円5枚貼定形外簡易書留重量便カバー

 「新動植物国宝」は<名品展>などの記事企画で扱う場合、編集者サイドから言わせてもらうと、非常に扱いにくい切手です。というのも、未使用切手はありふれているため、名品にはなりません。載せるなら『郵趣』で特集したように目打なのですが、目打にしても大きなブロックでないと示せない、拡大図を使わないと分かりにくい、というように限られた誌面では扱いようがありません。カラーマークにしても、似たような色調は出せますが、正確な色調は再現しようがありません。したがって、このジャンルでは使用済やカバーが対象になってしまうわけです。
 で、その記事として扱いやすかったのが、高村さんの作品。目打など製造面を極力省略して消印や使用例で各額面を表現した作品で、貴重な使用例が目白押しでした。製造面と使用面をバランス良く示さねばならない<伝統郵趣>では、マイナスにしか働かない展示方法ですが、個人的には非常に見やすい作品でした。いつぞやネット・オークションで話題になった発光15円5枚貼カバー、初期使用の少ない簡易書留の、しかも重量便使用例となる75円単貼カバー、同じ75円単貼の船便印刷物カバーなど、非常に目の保養となりました。
 審査員の方も言っていましたが、これだけ使用面で名品を示せるなら、後半の1967年シリーズを外して未使用マテリアルを加えた、<1966年シリーズ>だけの作品にすれば、銀銅ではない結果も残せたと思うのです。まあ、高村さん自身、未使用切手より使用済切手に愛着を持たれる方なので、使用面に特化した今回の作品は、彼らしいといえば彼らしい。次回、出品されることがあれば、ぜひとも製造面も補完して、「新動植物国宝」でも上位入賞が獲れることを証明していただきたいと思います。

「戦後記念1946-49」と「戦後の記念切手1946~1951」

2006-11-15 | 郵趣(旧)
 新昭和切手、第2次動植物国宝に象徴されるように、今年の<JAPEX>は3つの戦後切手ジャンルに見応えのある作品が多かったと思います。もうひとつの戦後記念ジャンルというのが、「記念切手」でした。国体や文通週間、年賀切手だけの作品もありましたが、戦後最初の記念切手「郵便創始75年」から「文化人・観光百選」までの切手をまとめた作品が3つもありました。
 大久保さん、西川さん、滝川さんの各作品ですが、それぞれに見どころのある、素晴らしい作品だったと思います。大久保さんは私の記憶が正しければ、ネット・オークションで記念切手キラーとして話題になった方だと思います。また、西川さんは記念切手の専門収集家として記事も書かれている方、滝川さんはスタンプショウで開催されるオープン切手展の上位常連出品者。それぞれの個性や得意な分野が端的に表現されていたと思います。

撮影マテリアル その6
「戦後記念1946-49」
・郵便創始75年小型シートみほん
・郵便創始75年50銭単貼外信はがき
・郵便創始75年1円単貼外信便
・別府観光 別府消

 大久保さんの作品は、戦後混乱期である1940年代後半に絞ったものでしたが、戦後記念収集で最も難しいとされる小型シートの使用済やカバーがふんだんに入ったものでした。私は初日にざっと拝見し、3日目に審査員の方とじっくり拝見しましたが、やはり戦後最初の記念切手「郵便創始75年」のパートは非常に印象的でした。何と言っても、切手4種それぞれの単貼実逓カバーが揃っているのがハイライトでしょうか。特に50銭単貼外信はがきは秀逸だと思います。消印が読めなかったのですが、そんなことを指摘するのは重箱の隅をつつくようなこと。ただでさえ使用済の少ない切手であり、外国郵便の少ない時代の切手ですから、存在自体が珍品クラス。審査員の方もこのマテリアルに関しては非常に褒めておりました。
 また、戦後記念の大珍品である「郵便創始75年」小型シート初版を見せるために、誰が見ても初版であることを証明するため、「みほん」字入りを持ってくるあたり、展示のセンスを窺わせるものでした。濫発小型シートの使用済や使用例もまるごと使用のものではなく、実際に郵便物に貼られて使用された切り抜き使用のものを中心にしておられ、その点もこの作品の質を高めていたと思います。
 ただ残念だったのは、産業図案16円穂高岳と同図案の記念切手「長野博」貼カバーとして展示されていたもののなかに、産業図案16円と思われる色調のものがあったこと。戦後切手を熱心に集める何人かの方も、そのことを指摘されていました。同系色なので間違いやすいのですが、並べてみればその違いは際立ちますので、作品の中でも結構目立っていたと感じました。

