ブログ“愛里跨の部屋(ありかのへや)”

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愛里跨の恋愛スイッチ小説(華ちゃん編 20)

2010-10-08 10:06:26 | Weblog
20、青天の霹靂


私は駅から1時間弱、東京の景色を見ながらバスに揺られて、
羽田空港国内線、第1ターミナルに着いた。
そして搭乗手続きを済ませ、セキュリティーチェックを終えると、
航平が予約してくれてた、12時40分発のSKY013便に乗り込んだ。

航平も昨日、この時間に飛行機に乗って長崎に帰ったのね。
私はドキドキしてるけど(笑)
航平なら出張とかで飛行機の移動なんて慣れてるだろうな。

私は窓際の席に座るとすぐ航平にメールした。
華メール『航平、今飛行機に乗ったよ。
     福岡に着くのは14時30分の予定だから、
     空港に着いたら電話するね』
飛行機は定刻通りに飛び立ち、羽田空港を後にした。


(飛行機の中)
窓の向こう側には、綿菓子みたいな雲がいっぱい広がってて。
美味しそう(笑)

コンビニで買ったファッション誌を見ようと開いた時、
私の横に座ってた、70代くらいの女性が私に話しかけてきた。
女性「あの、お嬢さん。貴女も福岡に帰るの?」
華 「いえ、私は東京に住んでいて、
   今から長崎に居る彼に会いに行くんです」
女性「あらぁ、それは遠いわね。遠距離恋愛なの?」
華 「彼は長崎出身ですけど東京に住んでるんです。
   今は彼のお父さんがご病気で、実家に帰って看病しているので、
   私も少しだけお手伝いに行くところなんです」
女性「お父様がご病気じゃ心配ね。彼も心細いでしょうに。
   あっ、馴れ馴れしく話してごめんなさい(笑)
   私、結城敏子って言うの。
   失礼だけど、貴女お名前は何ておっしゃるの?」
華 「私は海崎華と申します」
結城「華さん、いいお名前ね。2時間お隣同士宜しくね」
華 「こちらこそ、宜しくお願いします」
結城「私も主人も長崎出身で、私は平戸で主人は諫早なの。
   でも、貴女若いのに彼のお父さんの看病なんて感心ね。
   貴女のような人が彼女だと、彼も心強いでしょうね」
華 「そうでしょうか(笑)
   あの、福岡に帰られるって東京にはご旅行だったんですか?」
結城「横浜に次男夫婦が住んでてね。
   孫が生まれたから顔を見に行ってたの」
華 「それはおめでとうございます。お孫さん、男の子ですか?」
結城「ええ。息子の栄次にそっくり。
   嫁はまだ居て下さいねって言ってくれたけど、
   主人の弟が入院したから、ゆっくりもしてられなくて。
   それに横浜のマンション暮らしはなんだか居心地が悪くって。
   やっぱり福岡の我が家がいいわ」
華 「そうなんですね。
   あの、結城さんがお住まいの福岡の街はどんな所なんですか?」
結城「そうねぇ。若い人が興味あるなら……」
私は結城さんとおしゃべりしながら1時間と50分、雲の上を飛んでいた。
そして14時30分、私達を乗せた飛行機は、無事福岡空港に着いた。


(福岡空港ロビー)
華 「結城さん、ありがとうございました。
   たくさん教えて頂いて良かったです」
結城「こちらこそ、年寄りの相手をありがとう。
   華さん、どうやって長崎まで行くつもり?」
華 「博多駅から特急に乗って佐世保に行こうと思ってるんです」
結城「あらぁ、それなら福岡空港の国際線ターミナルから、
   高速バスに乗って行った方がいいわ。
   バスは1時間おきに1本出てるはずだし、
   料金は確か片道2千円ちょっとだったかしらねぇ。
   2時間くらいで佐世保に着くわよ。
   バスは佐世保駅のすぐそばに止まるから、
   あちこち移動するより楽よ」
華 「結城さん、ご親切にありがとうございます!
   私、こちらの地理が全く分からないので、内心不安だったんです」
結城「それならターミナルまで連れて行ってあげるわ。
   私の主人が空港の玄関まで迎えに来てるから」
華 「いいんですか?本当に助かります!」

