地球破壊爆弾No.V-7

とあるパロロワ書き手の一人が徒然と思うままに何かしらを書き綴っていきます。

東方黙示録

2010-02-04 | 日記
つづき。

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世界を畏れより開放すべく日夜人と妖怪の為に戦う”幻想郷”という名の集団。
その頭領たる比那名居天子は己が参謀である永江衣玖と二人、新しい仲間の処遇について頭を悩ませていた。

世界の怨敵たるミシャクジの祟り神、洩矢諏訪子。
あれの齎した人肉の兵に囲まれていた十六夜咲夜と名乗った人間であるが、どうにも言い分が奇妙であった。
この世界は嘘であると、間違いであると言う。何より、それはこの比那名居天子のせいだとも言う。

仲間達はあの女は気が触れているのだとそんな風に言った。隣に立つ衣玖とてそうだ。
こんな時代だ。妄言を吐く者。その妄言に微かな希望を見出し縋り付く者。珍しいものでもなんでもない。
しかし、あの咲夜という者の目。あれは世迷い言に縋るような者の目ではなかった。
言い分にしても随分と荒唐無稽だが、一通りの筋は通っている。
なにより、彼女が言っていることがもし真実ならば、今の世の不幸は自身のせいだとなるのだから放ってはおけない。

天子は一時の隠れ家として身を潜めていたビルの屋上から夕焼けに染まった血色の世界を見渡す。

祟り神である洩矢諏訪子が全人類に対して宣戦布告してから数年。
大陸の一端。竜の形をした島国から始まったそれは瞬く間に広がり、戦火は世界を嘗め尽くした。
これまで世の暗がりに潜み隠されていた妖怪や異能の姿はことごとく暴かれ、
諏訪子が生み出した妖怪と人間との対立という構図はそこに様々な悲劇を生んだ。
諏訪子に与せぬ妖怪が同じように人間から敵視されたり、逆に人間が妖怪の側につき同じ人間を傷つけることもあった。

右を見ても左を見てもその者が敵でないかと疑う時代。親と子であっても信じられないという時代。
そんな時代を見回して、ささやかながら抵抗し、弱者に手を伸ばし、その手が足りないことに天子は心を痛めた。
そしてその度に、古き友であり今はもういない八雲紫のことを思い出すのだ。

幻想郷とは元々が彼女の唱えたひとつの構想であった。
瞬く間に流れ過ぎ行く人の世からうつろわざる世界を隔離し、そこに幻想の郷を作り出す。
世界の境界を操る術と高い志を持った彼女だからこそできえた理想の世界。今の世とは真逆の世界。
だがしかし彼女はいない。故に、幻想は幻想でしかなくなってしまったのだ。

咲夜という者はその幻想郷のある世界から来たという。
なるほど、そうならばこの世界を見て彼女が責めてくるというのも解るもの。
紫を失ってからここに至るまで、どれだけ手を尽くしたと言い訳しようともただ一回り辺りを見回すだけで無能は知れる。
どんな罵詈雑言も怒りも恨みも甘んじて受けねばならないだろう。

天子はひとり頷くと衣玖に咲夜を本拠地に連れ帰るとそう言った。
衣玖は目を丸くして驚くがそれも無理はない。この時勢、あの様な何の火種になるかわからない者は避けるものだろう。
しかし確かめずにはいられない。幸い、幻想郷には人の心を読める者もいる。

もし、全てが真実なのだとすれば。
あるいは、いつかの贖罪の機会が与えられるのかもと、天子は紫色に変わった空を見てそう思うのであった。
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さくさくいこう。

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