撮影マテリアル その7
「戦後の記念切手1946~1951」
・伸びゆく電気通信展小型シート済および実逓カバー
・別府観光 別府消

 西川さんの作品は大久保さんの作品より範囲が拡がっていますが、その代わり使用面を中心にすえた作品でした。文化人切手の製造面に詳しい西川さんだけに、そのパートが抜けていたのが残念でしたが、機会があればそのパートだけの作品を公開してくれることを信じます。
 定常変種やカバーに重点を置いた作品に見えましたが、使用済切手にも消印の妙というか、佳品が多く貼られていて、さすがは記念切手を専集されている方の作品だと思いました。一方、他の2作品に比べると見づらさを感じた作品でした。おそらく、リーフ上のレイアウトなど、展示方法にメリハリを感じなかったためだと思います。消印や使われた封筒などの“汚れ”が目立つ時代の切手でもありますから、その辺もスッキリ見せるための工夫があれば、もっとマテリアルが魅力的に感じたのでないかと悔やまれます。
 噂によれば西川さんは今後、戦後記念の収集をやめるとのこと。この作品も解体されてしまうのかと思うと悲しい限りです。

撮影マテリアル その8
「記念切手1946~1952」
・東京切手展記念小型シート全貼カバー

 滝川さんの作品は前述の2作品に比べると、マテリアルの面での見劣りは否めませんでした。しかし、撮影させていただいたマテリアルをはじめとする、前述2作品にはなかった佳品マテリアルがいくつも入っており、見どころは充分だったと思います。また、リーフのレイアウトや展開は、さすがオープン切手展の上位常連出品者と思わせる巧さが有ったと思います。作品中、FDCも多用されておられましたが、伝統郵趣の競争出品作品としては大きなマイナスだったかと思うものの、一般の人たちが見る作品としては、最も見やすかった記念切手作品だったのでないでしょうか。

「第2次動植物国宝」2題

2006-11-14 | 郵趣(旧)
 今回の<JAPEX>の話題はさまざまあったと思いますが、競争出品の日本伝統では、「第2次動植物国宝」シリーズの2つの作品に注目が集まっていたと思います。山路さんの「第2次動植物国宝切手」は、このシリーズの難所や急所をほぼ揃えていた作品で、現行切手収集家はもちろん、審査員の方々まで魅了していたのではないでしょうか。
 もうひとつは昨年の<JAPEX>で「第1次動植物国宝切手(銭位)」を出品された、大西さんの「第2次動植物国宝切手(円位)1952~1965」。「(銭位)」同様の展開で、丁寧に吟味されたと思われるマテリアルが並んでいました。山路さんの作品と比較されるため、ちょっと損をしたかと思いますが、この分野における屈指の作品であることは間違いないと思います。

撮影マテリアル その5
「第2次動植物国宝切手」
・印刷庁銘付みほん字単片
・35円金魚 印刷庁銘未使用フルシート
・航空五重塔40円、3円ホトトギス2枚貼
 ソ連抑留者宛往復葉書
・30円平等院無目打未使用ペア
・100円鵜飼無目打未使用ペア
・24円14円2円混貼アメリカ宛航空便
 欧文機械TOKYO消

 このシリーズの製造面のハイライト、「印刷庁銘版」がこれでもかというくらい入っていましたね。35円印刷庁銘版の未使用フルシートには本当に驚かされました。こんなのが残ってること自体、奇跡に思えます。また、カタログでは分かりにくい用紙、糊の区別がしっかりと展示されていたのは私自身も勉強になりました。35円プルーフやオシドリ図案が消えた5円茶色もれ、30円と100円の無目打など、有名なエラー切手も当然のように含まれていて、「切手市場」の常連出店者でゲンコーを熱心に集める方が、そのフレームの前で大きなため息をついていたのが印象的でした。
 山路さんの作品は製造面の見所ばかり目立ちましたが、一方で使用面も非常に面白いものが多かったと思います。各額面の基本的な使用例だけでなく、郵便史的な視点からも選ばれており、その点がかなり審査で有利に働いていたのではないでしょうか。
 私にしてみると、このシリーズであと何のマテリアルを加えれば審査点が上がるのか、全く見当がつきません。いずれにせよ、このシリーズでこの作品以上のものを、個人では作れないような気がしました。