私は結城さんご夫婦の車に乗って、
国際線ターミナルまで連れて行って貰い、
ご主人が長崎の地図をくれた。
そしてもしもの時にと、素性のよく知らない私に、
住所と連絡先まで教えてくれたのだ。
結城さんの優しい心使いは涙が出るほど有り難く、
知らない土地の温かな出会いに私のハートはじーんときた。
何て素敵なご夫婦なんだろう。
私も航平とこんな夫婦になれたらいいな…
結城「華さん、佐世保まで気をつけて行くのよ。
   彼のお父様のご病気、早く治るようにお祈りしてるわね。
   福岡に来たら、彼とうちに遊びにいらっしゃい」
華 「はい!その時は是非伺います。
   結城さん、ご主人ありがとうございました!」
私は深々と頭を下げて、結城さんご夫婦を見送った。


(福岡空港、国際線ターミナル)
私は航平に電話した。
航平『そっか。華、優しい人と隣同士で良かったね」
華 「うん。本当に優しい方で親切にして下さって助かったわ。
   とっても仲良しの素敵なご夫婦だったのよ」
航平『そっか。そうだよなぁ、高速バスという方法もあったな。
   本当はね、長崎空港着でチケットを予約しようと思ってたんだけど、
   お袋から頼まれてたことがあって、
   昨夜までは福岡に居る叔母を迎えに行く予定だったから、
   福岡空港待ち合わせにして、華を迎えに行こうと思ってんだよ。
   乗り継ぎのことも気になってたから』
華 「そうだったのね。あっ、もしかして私、
    至らないことしちゃったかな(汗)」
航平『ううん、大丈夫だよ(笑)
   今朝、叔母さんから仕事の都合で今日は来れないって連絡あって、
   明日伯父さんと一緒に来ることになったから、
   華は全然気にしなくていいよ』
華 「そう。だったら良かった。
   航平、私15時22分のバスに乗るから、
   佐世保には17時4分に着くよ。着いたらまた電話するからね」
航平『分かった。親父は容態も落ち着いてるし、
   バスセンターなら駅前にあるから、僕が迎えに行くよ』
華 「うん、じゃあ、甘えてお願いします(笑)航平、後でね」
航平『うん。後で』(携帯を切る)


私は高速バスに乗り、佐世保に向かった。
朝9時前に家を出てから、およそ8時間の旅はもうすぐ終わる。
バスの中、緑流れる景色と西に傾く夕陽に見送られながら、
もうすぐ航平に会える嬉しさで私の胸はいっぱいだった。


17時4分、バスは時間通り、無事に佐世保バスセンターに到着した。
バスを降りて携帯を取り出すとすぐ、
私の姿を見ていたかのように航平から電話が入った。

華 「もしもし、航平?」
航平『華!駅の方を見て、僕が分かる?
   駅南口の交差点に立ってるんだけど。
   ワインカラーのシャツ着てる』
華 「ん?(航平を探す)分かった!航平!着いたよ」(携帯を切る)
信号が変わると、私は航平に駆け寄り飛びついた。
航平「遠いのによく来たね。長旅お疲れ様」
華 「航平、お待たせ!1日しか立ってないのに、
   凄く久しぶりに航平に会ったみたいで嬉しい!(笑)」
航平「僕も寂しかったから嬉しいよ。
   華、本当に来てくれてありがとう」
航平は、たくさんの人が行き交う中でハグしてくれた。
航平「親父や兄貴達が待ってる。行こう」
華 「うん」
私達は、お父さんが待っている病院へ向かった。



(南3病棟、302号室)
航平はドアを開けて、私達は病室に入った。

航平 「母さん、華が来てくれたよ」
華  「お母様、お久しぶりです」
航平母「華さん、心配かけたね。遠いのによく来てくれたわ。
    お父さんが無理言って、仕事まで休ませてごめんなさいね」
華  「いえ、私もお父様にお会いしたかったので良かったです。
    その後、お父様の容態はどうですか?」
航平母「昨日は大変だったけど、今日は朝から調子がよかよ。
    華さんが来てくれたから喜んでるわ」
航平 「父さん、華が来たよ。華、こっちにおいで」
華  「うん。お父様、華です。御加減どうですか?」
航平父「華さん、どこ行っとったと…
    心配したやろが…。うちに帰ってこんと…航平が心配する…」
航平 「華。親父は鎮痛剤のせいで意識が朦朧としてるから、
    時々辻褄合わないこと言うけど、気にしないで」
華  「そうなの。お父様、私帰ってきましたからもう安心して下さいね。
    ずっとお父様や航平さん達のそばに居ますから、
    早く元気になって、一緒にお魚食べに行きましょうね」
航平父「魚…良か店がある…あぁ、華さんとデートしようかな…」
華  「はい。デートしましょう(笑)」
私は涙をこらえて、めいいっぱいの笑顔で航平のお父さんと話した。
航平とお母さんは、私とお父さんのやり取りを聞きながら、
後ろを向いて声を殺し泣いていた。

