BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説24-4「ディスティニーアンダーグラウンド」

2021-02-16 22:17:10 | ★ディスティニー24章
(ドームかあ…どうしようかな…)
(でもそろそろ、諒の書いた曲の方がライブでも多くなりそうだな。もうその方がいいのかも…)
 そして、少し恐ろしいことに思い至る。

 …俺にはまだ曲を書くチカラは残ってるのかな…

 …また疲れが戻ってくる。やっぱりまだ静養中なんだな、俺…

 麻也はまたリビングに戻った。
そこに、シャワーを終えた黒のバスローブの諒が、やってきた。
「麻也さん何飲んでるの?」
「ミネラルな水だよ。でも諒、俺のこと気にしないでビールとか飲んでね」
「うん。麻也さんこそ気にしないで。飲みたくなったら飲んじゃうから」
と、横に腰を下ろした諒は、ウーロン茶をひとロ飲むと、ちょっと困ったように、ロをきゅんと結んで、下を向いた。
「…麻也さん、こんな時間だからさあ、テレビはベッドで見ない?」
 
(ああ…こんなに二人で恥じらっちゃうなんて…でも…諒ったら…)

 …諒のドキドキが移った麻也は、
「あ、ああ、それいいね…」
とは言ったものの…寝室にテレビなんてあったっけ?
 久しぶりに入ったベッドルームには、入れたばかりらしい、真新しい大きなテレビがベッドの正面に鎮座していた。テレビボードの中にはビデオデッキも…


★BLロック王子小説24-3「ディスティニーアンダーグラウンド」

2021-02-15 22:50:56 | ★ディスティニー24章
「いいねえ…ドームかあ…」
 なぜか諒は吹き出した。
「ふふっ、麻也さんかわいい」
 何だよそれ…麻也もつられて笑いながら抗議だ。
「だってほのぼのとした言い方するんだもん」
麻也は少しふくれっ面になってしまった。
「そう? 俺はこれでもドームに向かって緊張してるんだよ」
「俺もだよ…」
「…いや、見えないけど…」
「麻也さんひどいわ」
「でもきっと、具体的に動き出せば緊張もほぐれてくるよね…早くスタジオに入りたいな…」
 思わず口を突いて出た自分の言葉に麻也は驚いたが、諒は何気なく受けて、
「そうだねえ、その時は俺がスタジオに送ってくよ。帰りはゴハンに行ったりしてさ」
「そうだね…」
とは言ったものの、体の方はいつから思うように動いてくれるのだろうと、麻也は不安になる。

 …でもとにかく自分は今、生きているのだ。

 
 鈴木が置いていってくれたビーフシチューや何かで夕食を済ませると、シャワータイムだった。
 先に使わせてもらった麻也は、諒に着せられた白のバスローブのまま、諒を待ちながらリビングでごろごろしていた。
 疲れた麻也はベッドで休んでいたかったが、
(うーん、露骨だと思われても嫌だし…)
 気分を変えようと、麻也は自分の部屋兼ミニスタジオに、本日2回目に入ってみた。



★BLロック王子小説24-2「ディスティニーアンダーグラウンド」

2021-02-14 21:58:00 | ★ディスティニー24章
 すると諒は、麻也さんごめんねと言いながら、長い腕をまわして、キスをしてきた。
 麻也の方もそれに応えてしまう。いつものパターンだ。
が、すぐに、
「ごめん、麻也さん、静養中ってわかってるのに俺…ごめんね」
 これまでならここでベッドに誘われたのに…ちょっと寂しい。
 しかし、やっぱり、退院直後の体は情けないほど弱っていると実感する。
笑顔の諒に抱き起こされて、2人でミネラルウォーターを飲み始めた…
 でもやっぱり話題に困る。
 諒の、あの怒りに満ちた表情がフラッシュバックするし…
 それでも麻也はどうにか、
「…ごめんね。のんびりできるはずのオフだったのに…」
などとあたりさわりのないことしか言えなくて…
 諒も焦った様子で、
「あ、あの、南の島の旅行は真樹からきいて、小野くんにキャンセルしてもらったから。ドームが終わってからでも…」
 麻也が病院で忘れるようにしてしまった、諒の誕プレサプライズ旅行。付き人の小野に手配してもらっていたのだ。
「あ、ああ…ごめん…」
諒の誕生日をとんでもないものにしてしまったし…
 麻也の気持ちがわかったらしい諒は、無理に喜ばせようとする笑顔で、
「ドームの記念のラブラブ旅行、ってことでどう?」