汗と涙の着物生活 

突如着物に目覚め、ついに着物作成に挑戦。着付けに涙し、とどまらぬ物欲に冷や汗の毎日。

タレント着物と着物間口拡大

2010-05-25 | 考えたこと
※敬称略

ことの発端は、ツイッターの議論だった。「南明奈(アッキーナ)」ブランドの着物が発売されるという。私はそのことに疑問を呈した。その疑問に対し、着物業界のコンサルタンとの方から「間口拡大のために必要」という発言があった。

私は間口拡大になるかも疑問だと思っている。まず、”間口”というのは何の入口をさすのか?着物の世界のことだろう。タレント着物の狙いは、着物の世界に入る敷居を低くし、着物人口を増やすことを期待しているということなのだと思う。想定しているストーリーはこんな感じ?
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葉月ちゃんが着物を切るようになったきっかけは、成人式のとき。成人式には着物を着ようか、それとも着物の代わりに旅行代を出してもらおうか、迷いながら着物のカタログを見ていると、ファンであるアッキーナが着物のブランドをプロデュースしているという。憧れのアッキーナのセンスの着物!自分が着るのはこれしかない。一度しかない成人式。自分の納得できるセンスの着物が着たい。バラにリボンの柄なんて、普通の着物にはないってアッキーナも言っている。柄にはこだわり持ちたいもの。
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まあ、葉月ちゃんは洋服でなく着物を成人式で買ったわけで、確かに、あっきーなブランドのおかげで成人式着物の売り上げはあがったかもしれない。
でも、その後、葉月ちゃんは着物ファンとして継続的に着物の世界を楽しむことになるんだろうか?

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成人式でアッキーナの着物を着たことをきっかけに、アッキーナブランド着物をチェックするようになったけど、また着ようとはあんまり思えない。だって当のアッキーナが着物を着ないのだもの。アッキーナファッションを見習いたい身としては、洋服に比べて高価で着るのに手間がかかる着物は、アッキーナが着てくれたり、なんで着物が素敵なのか言ってくれない限り、着る価値ないしー!
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私が着物を着始め、コーディネートや買い物の参考に(っつか、買い物そのものもだけど)ネットで検索をして驚いたことの一つは、松田聖子が着物ブランドを持っていたこと。ついでにいうと、乙葉や、つるの剛士までブランドがあるじゃないか!

意外に思った理由は、松田聖子自身が着物を着ているというイメージがまったくなかったからだ。いま、ネットで画像検索してみても、一枚トップで出てきただけで、上位にあるのはブランド着物の写真のみだ。彼女自身が着物を着ずして、当然ながら着物の魅力は語れないだろう。松田聖子ブランドだからという理由で着物を買い始めた人は(私の周りにはいないのだけれど)、彼女が着物を着ないのに、その後も着物を買うとは思えない。それよりは、彼女が普段着ている洋服やライフスタイルをまねるだろう。

もっというと、着物を着る時点においては、選択肢として自分がファンであるタレントの着物を選ぶ可能性は高い。しかし、それは着物を選ぶということが前提にあり、着物の顧客というパイを奪い合っているにすぎないのではないか。つまり、タレント自身が着物を通じて自分のライフスタイルを発信し、洋服を着ている自分のファンを着物の世界に引き込まない限り、着物の新し人口は増えないのではないかと思う。

タレント着物を着物ファン拡大のエントリーモデルと位置付けるのであれば、タレント着物で着物を着始めた顧客に対し、継続的に着物を着ることを促す働きかけが求められる。一番きくのは、当のタレントが着物を着、その魅力を語り続けることで、自らが着物のアイコンとなることだと思う。着物というのは、一度着たら着続けるようになるようなものではない。高くて着るのが面倒で…スピードやイージーさが求められる現代において、それほど縁遠いものなのだと思う。ただし、時間がかかっても一度着物の魅力を認識すれば、その手間を克服してくれる顧客も確実に存在しているはずだ。

私がいいたのは、要はタレントブランド着物は、目的と手段を取り違えていないだろうか?という素朴な疑問だ。一時的な売り上げをあげるためなら、着物を着ないタレントを採用した着物ブランドという方法もありうるだろう。ビジネスとしてそれは全く否定しない。しかし、間口拡大と位置づけるなら、タレントの名前に依存するだけのモデルは成立するほど消費者は甘くないのではないだろうか。

余談だが、このツイッター議論の中で、アッキーナブランド着物を批判して「(2009年の)ミス日本の着物姿のように」と表現されている発言があった。えーっと、私自身は、話題になったあの着物姿については、着物ファンとしてはあながち否定的ではないのだ。あのコスチュームの狙いは、ミス日本の魅力、特に脚線美とセクシーさを表現するためだと思うので、方法の一つとしてはありだろうと思う。ただし、ジェンダーの観点からは疑問を感じる。だって股間を強調しすぎて、女性を性の対象のように演出しているとしか思えなかったんだものー。着物風コスチュームだったから、長い袖とのコントラストで、股間が強調されちゃったんだよね…。


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4 コメント

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タレント着物 (神奈川絵美)
2010-05-28 00:22:43
こんにちは! 私、一枚目の写真って着物に見えないんですけど…とても視力が弱いせいかもしれませんが。

タレントプロデュースの着物って、まあ呉服業界の活性化という位置づけなんでしょうか。ファッショナブルなのはいいですが、糸とか布とかの質は…正直、評価できないのではと思います。「制作:大N本印刷」の世界ですよね。
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Unknown (カンナ)
2010-05-28 11:00:33
もぅ…言葉が出ません (-"-)
文化を何と考えているんやろぅ…???
しかも、古典を軽んじる事って許される行為なんやろか???
悲しくなります (@_@。
今、全てにおいて 日本は何処へゆこうとしているのか、
私は不安に思います。
いくら 世代交代とは云え、限度というモノがあります。
何でも エキセントリックであって良いとは限りません。
もっと 文化に誇りを持って欲しいです。
矢っ張り、韓国の様に 軍隊制を取り入れるべきなんでは…と、
究極 考えてしまいます。

『ふざけんなぁ~』 と、シュプレヒコールを叫びたいです。
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着物の良さを伝えてこその間口 (はつき)
2010-05-28 13:00:05
>絵美さん

1枚目の写真、黒地花柄(?)着物に、赤にチェックの袴姿のようです。

タレント着物って活性化になっているのでしょうか?それさえ疑問です。プロデュースしている会社は減収減益だし(^^;)。せつな的な方法に頼ってしまっているのではと疑問を感じるのです。

品質については、流行と価格の安さにひかれて買ってしまう消費者の責任もあるかと思います。このブランドについては、成人式需要も見込んで数十万の価格づけしているので、そうひどくはないと思いますが、染はプリントなんでしょうね。
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伝統を伝えるには (はつき)
2010-05-28 13:05:22
>カンナさん

私は、着物の伝統的姿に固執するつもりはないのですが(^^)、伝統は着物の良さの一つであることは確かだと思います。

こうしたタレント着物も、そのユーザーにどこかで伝統的魅力も伝えるような仕掛けになっていればよいのですが…。ただ最終的にはその魅力を選択するかしないかは消費者の側。選択しなかったとしても着物の他の魅力を見出すということはあるでしょうね。
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