
疾走(下)
重松清
【あらすじ】
誰か一緒に生きてください---。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは故郷を出て、ひとり東京へと向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人---。人とつながりたい・・・。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走り続けた少年の軌跡。比類なき感動のクライマックスが待ち受ける、現代の黙示録、ついに完結!
【個人的感想】
ニュータウン構想による立ち退きでエリは東京へと行ってしまう。残されたシュウジは、兄が犯した犯罪により、クラスでいじめにあい校内で孤立する。兄の精神崩壊、父親の蒸発、母親の借金・・いろいろなものを背負いシュウジは東京へ行くことを決意する。
シュウジが途中で寄ることになる大阪での性的描写、暴力的な描写は鬼気迫るものがあります。それは一行一行読むのが嫌になってくるほどに過酷なものです。気の弱い人はここで断念するかもしれません。よくここまで書けるな・・と一瞬作者のことが嫌いになりかけたけど、それと同時に、リアルにここまで書ききってしまう凄さというものを感じました。
「誰か一緒に生きてください・・」
犯罪を犯し、東京で本当の孤独を味わうシュウジはエリと再会する。エリの暗い過去を知り、「ひとり」と「ひとり」がつながった時、感動のラストが待ち受ける。
最後は涙が止まりませんでした。人間の汚い部分、心に巣食う卑しさ、そして干拓地の一大リゾート計画の希望と頓挫の中で踊らされ翻弄する人々の心理描写、町模様などを余すことなくリアルに書き上げる重松清という作家は本当にすごい人だと思います。是非読んでみてください。
疾走(下)
評価オススメ度 97点