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From Classics to Today's Hits

「夢の滑走路」

2023-12-02 04:48:02 | 大西好祐
「夢の滑走路」


幼い頃、誕生月が巡ってくると、私たちは教室の前に立たされ、将来の夢を語る儀式があった。私は周りに倣って「パイロットになりたい」と言った記憶がある。女の子たちは大抵「花屋さんになりたい」と。今の多様性を重んじる時代では想像もつかない一色彩だった。果たして、その中で何人が本当にパイロットや花屋になったのだろうか。

パイロットとは、当時、高給取りで、スッチーと共に世界を自由に飛び回る、悠々自適な職業のように思えた。田宮二郎が主演する「白い滑走」を見て、英語を駆使する彼らの生活に憧れた。松坂慶子と山本陽子、美しい二人の女性と交わる主人公に、少年の心はときめいた。その夢を追いかけ、48時間の単発エンジンのライセンスを取ろうとしたが、シカゴのミッドウェイ空港での訓練は10時間で挫折した。巨大なボーイング737の影に隠れたセスナでの訓練は、絵に描いた餅だった。

時にはスパイに、またある時は弁護士やFBIエージェントになりたいと思った。映画やドラマの影響は計り知れない。

いつもドラマや映画の主人公に憧れていたような気がする。その意味では、エリオットネスと同じ大学、同じ職業に就き、一応の成功を収めたことに満足している。ギャツビーのように、私なりの豊かさで楽しむこともできた。

次に、どの映画のシーンを真似し、どこへ飛び立とうか。模倣から始まった人生は、模倣で終わるのかもしれない。でも、それが悪いわけではない。私たちの人生は、結局、影響を受けたものの寄せ集めなのだから。静かなカフェでジャズを聴きながら、そんなことを考える。窓の外には、雨が降りしきる。それはまるで、過去の記憶を洗い流してくれるかのようだ。そして、私はまた新しい夢を見つける。それが人生だ。