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BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-54「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-16 22:04:28 | ★ディスティニー21章
 その夜は地方公演のラストということで、打ち上げでは盛り上げなければと真樹、と直人が騒いでくれたが、もちろんこの日も貸切にした店の外は厳戒態勢である。
 諒とは離れて座っていたら、諒とのツインの部屋に誘われることもなかったので、麻也はまた真樹の部屋に帰った。
 すると、真樹は言いづらそうに、
「兄貴、いいの? 諒の部屋に行かなくて」
 麻也は遠い目で、
「向こうが夜這いしてくるでしょ、その気があれば」
 そう言ってから気がついた。
(あ…そうだ今夜は薬がのめる…)
 炭酸の泡が頭の中でわき立つような、何とも言えない不快感が湧いてくる…
(早く止めなきゃ…毎日薬飲みたい…)
 いや、まともな薬なんだなけどな、とセックス・ドラッグ・ロックンロールという言葉が頭をよぎる麻也であった。
 翌々日は武道館の総合リハーサルだったので、朝早く麻也は目覚めたばかりの頭でサロンバスに詰め込まれた。
 ようやく武道館か。
 大好きな、武道館。
こんな気持ちでこんな体調で迎えるなんて…でも3度目の武道館公演に思う。
(4度目もありますように…)
 麻也は東京に向かいながらそう祈った。
 でも、その頃諒とはどうなっているんだろう…?
 
 しかし、麻也は当然のごとく社長の家に連れていかれた。
 諒に頼まれたせいもあったのかもしれない。
 そして、社長の家に泊めてもらい、薬を飲んだら一日中寝てしまったので、1日の記憶が飛んだまま麻也は武道館のリハーサルに入ってしまった。
 
 リハーサルのステージから、巨大な日の丸を見上げて、
 ああ、俺たちもうここにふさわしいよね。
 麻也はしみじみ思った。
 ちょうど真樹が通り掛かったので、呼び止めて、麻也は真樹に思ったままを言った。
 あとは何も言えなくなったが、真樹も麻也の視線を追って、
「ああ、そうだね…」
 と言葉に詰まっていた
 それなので麻也は少し兄貴らしさを取り戻し、
「あの日、お前がロック同好会にライブに誘ってくれなかったら…」

★BLロック王子小説21-53「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-13 10:29:20 | ★ディスティニー21章
 今回のツアーで地方最後となったライブ。
 2回目のアンコールの時、息を整えながら諒がMCで
「今回のツアーは非常にハードなスケジュールだったんだけど…」
 客席から拍手が湧き上がる。
 「麻也さん、何かコメントある?」 麻也は笑って投げキッスだけを諒に送った。
 かわいい、と悲鳴があがる
 麻也はメンバーと、ごく限られたスタッフに、自分の体調不良に箝口令を引いていたので、最後のMCまでうまくいったと…ほっとしていた。
「こんなにハードになってしまったツアーで明後日もライブです」
 と、今日は客席に笑いと喝采を集めて、
「ソールドアウトの武道館でそれではまた会いましょう!」
 そう宣言する諒の満足げな笑顔は、麻也も惚れ惚れするほどだった。

★BLロック王子小説21-52「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-12 21:27:54 | ★ディスティニー21章
…その夜も麻也が真樹の部屋なので、気を使わないような使うような…
 やっぱり1度外に所帯を持っちゃったからなのかな…
 諒との時間が懐かしかったし、慣れた諒に面倒を見てもらう方が、痒いところに手が届くのだが…
 夜の時間のことは…だけれどやっぱり諒が歩み寄ってきてくれたのに甘えようかな
 その時麻也がふと思いついたのは恭一の存在だった。
 恭一に相談してみようか。でも何を…
 どうやったって、過去は消せないんだ
「兄貴、着替え手伝おうか?」
「うん、パジャマ出してくれると助かる…」
 ここのところ寝る前の薬が飲めない。
 次に飲めるのは2日後、諒の誕生日の夜だ。
 次の日のライブが地方のラストになった。
 明後日は武道館2DAYSの初日を迎えているだろう。
 地方の公演は地元のファンに見て欲しいのに、東京や他の地方からのファンもチケットを入手して来ているという。ありがたいがちょっと複雑な気持ちだ。
 そして、武道館もあちこちの会場を複数経験してきた、追っかけの猛者が2日とも来てくれる…

★BLロック王子小説21-51「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-11 11:43:38 | ★ディスティニー21章
 いや、それ以上の冷ややかなオーラが諒には現れてくる。真樹も諒のことには触れようとはしない。
 次の公演地ではリハーサルの時にステージの音声チェックの時、諒に小声で言われた。それは例のキスシーンのことだ。
「麻也さん、今日の昼はあんまり濃厚とか長いのやめた方がいいみたい」
「えっ、どうして?」
「ここの県、真面目な県で有名じゃん、だから実はこれまであのシーンは少し引かれてたみたいなの」
「そっか…」
 本当かなと思いながらも、麻也は意義を唱えなかった。
 そして、自分が言い出したこととはいえ、
(やっぱりこのツアーが終わったら終わりかな、俺達…)
そんな気がした。
 でも、もう諒にはどう思われても構わない、あの事件さえ知られなければ…
 でも、キスシーンはあっさりだったが、その次の真樹のベースを長くしてもらったので、麻也的には助かったかもしれない。
 その日の打ち上げは一次二次とも店は貸切だった。

★BLロック王子小説21-50「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-01-10 18:42:00 | ★ディスティニー21章
 真樹が用意してくれた服に袖を通した時、

(…あ、諒…)

麻也は少し切なくなった。

 ボーカルまでいなくなるわけにはいかないからと、諒は2次会に残ったはずだから、引き上げてきたのは多分自分が寝入ってからだったのだろうが…
忙しい真樹に自分の恋人のことを訪ねるのは気がひける。そして真樹が何も言ってくれないところを見ると、諒は真樹にも何も言わずに自分の部屋に戻ったのかもしれない…

「兄貴、携帯の充電、いちおうやっといたから。満タンにはならなかったみたいだけど…バッグに入れといたから」

 思えば今日も移動日、携帯は特に麻也には命綱だ。

 朝食の時も、諒は麻也に近づいて来ようとはせず…
 一緒にいるのは真樹なのに、まるで今の彼氏と共にいる麻也を見る、かつての恋人のようだと麻也は思った。
(やっぽり俺から昨日の行方不明を謝っていないからかな…)