ガラッ!(ドアが開く音)
功太 「お袋、連絡とれたで。
    (母の耳元で)
    誠一郎伯父ちゃんは明後日、
    圭二叔父ちゃんと初江叔母ちゃんが今日来る」
航平母「功太、ありがとう」
功太 「華ちゃん!待ってたで。来てくれてありがとうな。
    遠いところ大変やったろ。
    航平、華ちゃんに何か飲み物持ってきたり」
航平 「ああ(涙を拭う)そうだね。華、何か飲みたいものある?」
華  「ううん、バスの中でお茶飲んだから大丈夫よ。ありがとう」
航平 「そっか」
功太 「親父、愛しの華ちゃんが来てくれて良かったな」
私達が話しをしていると、お父さんの顔からたくさんの笑顔が出て、
航平やお母さん、功太お兄さんも、
少しづつ笑顔になっていくのを見て私はホッとした。
そのうち、洋一お兄さんが仕事を終えて来て、余計に話しは盛り上がり、
病室は笑顔いっぱいに包まれたのだった。
良かった…みんなが笑顔になって。
夜遅く、私達は航平が予約したホテルに向かい体を休めた。



そして翌日夕方、功太お兄さんと航平と病院に行ったのだけど…
でもそこで、私は強敵陽子さんの激しい応酬に見回れることになる。

(南3病棟、廊下)
私達3人はお父さんの病室に向かってた。
功太「航平、ちょっと」
航平「うん。華、先に親父のところに行ってて」
華 「うん」(病室に入る)

功太「航平。今、ナースステーションの看護士に聞いたら、
   あの子夜勤明けで、昨日8時頃に帰ったらしい。
   今日は出勤やないみたいやで」
航平「本当に?それなら良かった」
功太「まぁ、俺らがあの子の存在にビクつくのも可笑しな話やで」
航平「そうだね。勤め先でバカなことはしないだろうから」
功太「そやな、行こうか」
航平「うん」

私達が病室に行くとお父さんは眠っていた。
顔色も良さそうだったから安心。
そして、洋一お兄さんからお父さんの兄弟が会いに来て、
お母さんと自宅にいること、今朝検査と診察があって、
担当医から検査結果と病状説明があったことを聞いた。
お父さんは小康状態にはなったけど、
何時吐血して容態が変わるか、分からないということだった。

19時過ぎ、洋一お兄さんを玄関で見送った後、私達はコンビニに行った。
功太お兄さんはまだ買い物していたけど、
お兄さんを待たずに航平と私は、
ドリンクとお弁当を買って先に病院に戻った。


(S総合病院、待合室)
華 「航平。私、お店から着信が入ってたから電話してから上がるね」
航平「うん。分かった」
航平は私に微笑んで、買い物袋を持ってエレベーターに乗った。
私が玄関に向かおうとした時、後ろから少し低い女性の声がして肩を叩いた。

女性「貴女が航平ちゃんに付きまとってる浮気女?」
振り返ると、スーツ姿の女性が一人立ってた。
この人…誰?
華 「はい?浮気…え?」
陽子「貴女が航平ちゃんの浮気女かって聞いてるの!」
華 「あの私、何のことか分からないんですけど…。あの貴女は…」
陽子「私は航平ちゃんの婚約者。
   やだな。航平ちゃんったら、まだ話してないのね。
   昨日の夜は病室で、私を優しく抱きしめてキスしてくれた。
   ベッドでも何度も私を愛してるって。
   航平ちゃんは激しい人だからね、何度も私を抱いてね。
   貴女を呼んだのは別れ話する為だって言ったのに」
華 「えっ、え!?…まさか…」
陽子「本当に察しの悪い女ね。航平ちゃんが話してないなら私が言うわ。
   お願いだから、今すぐ航平ちゃんと別れてくれる?」
華 「別れる…」
陽子「だから!人の結婚の邪魔しないでって言ってるの!」
私は陽子さんの迫力に押されて、何も言い返せない。
この人何言ってるの?航平の婚約者って…
この人と航平が結婚ってどういうこと?
でも、航平がウソをつく訳ない。
お兄さん達だって、お父さんやお母さんだって…
陽子「黙ってちゃ分からないでしょ!
   無言ってことは、そっか。
   理解して私に航平ちゃんを返してくれるってことかしら」
華 「……」

