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BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-49「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-09 17:45:55 | ★ディスティニー21章
 2人で押し問答になったが、こういう時に限って待ち人は遅い。

 そのうちドンとドアの下の方に何かがぶつかる音…

 麻也にも想像はついたが、言葉にするのも嫌で、沈黙…

 真樹には悪いと思うのだが…

「…ドア開けるのが危険になっちゃったね…」

 そこに男の声と気配…

 鈴木さんかなと言いながら防犯用のレンズを覗いた真樹は、

「あっ、鈴木さんと後藤くんと…」

真樹のマネージャーの伊豆たちがしゃがみ込んで話しているらしい。男達が会話をしているのが伝わってくる。

「いや、俺もドア開けて参戦したいけど…」

 と真樹は言ってくれたが、麻也はもうとにかく嫌だし、体もいうことをきかないので、真樹の警護を頼みに、毛布に潜り込んでしまった。

「あー、やっぱり、ドアの下にいたんだよ。今立ち上がったもん。鈴木さん達振り切って1人で帰ろうとしてるけど後藤くん、追ってったよ…信用できないもんね…」

 真樹の実況はそこまでだったが、麻也は、気は滅入るわ、疲れはどっと湧き上がってくるわで、毛布から顔を出すこともできなかった。

「あれ、兄貴寝ちゃった?」

「寝てないよ。」

「パジャマに着替えた方がいいんじゃない? その方が疲れが取れるよ。」

 麻也が顔を出すと自分も疲れているのに真樹はわざわざ麻也の大小のバッグを持ってきてくれた。

 麻也がようやくパジャマに着替え終えた頃、鈴木たちが入ってきて…麻也は横になって、真樹が説明してくれるのを聞いていたのだが…

 次に真樹に起こされた時はもう朝だった。

★BLロック王子小説21-48「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-08 07:08:25 | ★ディスティニー21章
麻也は固まってしまった、それって…

 自分のあまりのフリーズぶりに、真樹を困らせているのが情けなく、でも成長してきて青年っぽくなってきているあの少年が嫌でたまらなかった。

 諒以外の男に迫られているということも嫌だった。

「兄貴、鈴木さん達呼ぶわ。それでも埒が明かなかったら、ホテルの人も呼んでみる」

 と携帯を手に取るとすぐに鈴木につながったようだ。

 しかし、電話の向こうではなんだか揉めている気配で、

「切れちゃったよ…」

 真樹は折り返し…

 その時ドアがノックされた。麻也は真っ青になった。

「麻也さんひと目でいいからお顔を見せてください…」

 それは、間違いなく冬弥の声で…

 麻也は真樹の携帯を耳守るばかりだった。

「…鈴木さんはこっち向かってるって、諒が戻りたいっていうのを止めるので大変だったって…」

 にしてもやりすぎだっつーの、と真樹は言いながらドアの方を睨み付けた。

 するとまたノックされた。

 それに向かって真樹が、

「他の人にも迷惑なんでやめてもらえますか



 真樹は振り返り、

「俺が出て話つけてこようか?」

「やめた方がいい。元々ちょっと非常識な奴なんだ」

「いや、でも…」

 と言いながらドアの防犯レンズで見たが、姿は見えないという。

ドアの下の方でうずくまっているとでもいうのだろうか。

「 兄貴は着替えて寝てていいよ。鈴木さん達もすぐ来るだろうし、俺が見張ってるから大丈夫だよ」

「でも…」

★BLロック王子小説21-47「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-09-22 20:54:25 | ★ディスティニー21章
「兄貴どうしたの?」
「あの…あの困った男の子が隣の店に入っていくのが見えたんだ。マネージャーと一緒に…」
「あ…」
「何…」
 真樹は黙り込んだ。
 冬弥が追ってきているとその真樹の様子から分かってしまった。しかし、
「真樹、悪いけど後ろ見て。まだいる?」
 麻也は仕方なく頼んだ。
振り返って、また向きなおった真樹は口を開かなかった。
それでまだついてきている
とわかった。
「あの子どんだけ兄貴のこと好きなんだよ」
そして言葉を選んで、
「兄貴とどうにかなっちゃったら喜び死ににしちゃうんじゃないの
~」
麻也は諒がいない弟の前なので気安く、しかし投げやりな感じで、
「どうにかなってやってびっくりするくらい失望させてやろうかな
。」
「あーそれいいかも。

 真樹はそう言って笑い、気を引き立てるように、
「じゃあ部屋まで突っ走りましょう!」
 そして、タクシーを降りると一目散にエレベーターめがけて二人は走った。
 運よくエレベーターに飛び込めた。
 2人で息を切らせながら、真樹が言ってくれた。
「ここまで来ればもう大丈夫だろ。部屋に入ったら兄貴はすぐ休んでよ。諒には俺が責任持って電話するから。」
そんなことを話しながら、麻也たちはようやく部屋にころがりこんだ。
「真樹がいてくれてよかった~」
と麻也がベッドに倒れこむと、しばらくしてチャイムが鳴った。
 誰だろう…二人は顔を見合わせた。
「はい…」
警戒しながら真樹がドアに近づくと、
「麻也さんごめんなさい。冬弥です。藤田冬弥です…」
 真樹まで凍り付いてしまった。
 しかし真樹はドアごしにはっきりと、
「いやあ、今日はもう遅いですからお引き取りいただけますか。」
 すると今度は別の男の声で、
「すみません、冬弥のマネージャーの…です。申し訳ありませんが、ひと目だけでも麻也さんにお会いすることはできませんか?」
当然できるはずがない。真樹は冷静に、
「いや、明日以降にマネージャーのいるところでお願いできますか。」
「わっかりましたあ。じゃぁこれから私、マネージャーさんにお願いしてきます…」
 と言い、去っていく気配…

