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芸術起業論

2010-06-27 15:33:38 | 日記
村上隆:「芸術起業論」
発行所:株式会社 幻冬舎
発行年月:2006.6


村上隆の自伝的著作であると同時に、しかし現代アートの本質はなにか、初心者に面白おかしく伝える本となっています。

この本を読むと、ハンス・ホラインが「全ては建築である」と言った心情が何だか分かる気がします。全て同じだと言って、自分(ヨーロッパ)がもう一度、世界と対等に並び立ちうる舞台を用意することが目論まれました。


本書には現代アートは知的なゲーム、と語られていて、それが西洋アートの根底にあったと言います。

しかし知的なゲーム・形の無いアイディアと発言にとてつもない価値が与えられるからこそ、一方では徹底的な産業の効率化・合理化の精神が生まれるとも言えます。それらは表と裏の関係であって、両者を統合することを彼らは重要視しません。

だからこそフォード、ツーバイフォー、バックミンスター・フラーが、アメリカで生まれます。これが日本の建築文化、大工文化との大きな違いの一つのように思います。


ところがグローバリズムにおいては、とにかく作って見せること、それも素早く作ることに優位性が与えられます。アートでさえも。

ヨーロッパもEU化することで、積極的にその需要を喚起して国力を増強しようとしています。現代アートの舞台も、これから中国やブリックスの若いアーティスト達が、世界中を流動化させていくのでしょう。


そしてアルゴリズミック・デザインと呼ばれる分野にも、着実に新しい影響を及ぼしつつあるようです。

これについては次回考えたいと思います。


ところで本書では東京芸大の学生はとにかく手は動いて技術があって優秀なんだけど、アイディアがないんだよな・・・みたいなことがぼやかれています。

これってどこかで聞いたような・・・意外と身近な問題かも。


永井

ひばりが丘団地ストック再生実証試験

2010-06-26 14:34:28 | 日記
先日、UR都市機構が行うルネッサンス計画「ひばりが丘団地ストック再生実証試験」の現地公開に行ってきました。住棟3棟(A棟・B棟・C棟)の改修住戸及び共用部の案内や、展示パネルにより取組内容および施工検証成果の一部が紹介されています。以下詳細です。


□公開期間

平成22年12月まで

□公開日

毎週月・木曜日(平成22年9月末まで。祝日等を除く)

*10月以降の公開日程は未定

□申込方法

インターネットによる完全予約制

□所在地等

東京都東久留米市ひばりが丘団地
(西武池袋線ひばりが丘駅南口よりバスにて約10分)


UR賃貸住宅の団地の再生はこれまで既存住棟の建替えや住戸内のリニューアルという形で行っていましたが、持続可能なまちづくりという観点から既存の住宅をできるだけ長期間活用することが求められるようになってきています。一方で、昭和30年代、40年代に建設された住棟の多くは、階段室型でバリアフリー化への対応が困難であったり、階高が低い、住戸面積が狭いなど、現在のUR賃貸住宅の水準と比べると必ずしも十分なものとはいえません。UR都市機構はこれらの既存住棟を有効に活用するための実験的な試みをルネッサンス計画として位置づけ、ハード、ソフト両面での再生手法を検討しています。興味がある方はぜひ足を運んでみて下さい。



M1 林将利

三低主義

2010-06-26 00:20:34 | 日記
隈研吾+三浦展:「三低主義」
出版社:NTT出版
発行年月:2010.2


磯崎新の博識が西洋古典の徹底的な教養に根ざした現代への眼差しとするならば、
隈さんは資本主義経済と建築との共役関係を深く考察した上での冷酷な視線、と対比できる。

「三低主義」でも三浦さんが隈さんの面白い見解を次々に引き出して、話題は様々な方面へと広がっていきます。

今の住宅に対するニーズや消費者の気分がよく語られていて、とても参考になります。

しかし後半になるにつれて、だんだんリノベーション推進本、みたいな感じになっているような・・・

「負ける建築」をはじめ、○○主義的な原理にこそ隈さんは懐疑的であるべきと言って来たのだと思いますが、
リノベーション主義、のような読後感が残ってしまいました。

永井

オープンハウスのご案内

2010-06-25 12:01:08 | 日記
オープンハウスのご案内です。

明日(26日)、新谷研助手の永井さんが構造設計を担当された住宅のオープンハウスがあります。

午前中に大田区、午後に日吉の住宅を見学する予定です。


参加ご希望の方は明日下記集合場所までお越しください。

集合日時 6月26日 朝9:00
集合場所 早稲田大学理工学部 55号館1階のアトリウム




大田区の住宅



日吉の住宅



M1 山桐

世界でもっとも美しい10の科学実験

2010-06-22 02:16:59 | 日記
先日読み終わり、皆さんにもお勧めしたいと思ったので、書きます。

『世界でもっとも美しい10の科学実験』
ロバート・P・クリース 著,青木 薫 訳
日経BP社,2006年

この本は、著者が連載している雑誌のコラムの中で、読者に「一番美しいと思う物理学の実験を挙げてくれ」というアンケートをとり、寄せられた300以上の実験の中から十を選び、その実験を成功させるまでの科学者の苦労、社会的背景などを綴ったものである。

ガリレオの斜塔の落体実験や、ヤングの干渉実験など、そのほとんどが、教科書に載るような有名なものばかりで、なじみやすいであろうと思う。

僕が特に印象に残った実験は、キャベンディッシュの地球の質量を測定する実験である。2つの鉛玉の間に働く万有引力を測定し、それを基に地球の質量を求めるという実験であるが、皆さんもご存じの通り万有引力は非常に小さいので、測定には相当な精度が必要であった。キャベンディッシュは誤差の原因となる因子を片っ端から調べ上げ、試験機の改良と補正を繰り返し、限りなく誤差をなくすことを試みた。そして、その結果を報告した論文が発表されたとき、ある解説者は「誤差に関する学位論文のようだ」とボヤいだそうだ。その病的なまでのキャベンディッシュの根気と几帳面さには脱帽する。

他の実験に関する記述も非常に面白く、科学史としても楽しめる本となっている。

僕は今後研究で実験をやっていく身なので、この本を参考に…と思ったが、本書の内容の90%は次元が違いすぎて参考にならない。今までやってきた実験や論文などで見てきた実験が、まるで中学の理科の実験であると思ってしまうくらい、本書で扱っている実験は高貴でまさに美しいものばかりであった。

ぜひ皆さんも読んでみてください。


おおすが