ブログ“愛里跨の部屋(ありかのへや)”

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愛里跨の恋愛スイッチ小説 (蒼ちゃん編 38)

2011-10-13 17:07:40 | Weblog
38、岐路に立たされた二人



昼休み、私は奏士くんに電話をした。
でも受講中だったのか、
それとも着信に気づいてないのか電話は繋がらない。
私は今日の約束の返事を書いてメールした。
そして、満智子といつもの公園でランチしたの。

今後は親友の満智子ともこうやって、
お弁当を食べながら馬鹿話や、
恋話ガールズトークをすることも出来なくなる。
満智子が幸せそうに香和さんの話をする姿を見ていると、
何だか急に寂しさが込み上げてきた…



(ほのぼの公園)
満智子「東さんとドイツかぁ」
蒼  「うん。私ドイツ語喋れないし、心細いと言うか。
    英語なら少しだけ話せるんだけど、全く海外経験ないから」
満智子「それは東さんが補ってくれるわよ。
    仕事で行くなら多分、現地スタッフが居るんじゃないの?
    ヨーロッパに住んでたことのある人なんだから、
    支社みたいなのがあるとかさ。日本人も居るわよ、きっと」
蒼  「うん…でもそんなことより何より、
    私が一番心配なのは奏士のことなんだ。
    東さんに対して対抗意識むき出しで、
    こないだも私の知らないところで会ってたし」
満智子「えっ!そうなの?」
蒼  「うん。私の気持ちは奏士に伝えたから、
    信じてくれてると思うんだけど、
    ドイツに行くとなるとどうなんだろう…」
満智子「そっかぁ。だけどさ、これまでの経緯聞くと、
    蒼にとっては彼を取るか仕事を取るか、急遽の選択だからね」
蒼  「うん…。契約のこと、奏士に話したらどう言われるかな。
    『ドイツに行くなら東光世と行くなら終わりにしよう』って、
    言われたしな…もしかしたら私、振られちゃうかも…」
満智子「蒼!何言ってるの?二人は愛し合ってるんでしょ?」
蒼  「うん…でも奏士が素直に納得してくれるか心配でさ」
満智子「ピカソくんだって蒼を愛してるんだし、
    学園祭の時だって、必死で蒼を捜した情熱の持ち主でしょ?」
蒼  「うん。まぁ…」
満智子「だったら大丈夫よ!
    お互い半年だけ我慢すれば逢えるんだから。
    今はインターネットあるから、顔見ながら話もできるし。
    寂しい時はテレフォンSE○でも」
蒼  「おーい!(焦り)」
満智子「とにかく方法は色々あるわ」
蒼  「うん(汗)そうだけど、
    なんだか…後1ヶ月しかないと思うとね」
満智子「蒼!距離が何よ。障害が何よ。恋敵がなんだっつーの!
    日本とドイツの距離なんて、
    東京と沖縄くらいなもんよρ(..、)ヾ(^-^)」
蒼  「え?(・_・)...いや。その6倍の距離だから」
満智子「でも…はぁ(溜め息)ドイツかぁ…。
    蒼、本当に行っちゃうんだぁ。無茶寂しいじゃん(泣)」
蒼  「(゜∀゜;)…ま、満智子?まさか泣いてる?」
満智子「だってさぁ…(泣)」
蒼  「あの、私はすぐ帰ってくるんだから。ねっ!」
満智子「蒼ー。なんで…
    なんで私を置いて行っちゃうのよぉ(ノ△T)ビェーン」」
蒼  「あらぁ…さっきと言ってること反対じゃん(^。^;)」

満智子はわんわん泣きで、私にしがみついて泣いてた。
満智子…本当は私も思いっきり大声で泣きたいんだよ…




(スター・メソド事務所)

神道社長と東さんは向かい合わせにソファーに座り話していた。
神道「お前、まだそんなこと言ってるのか。
   もう契約成立したんだよ」

東さんは神道社長に掛け合って、
別のモデルを立てて契約を変更しようとしていたのだ。
それは…私の今までの生活を取り戻す為に。

東 「僕が『ツイン・ビクトリア』の撮影の後、
   写真を見ながらお前に言ったこと覚えてるか」
神道「ん?何だったかな」
東 「蒼さんは、一色くんがいなくなったから輝きを失う。
   あの輝きを出せるのは彼が居るときだけだ。
   このままドイツに連れて行っても、
   良い作品はできないかもしれない」
神道「おいおい、プロのお前が何アマチュアなこと言ってるんだ。
   はぁー(溜め息)情けないな。
   写真界のプリンスも、とうとう恋の毒気に才能まで犯されたか」
東 「生…。お前、本気で一色くんのこと許してやるのか」
神道「ああ。そのつもりだよ。
   スキャンダルだけ起こさなければね。
   光世。お前もおめでたい奴だな。
   一色くんはお前の恋敵だろ?
   善人ぶって今度は二人のキューピット役か。
   そんなにあの子を守りたいなら、
   一色くんをスタッフとしてドイツに連れて行ったらどうだ。
   彼にドイツやフランスで、
   本場の美術を学ばせることもできるぞ。
   それならどちらにも支障はないはずだ」
東 「そんなことが簡単にできるわけないだろ。
   生、こないだ僕に言ってたことと話が違うぞ」

