◇1話 アザラシまんじゅうの始まり
真っ黒な宇宙空間を真っ白な物体が、音速で真っ直ぐに進んでいく。
真っ白で真ん丸なこの物体は、バレーボールほどの大きさをしている。
そして左右と後ろに鰭のようなものがついていて、正面には目と鼻と口がついている。
それから鼻の横には髭がはえていた。
とてもとても長い時間と空間を移動してきた白い物体は、青い星を見つけた。
その青い星は地球だった。
スピードを落とすことなく星に近づく白い物体は、やがて大気圏に突入した。
安全な突入角度もスピードも知らない白い物体の体は、衝撃を受けて粉々に飛び散った。
破片は燃えたり宇宙へはね飛ばされたりしたが、いくつかの欠片が大気圏を突破した。
そして再形成をして手のひらに乗るような、小さな元の姿になった。
いくつかの小さな白い物体は落下をし続け、そのうちの1つが日本上空にやってきた。
地上が近づくと3本の鰭をいっぱいに広げ速度を緩め始めた。
そしてアパートの窓から部屋に飛び込むとテーブルの上に置いてあった小皿の上に、ぴょこんと収まった。
そこへ、ランドセルを担いだ女の子が学校から戻ってきた。
「ただいまぁ〜!あ、かわいい〜アザラシまんじゅうだ!おいしそう!いただきま~す!」
と何の躊躇もなくパクリと食べてしまった。
そして、すぐに女の子はランドセルを置いて遊びに出かけてしまったのだった。