息子の好きなガトーショコラ

郊外の山の中に、茶色のレトリバーがいるカフェがある。

息子は動物が好きだからドライブがてら、たまに立ち寄る。
この間の日曜日、久々に行ってみた。


そこのケーキは、上にベリーと生クリームがたくさん載っていて女子にはたまらないけど、息子は偏食だから頼む物は決まってる。


「ガトーショコラ、上には何も載せないで下さい。」


今回も、そう言いかけた時。

「上には何も載せないんですよね？」

たまにしか行かないのに、憶えてくれていた。



そうして運ばれてきたガトーショコラの上には、まぁるいチョコレートが3個載っていた。

美味しそうに食べる息子の横には、食べたそうに口の端からヨダレが垂れているレトリバーが。


帰りに、ガトーショコラを息子の分と私の分2つ買って帰る事にした。


会計で、先程の女性が私が差し出したガトーショコラを見て言った。


「昨日、久しぶりにガトーショコラを作ろうって思ったんです。

でも、今日はなかなかガトーショコラが動かないなって思っていたんですけど、今、思い出しました。

ガトーショコラを作っている時に、上に何も載せないで食べるガトーショコラが好きな男の子がいたなぁって思い出しながら作ったんでした。

そしたら今日来てくれて、なんだか嬉しいです。」


ことしの初夏に数回来ただけなのに、息子の事を覚えていてくれた。


私もなんだか嬉しくなった。
今度来れるのは、いつになるだろう。


その時も、息子の頼むのは上に何も載っていないガトーショコラなんだろうか？