撮影マテリアル その5
「第2次動植物国宝切手(円位)1952~1965」
・10円外信船便印刷物 欧文機械OSAKA消
・10円コイル30枚貼オンピース
・50円印刷庁銘版未使用10枚ブロック

 大西さんの作品は、ご本人は気を悪くされるかも知れませんが、「不運だった」というのが私の率直な感想でした。どうしても前述の山路作品と比較されますし、山路作品のような派手な注目マテリアルが少なかったので、大西さんの作品に含まれていた貴重なマテリアルを見逃した参観者も多かったのではないでしょうか。私は大西さんが個人的に知り合いで、「切手市場」の出店者であることもあったので、山路作品より先に拝見しました。おかげで貴重なマテリアルも見逃さなかったかなと思ってます。
 両作品をプロ野球の球団に例えて言えば、山路作品はスター選手が多く集まる巨人だとすれば、“仕事人”と呼ばれる生え抜き選手が多いヤクルトや広島でしょうか(かえって分かりにくいか?)。また、マテリアルの展示方法やレイアウトに関していえば、大西作品のほうがスッキリとしていて、、見やすかったと思います。
 大西さんの作品で最も惚れたのは、個人的に大好きな切手ということもあり、30円平等院多数貼の外信便でした。残念ながら審査員の方が選んだ名品には選ばれませんでしたが……。それと、10円切手単貼の外信船便印刷物欧文機械消は見事ですね。また、以外に難しい5円と10円のコイル切手に関するマテリアルが充実していたのも印象に残りました。

 両作品を見終えて思ったことは、「第2次動植物国宝」切手の面白さでした。私も昔、このシリーズは指南番の本に触発されて熱心に集めていましたし、切手のデザインも見とれるほどでした。何だか、改めて集め直したくなりました。

「第2次・第3次新昭和切手」

2006-11-13 | 郵趣(旧)
撮影マテリアル その3
・第2次新昭和50円能面 右書印刷局銘版
・第2次新昭和1.20円五重塔 せますかし
・第2次新昭和4円初雁 せますかし
・第2次新昭和45銭数字 無目打ペア
・第2次新昭和5円捕鯨 無目打田型
・第3次新昭和10円縦螺鈿 無目打ペア
・第2次新昭和1円前島 農産種子便カバー

 言わずと知れた<JAPEX'06>のグランプリ作品で、<JAPEX>史上、初めて戦後発行切手でグランプリを受賞した作品となりました。大村さんはお仕事がデザイナーということもあって、非常にリーフや切手のレイアウトのセンスが素晴らしく、非常にオリジナリティにあふれた作品だったと思います。

 ご本人曰く、「自分の集めてる切手は汚いのばかりだから」と言われる通り、日本切手史上、粗製時代の切手を集めていらっしゃる訳ですが、その切手がきれいに映えるテクニックを、リーフ上にいろいろと使っていらっしゃいました。切手の刷色に合わせた座布団(切手をスキャンして色を抽出し、その色でリーフに印刷していらっしゃるとか)、リーフサイズの柔軟性(規格サイズではなく、貼った切手の量やサイズによって、リーフの大きさを変える)など、「大村マジック」とでも呼びたくなるオリジナリティにあふれた展示テクニックは、大いに勉強になりました。
 大村さんの集める第3次昭和と新昭和切手は、製造面分類が非常に複雑で難しいと感じる分野なのですが、それを見る人に分かりやすく、そして魅力的に展開するところが、大村さんの尊敬に値するところだと個人的には思っています。一昨年の<JAPEX>のことですが、『郵趣』の連載を担当することになった切手シロウトの女子大生、そう、私が担当した「いくちゃん」が大村さんの作品を見て、こんなことを言っていたのを思い出します。
 いくちゃんは大村さんの「30銭五重塔」のリーフを見て、「最初は、何で同じ切手がたくさん貼ってあるのかと不思議だったんですけど、見ているうちに貼ってある切手全部に違うところがあるのが分かってきて、あとは夢中でその違いを探してました」というような感想を私に言ってくれました。初めて見る切手のはずなのに、大村作品は彼女にその切手の一番面白いところを理解させ、興味すら抱かせてしまったのです。
 また、うちの嫁が昨年、大村さんの第3次昭和5銭飛燕のリーフをみて、「すごくきれいな切手だね」と言いました。切手の粗製時代の代表でもある、第3次昭和切手をきれいと言わせるあたり、大村さんのリーフ・テクニックのすごさを身に染みて感じました。

