BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説24-9「ディスティニーアンダーグラウンド」

2021-02-21 23:49:14 | ★ディスティニー24章
「…諒…」
 麻也はぐったりと倒れ込んでしまったが、それを諒はしっかりと抱き寄せると、優しく耳元に囁いてくる。
「ごめん、弱ってる時に…でも一分でも早く、俺の気持ちが本当だって伝えたかったの」
 麻也はこの上もなく幸せにこの言葉を聞いたが、やっぱり気後れがしてしまって、自分からは何も言えない。
 でも、このタイミングを逃したら…
 麻也はどうにか諒の目を見据えて
「…諒…そんなこと言われたら、もう俺、諒から離れられないよ。いいの?」
諒の腕に力がこもる。そして、
「良かったあ、麻也さん。いつも俺が悪くて本当にごめん。もう絶対に麻也さんを離さない。信じ続ける。傷つけたりしない」
 思えば諒は、麻也が救急車で運ばれて以来、酷い言葉はぶつけてきていない。遠慮しながら少しずつ、じわじわと、これまでどおりの優しさで包みこんでくれている。
(元に戻ってきたんだな、俺たち…)
「麻也さんの体も心もいたわらなきゃ、ってわかってるんだけど、麻也さんの本心を知りたくなっちゃって…」
「あ…」
「でも、わかったから嬉しい。もう俺もドームに立って、麻也さんにふさわしいのは俺だけってことみんなに見せびらかしてやる。俺たち二人は二人だけなんだ」
「諒、それで後悔しないの?」
「しない」
 諒は自分で恥ずかしくなったのか、はにかんで笑い、そして冗談ぽく、
「いやー、麻也さんたらばっちり俺を受け止めてくれちゃって~気持ちよかった~」
「んも~、諒ったら~」
(そう、俺もすごく気持ちが良かった)
 麻也も幸せだった…

 


★BLロック王子小説24-8「ディスティニーアンダーグラウンド」

2021-02-20 22:19:01 | ★ディスティニー24章
 そして…麻也はすぐにのぼりつめてしまった…
 すると、息つく間もなく、体をひっくり返されると、感じる背中を責められ、さらにはおさえつけられ、気づけば…
 諒の長く美しい指が麻也の深奥に入ろうとしているのを感じる…
「あ…ん…」
 あられもない自分の声が恥ずかしい。
 ようやく諒のささやき声が入ってくる。
「…麻也さん、ひとつになろうね…」
 あ…
 麻也の体には力が入ってしまう。
(諒、本当に前みたいに俺とひとつになれるの?
 無理しなくていいのに…)
 しかし、麻也の肌は、諒の熱いものを感じている。
 そして、かつてのように諒の指先は潤滑油を塗り、マッサージをして麻也のあの部分をほぐして…
「はぁ…ん…ん…」
 …諒のが…入ってくる…
「あ…はぁ…ああっ…」
「…麻也さん…俺こんなに愛してる…」
 信じて…
 麻也は、いつも言ってしまう、恥ずかしさからの「いや」は、今夜ばかりは絶対言わない。
 そのうち諒はいつもより早く、麻也の中で果てていた。
それを感じて、麻也も安心して、ラストをむかえることができた…
(…諒…本当に俺のこと…受け止めていけるのかな…)
「…麻也さん…俺を本当に許してくれたんだね…俺たち、今またひとつになれたよね。」
息をはずませながらの諒の明るい声が麻也には嬉しかった。
(諒は本当に…俺のすべてを受け止められるんだ…)