神道社長は急に立ち上がり、
デスクの引き出しからA4の茶封筒を取り出した。
神道「ああ、そうだな。気が変わったんだ」
東 「気が変わった?何故だ」
神道「調べたんだよ。一色奏士という男がどんな人物か」
東 「え?…」
神道「昨日、蒼さんの家に行く前に、
   浅草にいる俺の知り合いに会ってきたんだ。
   池袋の事があって、蒼さんがモデルをOKした後、
   彼の素性調査を依頼してた」
東 「お前…」
神道「それがだ。調査報告書を見て驚いたよ。
   芸術の好きな、ただの美大生だとばかり思っていたが、
   まさか、とんでもない大物だったとはね(封筒を差し出す)」
東 「え?…どういうことだ。…なんだ、これ」
神道「報告書だ。まぁ、袋から書類出して読んでみろ」
東 「……(神道から袋を受け取り、書類を出して見る)
   …えっ!?…」

東さんはただ黙って報告書全部に目を通していた。
神道「なっ、びっくりだろ(笑)」
東 「お前…それで何も言わずに許したのか」
神道「ああ。彼女は事実を知ってて付き合ってるんだろうか。
   ふっ(笑)いや、多分知らないだろうな。
   一色奏士本人が言わないだろうから」
東 「お前…いつからそんな胴欲で寂しい人間になったんだ。
   僕が知ってる生は、自分の至福の為に、
   人を利用するような奴じゃなかったはずだぞ」
神道「光世、それは違うよ。俺の至福じゃない。
   お前や社員全員の至福だよ。それでお前に報酬を出してる。
   これからはお前の好きな女にも与えられる報酬だよ」
東 「……」
神道「お前は昔から理想主義だからな。
   だが、今回は綺麗事じゃすまされない。
   これは事実だし、俺達にとっては願ってもないことだ。
   もしまだこの報告書を疑うなら、
   今から上野にあるKATARAIと言う店に行って見てこい。
   彼の絵が幾つか展示してあるらしい。
   KATARAIの店長は及川頼。
   彼の美大の先輩で一番信頼している人物だ。
   その店長もお前と同じで事故で彼女を亡くしてるそうだが。
   行って店長にいろいろ聞いてくれば、全て嘘じゃないと分かるさ。
   以前の賢いお前に戻れば、今の俺の意図も分かるよ」
東 「生…」
神道「光世、変わったのは俺じゃない。お前だよ。
   お前こそいい加減目を覚まして、いつもの東光世に戻ってくれよ」
東さんは報告書を握りしめて、悲しそうな顔で神道社長をみていた。



夕日が街全体を赤く染め始めたころ、
仕事を終えた私は会社の応接室にいた。
そして、目の前にいる高中チーフと木元部長の前で辞表を提出した。
高中チーフは残念そうに私を見ている。

高中「やっぱり辞めちゃうのね」
蒼 「はい…急な話ですみません」
木元「金賀屋くん。実は社長からさっき連絡があってね。
   『スター・メソド』の社長から連絡が入ったことを聞いた」
蒼 「え?」
木元「君を今週末で解職してほしいと先方は言ってるらしいが、
   本人から届け出があったかと聞かれてね」
蒼 「はい…」
木元「こちらは君から届け出がないのに、
   勝手に会社を辞めさせる訳にはいかないからな。
   それに、うちにとっても君は貴重な人材なんだから」
蒼 「はい…」
木元「だが、届け出があったら仕方がない。辞表は受理する。
   後日社長から話があるから、詳しいことはまた連絡する」
蒼 「はい、分かりました」
高中「でも、まだうちの社員なんだから、いる間は仕事頼むわね」
蒼 「はい、分かりました。宜しくお願いします(深々と頭を下げる)」
私は二人に挨拶をして応接室を出るとバックを持ち、
タイムカードを押し会社を出た。
そして、東さんとの待ち合わせの場所上野駅に向かった。



(絵画ダイニング、KATARAI)
その頃東さんはKATARAIの店内にいた。
壁に掛けられた奏士くんの絵を、
一枚一枚感慨深げにじっと見つめて…
そして『Gaze at the sea』の前で立ち止まった。
東 「これ…写真じゃないよな…蒼さんの絵…」


