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長島 潤 Sing a mindscape

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伊藤整「伊藤整詩集」

2021-10-28 10:31:00 | 

再読のための覚え書き


伊藤整詩集

伊藤整(1905-1969


伊藤整の小説は、会話の端々に論理的哲学的な硬質さを感じるが、詩は、なんと若さの素朴な抒情に満ちていることか。


《良い朝》

今朝ぼくは快い眠りからの目覚めに

雨あがりの野道を歩いて来て

なぜかその透きとほる緑に触れ、

その匂に胸ふくらまし

目にいっぱい涙をためて

いろんな人たちの事を思った。

私の知って来た数かずの姿

記憶の表にふれたすべての心を

ひとつひとつ祝福したい微笑みで思ひ浮べ

人ほど良いものは無いのだと思ひ

やっぱり此の世は良い所だと思って

すももの匂に

風邪気味の鼻をつまらし

この緑ののびる朝の目覚めの善良さを

いつまでも無くすまいと考へてゐた。


2021.10.27読了



伊藤整詩集

新潮文庫

昭和33110日初版発行

昭和4521012


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