★BLロック王子小説21-46「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-08-19 21:28:21 | ★ディスティニー21章
 確かに諒は必要以上に疲れている。自分が病気でなければホテルでは癒してあげるのに…
「どうしたの?」
 諒だった。真樹がきちんと、
「兄貴に頼んでたの。みんな諒を休ませたいから、兄貴は俺と泊まるようにしてくれって。」
「…」
「兄貴の身の回りは俺たちがやるから、ツアーのラストまで、とにかくボーカルに専念してほしい。」
 諒はどこかホッとした表情を押し殺したように見えたが、
「ま、麻也さんはそれでいいの? 」
「うん。ライブでは絡めるし、それで足りなかったら打ち上げの時に路チューでも…」
路チュー、に落としどころを見つけて、平和的に男三人はバスに乗り込んでいった…
 しかし、その地区のライブはいまひとつだった。真面目すぎるほど真面目な県民性のためもあるのか、それとも、まだまだディスグラに染まり切っていないのか・・・
 後で打ち上げで、「諒のバースデーサプライズを期待していたファンがかなりいたらしい」というのを色々な人に聞いて、
メンバーたちもちょっと困ってしまった。
「…それでアンコール後もいまいちだったのか…」
 その時、真樹がもぞもぞと自分のバッグに手を突っ込み、携帯を取り出したが、
「兄貴の方。石川さん」
 専属のカメラマンが、いくら世話になっているとはいえ、こんな時間に…とも思ったが、宴席に座っているのもそろそろ疲れてきたので、麻也は切れてしまった電話を折り返す体で、真樹に付き添われて店の外の廊下に出た。
 しかし、どうしたものか何度かけなおしても石川は出ない。
 そのうち、
「…バッテリー切れたあ…」
「兄貴ぃ…じゃあ、ホテル帰ってからにでもすれば」
「遅くなるからやだ。真樹のケータイ貸して。」
「置いてきちゃったよー。ちょっと待ってて。」
と、真樹はわざわざ店に取りにいってくれた。
 その時に…麻也は信じられない人物を見てしまった。
 マネージャーに付き添われた少年、藤田冬弥。麻也に熱烈な片思いをぶつけてくる18歳。
 隣の店に入っていったらしい。
 麻也は慌てて廊下の曲がり角に身を隠した。
 が、ニアミスで真樹とマネージャーがすれ違い、冬弥ではなく彼は真樹に気づいたかも…
麻也は慌てて真樹に向かって走り、
「真樹、一緒に逃げて!」
「えっ? 何、どうしたの? 」
「いいから! ホテルに戻る!」
「わかった!」
 ビルから飛び出すと、追っかけの洗礼だった。
 キャー、お兄ちゃん~!!
きゃー、真樹ぃ~!!
 遠藤兄弟最高ーっ!!
 雑居ビルの前にたまっていた追っかけを真樹がかきわけてくれて、二人はようやくタクシーに乗り込むことができた。

★BLロック王子小説21-45「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-08-18 22:32:28 | ★ディスティニー21章
「…諒、何言ってるの?」
「いや、辞めるじゃなくて、まずは休むでもいいけどさ…」
 諒はもっとも大事なものを差し出してきている…そう思った途端、あろうことか麻也は少し喜びのようなものを感じ、怒りが少しおさまってきたような…
 諒になだめられるまま、掛け布団の上で諒に体を持たせかけていると、障子の向こうから社長が声をかけてきた。
「…おーい、大丈夫かー?」
 諒が明るい声で、
「大丈夫です。うるさくしてすみません」
社長は少しからかった口調で、
「あんまり頑張るなよ
。ユンケルでも持ってこようか?」
「いえ、大丈夫です~」
「すみません」
 麻也も謝った。
「じゃあ、おやすみ。明日よろしくな~」
 社長のおかげで2人に少し笑いが戻った。
(…とにかくあと3ステージ頑張れば、武道館2days…って全部で5つか…頑張ろう…)
 
次の日は社長の家族に見送られて、地方公演に出発した。
「何だか修学旅行みたい~」
諒の笑顔に麻也も引き込まれて笑っていた。
その続きで、空港でも何だか二人はベタベタしてしまい、遠巻きにいる追っかけたちのほっとしたような、あるいはびっくりしたような視線を感じる。
あの雑誌の写真も記事も、あのアイドルが匂わせた結婚相手もすべて嘘だったのだと…

…このまま、ツアー最終日の武道館までいけるものだと思った。麻也と諒、バックステージの恋人たちは。

しかし…

空港でリムジンバスを待っている間、麻也は真樹に耳打ちされてしまった。
「…兄貴、この3公演は俺の部屋に泊まってほしいんだけど…」
「どうして? 」
「兄貴には悪いけど、諒を休ませたい。俺しか言える人間がいないと思って…」
兄貴といると、諒、ホテルの部屋で頑張っちゃうだろ…
今日の真樹はずいぶんストレートだ…麻也は頬が赤らむのを感じながら反論した。
「…いや最近はそうでも…」
すると真樹はふくれっ面で、
「いや、そうじゃなくて、着替えの手伝いとか荷物の整理とか…」
「あ、ああ、そっちね…」