囲碁日記:明日への一打

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佐藤可士和・四国タオル工業組合著「今治タオル奇跡の復活」

2018年01月21日 22時40分50秒 | 棋書
佐藤可士和・四国タオル工業組合著「今治タオル奇跡の復活」を読んだ。

伊予銀行の東京支店に行った際、空中店舗のためか来店者がまばらな待合ソファーの前の雑誌棚に、この本が置かれていた。それがふと目にとまった。

子どもの頃から、今治といえば「タオルと造船」という言葉が頭に染みついていたし、そのタオル産業が安い輸入品に押されて厳しい状況に陥っていたということは何となく知っていたし、佐藤可士和氏がブランディングを引き受けロゴマークが作成されたことも知っていた。しかし、今治のタオル産業が瀕死といえる状態にまで悪化していたことは知らなかった。また、業界団体が定めた基準よりはるかに厳しい四国タオル工業組合の独自の品質基準をクリアしなければ「今治タオル」とは認められないことも初めて知った。

四国タオル工業組合をはじめとする関係者の方々の苦労は大変なものがあったに違いない。冒頭部分を少し読んだだけで、涙が溢れそうになった。そしてすべて読んでみたいと思い、図書館から改めて本を借りてきた。

本書は二部構成になっており、前半は佐藤可士和氏がブランド戦略をどのように考え進めてきたか書かれており、後半は四国タオル工業組合が今治タオル存亡の危機からの復活のためにどのよう取り組んできたか書かれている。

佐藤可士和氏の企画力やブランド戦略がなければなしえなかっただろう。しかし、佐藤氏が使ってみて感動し、衝撃を受けたという今治タオルの品質が高かったことが根本にあってこその復活だと思う。およそ120年の間、タオル作りにこだわり技術の開発と伝達を重ねてきた歴史があってのことだと思う。

佐藤可士和氏が使ってみてプロジェクトを引き受けることを決断した白いタオルは、決して最上級の商品ではなかったとのことである。後半にそのタオルを作った吉井タオルの吉井氏の話がコラムの中で紹介されている。
「産地全体のプロモーションだから、ウチでしかつくれない商品を佐藤さんに使ってもらっても意味がない。今治の平均的なタオル屋が、まじめにつくれば必ずできるレベルの商品を意図的に出したんです」

それに私が感動したのは、四国タオル工業組合の理事の方々の改革への熱意と行動力だ。佐藤氏にプロジェクトへの参加を要請する以前から、色々な取り組みが行われていたし、佐藤氏にプロジェクトのかじ取りを任せてからも、様々は課題に果敢に取り組まれてきたことが第二部に詳しく書かれている。

佐藤氏は、第一部の終わりに「ブランドを『つくる』ことは難しい。しかし、もっと難しいのはつくったブランドを『守っていく』ことだ。」と書いている。また、世界に通用するJAPANブランドに育て上げていくために「これからが本当の”正念場”になる。」と戒めている。今治タオル公式ブランドサイトを見ると、四国タオル工業組合は今治タオル工業組合に改組されたそうだが、本書に記された以降も、ブランドの維持と世界に目を向けた活動は続けられているようである。ますます発展していって欲しいと思う。
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