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浅知恵ブログ

浅知恵というホームページでの過去ログと、日々のぼやきなんかを適当にアップしていきたいと思う今日この頃です。

疾走(下)

2007-03-12 | オススメ本の紹介


疾走(下)
重松清


【あらすじ】

誰か一緒に生きてください---。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは故郷を出て、ひとり東京へと向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人---。人とつながりたい・・・。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走り続けた少年の軌跡。比類なき感動のクライマックスが待ち受ける、現代の黙示録、ついに完結!




【個人的感想】

ニュータウン構想による立ち退きでエリは東京へと行ってしまう。残されたシュウジは、兄が犯した犯罪により、クラスでいじめにあい校内で孤立する。兄の精神崩壊、父親の蒸発、母親の借金・・いろいろなものを背負いシュウジは東京へ行くことを決意する。

シュウジが途中で寄ることになる大阪での性的描写、暴力的な描写は鬼気迫るものがあります。それは一行一行読むのが嫌になってくるほどに過酷なものです。気の弱い人はここで断念するかもしれません。よくここまで書けるな・・と一瞬作者のことが嫌いになりかけたけど、それと同時に、リアルにここまで書ききってしまう凄さというものを感じました。

「誰か一緒に生きてください・・」

犯罪を犯し、東京で本当の孤独を味わうシュウジはエリと再会する。エリの暗い過去を知り、「ひとり」と「ひとり」がつながった時、感動のラストが待ち受ける。


最後は涙が止まりませんでした。人間の汚い部分、心に巣食う卑しさ、そして干拓地の一大リゾート計画の希望と頓挫の中で踊らされ翻弄する人々の心理描写、町模様などを余すことなくリアルに書き上げる重松清という作家は本当にすごい人だと思います。是非読んでみてください。


疾走(下)
評価オススメ度 97点

疾走(上)

2007-03-09 | オススメ本の紹介



疾走(上)
重松清



【あらすじ】

広大な干拓地と水平線が広がる町に暮らすシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる・・・。十五歳の少年が背負った苛烈な運命を描いて、各雑誌で絶賛された奇跡の衝撃作。




【個人的感想】

一言でいうと重いです。

でも久しぶりに心に響く一冊に出会いました。ある程度辛いのを覚悟して読まないと心が潰されるので、ウツの人にはあまりオススメできないかもしれません。けれどなるべくなら一度は読んでほしい。

どこにでもあるような平和な家庭が、ある日兄の犯した犯罪がきっかけで壊れていく。主人公シュウジは兄の犯した犯罪により、学校でいじめられ、やがて孤立し、自らが感情を持たない人形になる。教会に自分の居場所を求めたシュウジは、同じく「ひとり」のエリと運命の出会いをする。

ニュータウン構想でにわかに活気付く町と、それに翻弄される人々。そしてどこまでも落ちてゆくシュウジとその家族模様が非常にリアルに描写されていて、筆者のとてつもない筆力を感じました。

主人公シュウジを「おまえ」という人称で呼び展開してゆく物語の進め方と、その理由は最後にわかるという設定は圧巻です。重松清は本当に書き方が上手いなと感じました。


疾走(上)
評価オススメ度 95点