功太「華ちゃん!」
コンビニから帰って来た功太お兄さんが、私たちの異様な事態に気がついて、
携帯を持ったまま慌てて私の傍にきた。

華 「功太お兄さん…」
功太「(携帯を切る)
   陽子さん!華ちゃんに何話してるんや!」
陽子「お兄さん、お久しぶりです。この人に事実を話したのよ」
功太「事実って過去をか。それとも深夜の病室でのことか!
   華ちゃんに話して、航平との仲がどうなるものでもないで!」
陽子「お兄さんも知ってる通り、航平ちゃんと私は」
功太「迷惑や。航平も迷惑がってるし、かなり怒ってたで」
陽子「航平ちゃんが何で私に怒るの!?」
航平「陽子!!」

そして、功太お兄さんから電話を貰った航平も、
エレベーターから降りて私達に駆け寄ってきた。
功太お兄さんは、病院に入ってすぐ、
私達の姿を見て、航平に電話してくれてたのだった。
待合室にはまだ沢山の人がいたから、
この突然の騒ぎに辺りは一時騒然となってしまった。

華 「航平…」
陽子「航平ちゃん!やっぱり私のこと心配して来てくれたんやね」
航平「お前何してる!華に何をした!!」
陽子「何って、事実を伝えたのよ。昨日の二人のこと」
航平「ちょっと来い!!兄貴、華を頼む!親父のことは看護士頼んでるから」
功太「分かった」
陽子「航平ちゃん、痛い!何するの!?」
航平は凄い剣幕で、陽子さんを外に連れ出した。
それは私が今まで見た事のない、本気で怒った航平の顔だった。

功太お兄さんは、放心状態で震える私の肩を抱いてベンチに座らせた。
功太「華ちゃん、大丈夫か?あの子に何言われた。話してくれるか?」
華 「で、でも…(泣)」
功太「航平なら大丈夫や。心配ない(笑)華ちゃん、話してくれるな?」

私は陽子さんから言われた事を話した。
功太「そうか…。華ちゃん。後で航平から詳しいことは聞けると思うけど、
   あの子は航平が学生時代に付き合ってた元カノで、
   当時、航平に近づく女の子みんなに嫉妬して、酷い嫌がらせしたんや。
   始めは愛ゆえの行為やからって許してた航平も、
   段々エスカレートする彼女に嫌気がさしてな。
   最後は航平が愛想をつかして別れた。
   あの子は航平と別れた後も、しつこく航平に付きまとってたけど、
   航平が佐世保を離れるのを機会に縁が切れたんや。
   それ以来、俺たちはあの子とはずっと会ってなかったんやけど、
   一昨日、航平が病院で再会して、
   親父の病棟に勤務してることを知ったんや。
   あの子が華ちゃんに近づかんように、
   二人で話して気をつけてたんやけど、
   華ちゃんに嫌な思いさせて堪忍な。
   後のことは航平がちゃんとする。航平を信じてやってな」
華 「そうだったんですか…(涙を拭いながら)
   私こそ、大人気なく取り乱してごめんなさい。事情は分かりました。
   突然だったから、びっくりしちゃった(笑)
   功太お兄さん。私、航平さんのこともお兄さんのことも信じてます。
   もう大丈夫です。お父さんが待ってますから病室に戻りましょう」
功太「華ちゃん、ありがとうな。そやな、病室に戻ろう」
功太お兄さんは、私の背中に手を添えて微笑んだ。

突然頭上に稲妻が落ちてきたような衝撃と、
今にも倒れそうな目眩のような感覚は、
病室に着く頃にはなくなってきてた。
ドアを開けると、航平のお父さんは起きていて、
私たちを優しい笑顔で迎えてくれたの。
(続く)


この物語はフィクションです
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