その様子を見ていた頼さんが東さんに話しかけた。
頼 「お客さん。その絵凄くいいでしょう」
東 「ええ。まるで写真みたいだ」
頼 「これはエアブラシ使ったり、
   写真をスライドさせてトレースしたんじゃないんです。
   この絵は彼の心の中に居る彼女を思い浮かべながら、
   筆だけで描いてるんです」
東 「え!?…凄いですね。それでこの値段は安すぎませんか」
頼 「はい。実はその絵は昨日、
   その5倍の値段で買い手が決まったんですよ」
東 「え…そうですか」
頼 「お客さんは先程からその画家の絵ばかり見てましたけど」
東 「ああ、作者は一色奏士って書いてありますが…もしかして、
   一色昌道(しょうどう)氏と関連がありますか?」
頼 「えっ…。お客さん。それを知ってるって…」
東 「ああ。僕はつい最近までフランスに居て、
   美術関連の仕事をしていたんですよ。
   美術評論家としては、パリでも一色昌道は有名ですからね」
頼 「そうでしたか。美術関連のお仕事を。
   奏士は、一色昌道の息子です。
   彼はまだ美大に通ってる学生なんですが、
   この絵を画商から気に入られて、
   来月青山で個展開く予定なんですよ」
東 「そうなんですか…『蛙の子は蛙』…なんですかね」
頼 「いや、奏士自身にそれはありません。
   ただ絵が好きだから学んで描いてる。
   ある意味、親の様になりたくないんじゃないでしょうか」
東 「え?それはまたどうして。
   わざわざ苦労しなくても有名になれる道があるのに」
頼 「多分、彼の生い立ちでしょうね。
   幼少から高校まで寂しい学生時代を過ごしてますから」
東 「そうでしたか。
   いや、私のように自分で道を切り開いてきた人間からすれば、
   青い芝生が羨ましくて有りがたいことだと思うんですが、
   芝生の中にいる人間はそんなものなのでしょうか」
頼 「そんなものですよ(笑)お客さん、奏士の絵が気に入られたなら、
   個展は12月11日から25日の二週間、
   青山の『カンヴァス』という画廊でありますから、
   一度行かれてみてはどうですか」
東 「11日…ああ、そうだね。是非いってみよう。
   では、僕はそろそろ。お勘定をお願いします」
頼 「はい。700円です」
東 「(お金を渡す)お釣りはいいです。
   今日はいい話を聞かせてもらった。ありがとう」
頼 「いえ、こちらこそありがとうございます。また来て下さい」
東 「はい。また伺います」
東さんは頼さんに笑顔でそう言って、
奏士くんの絵を見ながら店を出ていった。


KATARAIを出てすぐ、東さんは奏士くんとすれ違った。
二人は立ち止まり、ふり返りお互いの顔をみたのだ。
東 「一色くん」
奏士「東…さん。あの、KATARAIに何をしに?」
東 「コーヒーを飲んだだけだよ。じゃ、またな」
奏士「……」
東さんは奏士くんに手を挙げて、私との待ち合わせ場所に向かった。

♪~♪~♪~♪~♪

(奏士の携帯着信音)
奏士「はい、蒼?」
蒼 『奏士、お疲れ様。昨夜は電話出れなくてごめんね。
   仕事の件でちょっとあったから』
奏士「そうだったの。
   いいよ。こっちこそ、昼間電話取れなくてごめんね」
蒼 『ううん、いいの。今日の約束だけどどうしょう』
奏士「ああ。僕は今から10時までファミリアのバイトあるから、
   それから頼先輩んとこで逢おう。いい?」
蒼 『うん。分かった。
   私も今から仕事のことで、
   話し合いしなきゃいけないから丁度良かったわ』
奏士「そっか。じゃあ、後でね。蒼に逢えるの楽しみにしてるよ」
蒼 『うん(笑)私もよ。奏士もお仕事頑張ってね』
奏士「うん(笑)ありがとう(電話を切る)
   アイツ…KATARAIに何しにきたんだ」
奏士くんは携帯をポケットに入れると、頼さんのお店に入っていった。


その頃、私は京生上野駅前に着いて東さんを待っていた。
その数分後、東さんの車がやってきた。
東 「(窓を開けて)蒼さん、待たせてごめんね」
蒼 「いえ、大丈夫です(助手席に乗り込む)」
私が車に乗ると、東さんは車を走らせた。
そして私達は、神楽坂にある東さんのスタジオに向かった。
この時はまだ、奏士くんも私も、
大きな分かれ道の真ん中に立たされているとは気づかなかった。
(続く)


この物語はフィクションです。
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