Der König Hat Eselsohren

画家たちの二十歳の原点@下関市立美術館



まだ平塚でやっていたときに、どこだったかのレビューで絶賛されているのを見て、これは下関に来たらぜひ行かなければ!と思っていた。
平塚に行きゃいいのに…(笑)

切り口がすでに面白いです。
1866年生まれの黒田清輝から、1973年生まれの石田徹也まで、日本画壇の主立った人たちの二十歳前後の作品を並べる、って。
もちろんすべての画家を並べるわけにはいかないので、主に油彩画という枠をはめてはいるんですが。

で、どうせならギャラリートークのある日に行こう、と思ったら、今日か来週の土曜日しか行けないので、安全策を採って今日に。
面白い展覧会でありながら、そんなに混んでないぜ!!と思ったら、ギャラリートークの時間になったら、結構な人が集まってる…(笑)

ギャラリートークは一応1時間なので、そんなに一枚一枚細かく解説できるわけではなく。
でもおかげで、ざっくりと、それぞれの展示室の内容を把握できた。

まず最初の展示室では、黒田清輝とその弟子=東京美術学校(現・芸大)の生徒たちと、そうではない安井曾太郎・梅原龍三郎との画風の違い。
夭逝した青木繁なんかはともかく、熊谷守一は、晩年の猫なんかとはまるで違うので面白い。
安井曾太郎も同じく。
その後がわかることで尚更興味深い。

そして、その後、第2室に掛けて、岸田劉生に始まる大正時代の画家。
特に、もうタイトルからして、さらには入り口の看板↑からもわかるけれど、この辺を念頭に置いているだろう、という村山槐多と関根正二。
実物を見るのは初めてだけれど、確かにとてつもないエネルギーが迸っている。
でもこの場に並んでいることで、もっと長生きしたら、どんな絵を描いただろう?と想像せざるを得ない。
時代を先駆けただろうか?それとも自分流に固執しただろうか?

さらに大正後期、昭和初期には、学芸員さんの指摘するように、随分と画風が変化して、もっと社会全般を映し出すようになっている。
あと、実はここに来て初めて、女性画家(三岸節子)が取り上げられている。

そして戦争の時代へ。松本竣介や桂ゆきなど。
ルオーの影響など、言われてみれば、確かにそうだ。
言われなきゃ気づかないあたりが、やはりシロウトです…f(^_^;


場所は1階の展示室へ移って、昭和以降に生まれた画家=戦後に活躍している人たちの作品へ。

草間彌生は、確かに今とはちょっと違うけれど、それでも今に繋がる作品だなぁ、と実感する。
それに対して、池田満寿夫は、あまりにもその後の作品とは印象が違うので、これ誰?!な感じ(笑)
横尾忠則も、10代の頃はかなり普通だよ!

そして最後の部屋。

何より驚くのは、森村泰昌も、学生時代は普通の油絵を描いていたということだ(笑)
あまりの違いにびっくり。

そしてさらにびっくりしたのは、石田徹也。

おそらく今回の展覧会で、村山槐多や関根正二に相対する存在として、石田が挙げられたような気がする。
代表作と言ってもいい、「飛べなくなった人」と「燃料補給のような食事」、それから「ビアガーデン発」が出ていたけれど、前二者は、こんなに大きな作品だったんだ!!Σ( ̄□ ̄;)と驚く。

画集やテレビじゃわからないもんだなぁ…。
一度、画集を買おうかと逡巡したけれど、これを買って家で一人で見ていたら、世間に絶望して自殺してしまいそうだ、と思ってやめたのだが(笑)
実物を見ると、この頃の作品はまだユーモアが感じられる。
でも印刷物で見たら、それが薄まってしまうような気がする。
やはり本物を見なければわからないことって多い。


最後の最後、会田誠と山口晃。

学芸員さん曰く、この二人はエリートだと(笑)
ま、確かにそうなんだけどね。
しかも芸大を作った黒田清輝に始まって、芸大出身の二人で終わるって、嫌なオチだとも…f(^_^;

でも、面白いのは、100年前、黒田清輝がそれまでの洋画よりもさらに西洋的なものを日本に持ち込もうとしていたのに対し、100年後の二人は強く日本を意識した作品から出発しているということだ。
しかもそれは、同世代で、デザインなどの別畑から出発している石田徹也や野村昭嘉とも、問題意識や視点がまるで違っている。

偶然なのか、意識的にそうしているのか知らないが、第1室と最後とがちょうど対になっているようで、実に面白かった。


図録も、値段はちょっと張るけれど、図録として以上に、本として良くできているので、お勧めです。
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