★BLロック王子小説24-7「ディスティニーアンダーグラウンド」

2021-02-19 23:17:00 | ★ディスティニー24章
「え~、あの番組はCMないじゃん~」
と、諒は大笑いしたが、麻也は真剣に、
「いいじゃん、とりあえずは現在の番組だし…」
「でも、取り上げられる絵とかは昔のものも多いじゃん…最初の5分くらいは須藤さんの顔を立ててリアルタイムの民放見ようよ」
 子供のようにムキになったのが少し恥ずかしくて
麻也は諒の言うとおりにした。
 ごく自然な流れで2人でベッドに入るとテレビに向かって座り、諒がリモコンでテレビをつけた。
 ちょうどタバコのCMが流れていたが、
「そういや、タバコのCMも男向けのファッショナブルだよね…俺たちタバコと縁ないから忘れてたかも」
 次は女性のネイルのCMだったが…すると麻也は左手をつながれ、指をまさぐられた。
 そしてテレビをとめられてしまった。
「あれ?」
 すると諒は、無言でリモコンをサイドテーブルに置くと、真剣な表情で抱き締めてきた。
 そしてさらに無言のまま、泣き出しそうな顔で麻也を押し倒してくる。
「あ…諒…」
 唇を奪われれば、バスローブを脱がされ…あっという間に一糸まとわぬ姿にされた。
 この夜の諒はいつも以上に激しかった。無言のままなのが救いだった。
 諒らしくもなく、容赦なく、といった求め方だった。
「諒、諒…あ…ああっ…」
久しぶりの恋人の唇に、求めに、麻也は反応してしまう。声が抑えられない。


★BLロック王子小説24-6「ディスティニーアンダーグラウンド」

2021-02-18 23:29:04 | ★ディスティニー24章
「言われなくても、俺たちメンバーはアンテナ感度がいいと思うんだけど、何で…そんなに俺たちは頼りなく見えるのかなあ」
と、言いながら麻也は後悔していた。
 自分の起こした事件を考えれば…
 しかし諒は、
「いや、そういうことじゃなくて…」
 社長や須藤の方が、むしろ東京ドームに舞い上がったり、緊張したりしているのだという。
 それを聞いて、麻也は笑ってしまった。
「みんな、それぞれの立場で、ドームに向かってるんだね」
 諒は満面の笑みで、
「あの2人は特に親みたいなもんだからね。少しでも恩返しになればいいよね」

 そう、今の事務所は本当にいい事務所だと麻也は思う。
 前のバンドの時の事務所は本当にひどかった。
 そこで聞いた言葉が「スターは一代、スタッフ末代」という言葉だった。悪口らしいニュアンスだった。
 ステージに立つ人間は、たった一回しかそのアーティスト人生を過ごせない。一度売れなくなったらそれまでだ(当時、再ブレイクはほとんどなかった)。
 それに引き替え、スタッフとして活動している人間は、一組のスターが終わってもまた次々とアーティストを手がけることができるという…
 それはそうかもしれないが…
 そんな当てこすりを言われることもなく、みんなが熱心に動いてくれている今の環境が、麻也には本当に嬉しかった。
「諒、じゃあ早速テレビ見ようよ。いつもの美術番組録画してないの?」




★BLロック王子小説24-5「ディスティニーアンダーグラウンド」

2021-02-17 23:00:00 | ★ディスティニー24章
「諒、すごいじゃん。これどうしたの? 高かったんじゃない?」
「いやあ、それがね、欲しいかもとかずっと俺達も迷ってたよね? 」
「うん…」
「それで…俺はテレビなんて忘れてたんだけど、社長が、プレゼントしてやるって…ドームでどんだけ金かかるかわかんないから、俺は辞退したんだけど…社長は聞かなくて…」
「えー、社長どうしちゃったんだろう…」
 すると諒は、恥ずかしそうに、両手で顔を覆い、
「麻也さんいなかったから、そんなに寝室ではテレビ見ません、とも恥ずかしくて言えなくて、そこですぐ決まっちゃったの」
「何でまた…」
「これからますます忙しくてテレビも見られないような俺たちに、色々と世間の動きも学ばせたいみたい。できるだけたくさん流行りのものを見ておけってさ。つまベッドルームでまで勉強しろってことなんだよ~」
 そこまで聞いて麻也もため息をついてしまった。
「ドームやるんだしねえ、時代を掴んでおけってことなんだろうけど…でもこれじゃ睡眠学習じゃん」
睡眠学習、という古い言葉に諒が大笑いしてくれたので麻也はほっとした。
 しかし、須藤もなぜか「CMも時代の鏡ですからできるだけ見て下さいね」と言ったという。
 しかし、その言葉には麻也は少し引っかかった。