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長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

山本有三「真実一路」

2022-02-18 10:06:00 | 

再読のための覚え書き


真実一路

山本有三(1887-1974 


小学生の義夫は、父の義平と、姉のしず子との三人暮らし。母はずっと昔に亡くなったと聞かされている。


あるとき義夫は、姉が見知らぬ女性を「お母さん」と呼ぶのを聞いてしまう。慌てた姉は弟に、それは聞き間違えだと言うのだが……


作中の人物がそれぞれに人には言えない秘密を抱え、それがゆえに真実一路を生き、その結果、他人との食い違いが生じてしまう。


「そりゃだれだって、うそをついていたくない。ほんとうのことが言えさえすれば、そのほうがどんなにいいか、わかりゃしない。けれども、世のなかでは、うそをついていなくてはならないことがしばしばあるんだ。うそのほうが真実よりももっと真実のことが、しばしばあるんだ」



2022.2.17読了


真実一路

角川文庫

昭和29315日初版発行

昭和43510日改版再販


# #読書 #文学 #文庫 #山本有三 #真実一路






山本有三「女の一生」(下)

2022-02-16 00:49:00 | 

再読のための覚え書き


女の一生(下)

山本有三(1887-1974 


御木允子は私生児を産み、自分の名前から一字取り、充男と名付ける。それは、たとえ戸籍が面が汚れようとも、この子はわたしの子だという強い思いの表れだった。


允子は、自立した生活を求めて医学部に進学。医者として働きながら、子育てを続ける。


やがて、充男が成人する頃には、腐敗した政治に対して共産主義が沸き起こり、若者たちは思想に目覚めていくのだった。


「充男さん、ゆるしてください。あなたのおかあさんががんこなために、あなたは一生、私生児という帽子をかぶらなければなりません。しかし、それが人間のねうちをきめるものだとは、おかあ様は信じておりません。その帽子のまわりにも、いつか花や、キンすじが飾られないと、だれがいえましょう。」



2022.2.14読了


女の一生(下)

新潮文庫

昭和26326日初版発行

昭和4393040


# #読書 #文学 #文庫 #山本有三 #女の一生






山本有三「女の一生」(上)

2022-02-12 09:40:00 | 

再読のための覚え書き


女の一生(上)

山本有三(1887-1974 


御木允子は東京に出て、女学校に進む。


東京で、幼馴染みの江波昌二郎と再会。允子は昌二郎に恋心を抱くが、幼馴染みという関係ゆえか、素直に心を表せない。


しかし、女学校の友人加賀美弓子は、そんな允子の気持ちを知ってか知らずしてか、昌二郎に接近するのであった。


「充子はむっとした。競争しようなんて言い出しておきながら、ふたりだけ駆けないなんて、ずいぶん人をばかにしている。自分は一生懸命に息を切らして駆けたのに、一体、自分はなんのためにこんなに息を切らしたのか。なんに勝つつもりだったのか。」



2022.2.11読了


女の一生(上)

新潮文庫

昭和26310日初版発行

昭和423537


# #読書 #文学 #文庫 #山本有三 #女の一生






山本有三「風」

2022-02-10 11:42:00 | 

再読のための覚え書き


山本有三(1887-1974


深夜の荻窪。酔客を乗せたタクシーは途中でパンクを起こす。運転手がタイヤ交換している間に客は失踪、シートには血痕があった。また、そのすぐ近くの森では、経済学者が何者かに殴殺されていた。


主人公の佐賀もと子は裕福な家の娘だが、左翼運動をする男と駆け落ちをして、生活のために家政婦となる。


ブルジョワジーの雇われ先で、貧しき者として不当な扱いを受ける中、無関係のはずである先の事件の影が、もと子の背後に忍び寄るのだった。


「いや、ぼくを犯罪人と思うなら思ってもいい、しかし犯罪というものは、君らが考えているように、必ずしも悪いものとばかりは限らないのだぞ。犯罪は、たとえば熱のようなものだ。社会がかぜを引いて、熱をだしたようなものだ。社会がかぜをひいているのに、なぜ熱だけ取り締まるのだ。熱を罰するとはこっけい至極じゃないか。」


・・・・・・・・・・・・


ミステリー仕立てで引き込みつつ、山本有三は不当な差別について気炎を吐いている。


朝日新聞に連載時は見過ごされたものの、のちに単行本となる際には、当局をはばかって、一部が伏字となって出版された。その後、敗戦を迎えて規制がなくなり、原文のまま再び出版された。



2022.2.9読了


新潮文庫

昭和27518日初版発行

昭和3382520


# #読書 #文学 #文庫 #山本有三 #






山本有三「生きとし生けるもの」

2022-02-05 09:01:00 | 

再読のための覚え書き


生きとし生けるもの

山本有三(1887-1974


曾根銀行頭取の父を持つ曾根夏樹は、独立のために父から大金を譲り受ける。


薄給の会社員、伊佐早靖一郎は、弟の学費を賄うために、会社からわずかな金を横領してしまう。


生きとし生けるものすべてが太陽を求めるものの、日向で生きる者と日陰で生きる者の人生がある。


・・・・・・・・・・・・


大正15年に朝日新聞に連載中だったものの、執筆中に風邪をこじらせて中断。そのまま未完の作となってしまった小説。


さてこれからどうなる?っていうところで終わってしまっているものの、未完のままでも十分におもしろい。



2022.2.4読了


生きとし生けるもの

角川文庫

昭和36930日初版発行

昭和3933042

旧字体新仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #山本有三 #生きとし生けるもの