Der König Hat Eselsohren

『それでもボクはやってない』




前から観ようと思ってたんですが、「今日レディースデーじゃん!」と急に思い立って観にきました。
上映時間2時間半という時点で、監督の本気度合いは明らかですが、うん、これはハリウッドでのリメイクはムリだなっ!

「刑事裁判の有罪率99.9%」という前提あってこその映画だってば。

で、続きを書きたいところですが、明日、早いのでまた後日。
早く帰らなきゃ!

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ということで追記です。

見てからしばらく間が空いたので、そうそう熱く語るという雰囲気でもありませんが、周防監督の作品の中ではコレが一番面白いんじゃないかと。
いや、「面白い」というと多少語弊があるかな?
コレまでのような、ハッピーエンドのコメディーじゃないわけだし。
ところどころ笑いどころはあっても(それ自体意図的かどうかも微妙)、基本的には2時間半ずっと息を詰めて見ちゃう映画だし。
でも傑作だと思うわけですよ。

その理由に関してはネタバレが入るので折り畳み。


映画の公開に当たって、監督がさんざんメディアに登場して説明しまくったので、この映画の元になった事件が「一審有罪、控訴審無罪」というモノだったことは周知の事実だと思うんですが、てっきりその無罪を勝ち取るまでを映画化したんだと思っていた私にとっては、一審判決でラストという終わり方に「やられた!」と。

内容から考えれば、あれだけ必死に頑張って、頼みの綱の目撃者まで現れたのに無罪を勝ち取れない、という実に悲劇的な映画で、ある意味救いがない。
まぁ、パンフレットの解説にも色々書いてはあったけど、監督が描きたかったのはあくまでも裁判に対する疑問ということだから、それを前面に押し出すためには確かにここで終わるのが一番良いんだろうな。
そうじゃなく、無罪を勝ち取るまでを描いてしまうと、被告人側の人間ドラマになっちゃうだろうし、あるいは弁護士ヒーロー物になりかねないし。
どっちにしても、どこかで見たことのあるような映画に成り下がってしまう。
そういう点で、物凄く監督の意図がわかりやすい作りになっているのは確かだと思う。

でも、一番「やられた!」と思ったのは…。

あの、「控訴します!」というセリフで終わることで、完全な不条理劇として完結してしまったこと。
しかもセリフ自体の言い方が、主人公の強い意志は感じさせつつも、変に悲壮感や激しい憤りといったニュアンスを滲ませないものだったことで、映画のエンターテイメント性を確保してしまったこと。

確かに、誰かの悪意で陥れられたわけでもないのに、無実の人が有罪になってしまうということが最初から「不条理」なんだけど、それが「不条理劇」として切り取られてしまっていることで、登場人物に感情移入しなくても楽しめるものになっているのがスゴイ。
その点も監督としては、感情移入して貰うことを最初から意図していないんだろうけれど、例えば、登場人物のそれぞれを自分の身に置き換えたり、ということを全くしなくても、みんながみんな自分なりに真っ正直に頑張っているのに、なぜだか結末がおかしなことに…って、滑稽極まりないじゃないか(笑)
しかも作り物の不条理劇にありがちなのと違って、設定自体が実に日常的でわかりやすいだけに、スッと入っていきやすくて、しかもコレは現実、ということにゾッとするという…。

こういう映画って、絶対にハリウッドでは作れないよな(笑)
だからってヨーロッパだったら、もっと妙に人生哲学の入った難解なモノになりそうだし(ーー;;
アジア…っつっても、香港や韓国でも無理そう。インドも(笑)
敢えて言うならイラン映画に近い雰囲気なんだろうか?f(^ー^;

ともあれ、社会問題を告発しているはずの映画なのに、いわゆる告発調じゃない、という実に稀な映画だと思います。

あ~、あと、もっと個人的に。

ラストの判決文、あれはきっと本当の判決文を多少アレンジしただけのモノなんだろうけれど、「あ~あ~、あるあるあるあるf(^ー^;」といった感じで、まさに苦笑い。

それと、いわゆる傍聴マニアに対しても多少批判的な目を向けているのも、見ていてちょっとスカッとしましたな(笑)
もちろん、裁判公開の原則は絶対に必要なことだし、裁判を聴きに行くこと自体は良いことだと思うんだけど、マニアって何なんだよ?と。
ただの野次馬根性の固まりじゃねぇの?
しばらく前にTVで、仕事を辞めて貯金取り崩しながら裁判傍聴に通ってる人(別に事件の関係者ではない)なんてのが出てたけど、そんな人としてバランス欠いたヤツなんかにネットで裁判語られても、ねぇ。

でも世の中の大半の人は、傍聴に行きたくっても、その時間働いてますから。
裁判員制度の前に、そこんとこ、もうちょっと何とかなった方が良いと思うんだが。
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