 個人的にも撮影マテリアルをはじめとした、マテリアルの実力のすごさも感じてはいるのですが、そのリーフ・テクニックの方に魅力を感じずにはいられない作品でした。

「和桜青一銭」と「昭和切手」

2006-11-12 | 郵趣(旧)
撮影マテリアル その1
・和桜青1銭・第19版
・和桜紅3枚、洋桜黄2銭ホ、和桜1銭15版30番貼
 シカゴ宛外信便カバー

 昨年、ワンフレーム・クラスに出品されていた作品の3フレーム拡大版とでも言いましょうか。私自身は手彫切手は不勉強なので、詳しく分からないため、審査員の方にこの作品の面白さをレクチャーしていただいた始末……、勉強します。
 和桜青1銭は全部で26もの印刷原版があり、その原版ごとに切手の評価が違うのは、「日本切手専門カタログ(日専)」でも分かります。その中で、特に珍しいのが第19版で、この作品には6点9枚の切手が飾られていました。版の違いに関しては私も不勉強なため、よく分からないのですが、それでも19版のリーフを飾った、エラーを含む3枚ストリップ使用済は、私でも分かるすごいオーラを発してました。これを私が会場で見ていたとき、隣には現代の“手彫切手”の代名詞的存在でもある、タカハシスタンプの会長がおられ、私がその19版のリーフを見た後、やはり、その3枚ストリップをじっと凝視されておりました。
 この作品で最も私が感慨深く眺めていたのが、実は和桜紅3枚、洋桜黄2銭ホ、和桜1銭の5枚の桜切手が貼られた外信カバー。多数貼の迫力もさることながら、全体の赤・青・黄のカラー・バランスが見事で、今回展示されていた手彫切手のカバーの中では、ピカ一だったのではないでしょうか。案の定、この作品から『郵趣』用のマテリアルを審査員の方に伺ったところ、最終的にこのカバーが選ばれました。


撮影マテリアル その2
・第1次昭和30銭無目打ペア
・第2次昭和5銭・10銭地図 糊有大日本銘版
・第2次昭和27銭・10銭地図混貼 書留配達証明カバー
・第3次昭和30銭・1円混貼 速達カバー

 「昭和切手」は私の収集範囲ですので、楽しく作品は拝見しました。第1次のパートは入手しにくいものは揃っているものの、むしろ簡単なものが抜けていたり、初期印刷となっていてもちょっと色味が違う切手が貼ってあったりと、なんだかもったいないなあというのが印象でした。しかし、第2次昭和のパートに移って、私自身初めて見た使用例を発見。しばらくそこで釘付けになりました。それが27銭靖国と10銭地図を貼った書留配達証明。27銭切手がキズものになっているのが惜しいのですが、消印は昭和20年2月の適正使用。切手のキズを差し引いても、昭和切手コレクターには名品と映ったに違いありません。
 出品者の松浦さんは、「切手市場」の私のブースで昭和切手カバーをたくさん買ってくれたので、お顔を覚えておりまして、3日目には直接お話しさせていただく機会もありました。切手展に出品したこともない私ですが、私の感想を申し上げたら、真剣な面もちで聞いて下さいました。審査員の方が「日専」掲載のバラエティをしっかり揃えれば、まだまだ上が目指せるとおっしゃっていましたが、まさにその通りだと思える作品でした。

