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世界でもっとも美しい10の科学実験

2010-06-22 02:16:59 | 日記
先日読み終わり、皆さんにもお勧めしたいと思ったので、書きます。

『世界でもっとも美しい10の科学実験』
ロバート・P・クリース 著,青木 薫 訳
日経BP社,2006年

この本は、著者が連載している雑誌のコラムの中で、読者に「一番美しいと思う物理学の実験を挙げてくれ」というアンケートをとり、寄せられた300以上の実験の中から十を選び、その実験を成功させるまでの科学者の苦労、社会的背景などを綴ったものである。

ガリレオの斜塔の落体実験や、ヤングの干渉実験など、そのほとんどが、教科書に載るような有名なものばかりで、なじみやすいであろうと思う。

僕が特に印象に残った実験は、キャベンディッシュの地球の質量を測定する実験である。2つの鉛玉の間に働く万有引力を測定し、それを基に地球の質量を求めるという実験であるが、皆さんもご存じの通り万有引力は非常に小さいので、測定には相当な精度が必要であった。キャベンディッシュは誤差の原因となる因子を片っ端から調べ上げ、試験機の改良と補正を繰り返し、限りなく誤差をなくすことを試みた。そして、その結果を報告した論文が発表されたとき、ある解説者は「誤差に関する学位論文のようだ」とボヤいだそうだ。その病的なまでのキャベンディッシュの根気と几帳面さには脱帽する。

他の実験に関する記述も非常に面白く、科学史としても楽しめる本となっている。

僕は今後研究で実験をやっていく身なので、この本を参考に…と思ったが、本書の内容の90%は次元が違いすぎて参考にならない。今までやってきた実験や論文などで見てきた実験が、まるで中学の理科の実験であると思ってしまうくらい、本書で扱っている実験は高貴でまさに美しいものばかりであった。

ぜひ皆さんも読んでみてください。


おおすが