JAPEX記事制作スタート

2006-11-11 | 郵趣(旧)
 <JAPEX>が終わり、『郵趣』編集部ではいよいよその関連記事の制作がスタートしました。<JAPEX>記事は例年新年1月号の掲載されるため、連載記事の入れ替えや誌面構成の変更などと共に制作を進めるため、1年で最も忙しい時期に当たります。

 まず、やらなければいけないのは誌面に掲載するマテリアル(展示されていた切手やカバーなど)やリーフの撮影。数年前までは写真撮影していたのですが、現在はスキャナーで画像をパソコンへ取り込んだり、デジカメで撮影したりしています。切手収集家としては、あらゆる貴重なマテリアルと直に対面できる機会ですので、1年で最も仕事上の役得を感じるところなのですが、実はそんなことはあまり頭になく、ただただ緊張感に苛まれてます。時間をかけて慎重に仕事をすすめなければ、出品の方々にも失礼でしょうし、慌てて作業してマテリアルを痛めることは、決してあってはならないからです。
 本来なら、<JAPEX>が終了すれば、すぐに出品者へ作品を返却できるのですが、実際には、こういった出版物への掲載準備作業のため、なかなか出品者の方々に作品を返却できず、結局<JAPEX>終了2~3週間後に返却となるのは、こういった理由だからです。出品者の皆さま、本当にすみません。
 
 ところで、このマテリアルやリーフの撮影では、結構な緊張感を持って作業にあたるため、私は手袋が手放せません。というのも、緊張で手が手汗まみれの状態になるためです。私の汚い手汗を貴重なマテリアルに染みこませて、シミなんかになったら申し訳ありませんので、作業中は手袋が欠かせないのです。

 で、せっかくなので撮影したマテリアルについてご紹介しながら、<JAPEX>出品作品の感想を、しばらくこのブログに書いていこうと思います。
 

管理人の奥様のお店

2006-11-06 | 雑記(旧)
 今日、管理人の奥様が始めた韓国家庭料理のお店「よんじこんじ」に行ってきました。管理人から奥様がお店を始めることは聞いていたのですが、詳細はよく分かりませんでした。ただ、「切手市場」スタッフの一人から、10月中旬に茅場町の証券街にオープンすることだけ、聞いておりました。
 で、そのスタッフが10月下旬にそのお店へ職場の人と行ったらしく、オープンしたことを11月の「切手市場」で知り、嫁とお祝いも兼ねて出かけてきた次第です。

 お店は東京メトロ・茅場町駅で下車、証券会館の真裏にありました。飲食店の雑居ビル1Fの奥で、座敷スタイルの席は4名テーブルが全部で4つ。料理は韓国の家庭料理を中心に、韓国鍋やサムゲタン、焼肉(現在は提供できないそうです)もメニューにありました。
 注文した料理はいずれもおいしかったのですが、キムチはさすが、という味でした。市販品や普通の焼肉屋で出てくるレベルとは違い、酸味のある本格的な味。オススメです! 奥様によるとオススメはキムチもそうなのですが、韓国のお好み焼きチヂミもオススメだそうです。確かに私たちが注文した海鮮チヂミは美味でした。
 軽く食べるつもりだったので、鍋は注文しませんでしたが、他のお客さんが注文していた「キムチ鍋」は美味しいそうでしたね。今度行ったときは鍋を注文するでしょう。

 というわけで、管理人の奥様は店の近くでビラ配りをしたり、リーマンのえげつない冗談を笑って受け流したり、お忙しそうでした。お店が軌道に乗るまで大変かもしれませんが、味は美味しいので、きっと上手くいくと思います。このブログをみて、近くにお勤めの方や韓国料理が大好きという方がいらっしゃいましたら、ぜひ行ってみてください。

 ちなみに嫁が「切手市場」HP内にリンクページを作りました。メニューや地図、連絡先などはこちらをご参照下さい。

今週末は<JAPEX>

2006-11-02 | 雑記(旧)
 いよいよ<JAPEX'06>ですね。職場は『郵趣』12月号の準備と<JAPEX'06>の準備でてんやわんやです。

 状況を実況したいところですが、私も『郵趣』12月号の準備で泣きたくなるくらい忙しいので、
今日はこの辺で。

 では、みなさん<JAPEX'06>切手市場で週末、お会いしましょう。