かつてア(略

ああああああああああああああああ!

ある平行世界での可能性①『どうしても、お前を諦められなかったんだ』 その3

2007-09-24 18:49:00 | 涼宮ハルヒの二次創作
・体育館
…ともあれ、卒業式は定刻通りに始まった。二年前、いや去年と同じようなテンプレ通りの式次第なんだけど。違うのは俺達は在校生から卒業生になり、卒業証書を貰う立場になっているくらいか。でも、本当に悲しくなってくるよな。これで高校生活が最後だって思うと…。岡部先生には何回くらい怒られたり、説教されたんだろう。逆に何回くらい勇気づけられたんだろう。岡部先生のお陰で、俺も若干ながら教員免許でも取ろうって気持ちも出たし……。

「答辞。卒業生代表、三年五組、稲葉高氏君」
「はいっ」

ああ、ついに始まるのか…。去年は前代の生徒会長によるユーモアが溢れすぎる答辞で頭を抱えていた教師もいたが、今年は…きっとまじめに稲葉がやってくれるに違いない…と思ったけど。



「……春と冬。桜吹雪が舞う直前であり、雪が静かに積もる時期の終わり。そして別れと出会いが交わるのこの時期。近年の暖冬気候により、いつもより気持ち短めに春がやってきたような感覚に陥られます。『季節が過ぎゆくのは早い』といつも誰かが言ってはいますが、まさに言葉の通り、私たちは今日、この学舎を旅立たなければならない時を迎えることになりました。…阪神・淡路大震災から10年。多くの爪痕と悲しみを残しながらも、絶望から生み出された希望によって生きることの大切さ、運命に立ち向かうことの大切さを学び、それから七年。希望と夢を胸に、春風の吹く中校門をくぐった、二年前の四月。色々と教師・教員の方々に迷惑をかけながらも、自然と共存すること、仲間達と力を合わせなければならない事を十二分に知った、淡路青少年交流の家での共同実習。なんだかんだ言われて、いろいろと応援合戦のネタを考えてはみたけど最終的には他人任せになってしまい、自分のボキャブラリー不足を呪った体育祭。………………」

途中に自虐的なネタを入れて、悲しいピアノの演奏中でも笑いを起こそうと必死にしている稲葉。…答辞というのは基本的には笑いを取ろうというものじゃないけどな。前代の生徒会長のネタを中途半端に取り入れようとするから以下略。…でも、そのはきはきとしてしゃべり方と、誰からも嫌われ者にならないよう、好かれようとしていた性格、理系・文系専門コースの人間でもないのに、テストでの成績の優秀ぶりは輝いてたぜ…。お前なら本当に夢を実現できる、そう信じてる。俺だって、夢を実現させないといけないけどな…

「……私達卒業生は、この日を持って学舎を離れ、それぞれの道へと歩んでいきます。…この別れが永遠の別れではなく、またどこかで会えたり、活躍を伝えられる日が必ず来るんだと、きっとその通りになれると信じる。私達を三年間見守り、指導し、精神・身体的に育ててくれた教職員の皆様。十八年間、温かく見守り続けて下さった保護者の皆様。そして、この北高の歴史の一ページという、バトンを引き継ぐ在校生の皆様。皆様の勇気と期待を胸に、私達はこの学舎を巣立っていきます。…この言葉を先に言うのに違和感を感じる人もいるかも知れませんが、卒業生のために大がかりな卒業式典を挙行していただき、本当にありがとうございました。また、年度末という忙しい時期にも関わらず、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様に、卒業生を代表いたしまして、心より御礼を申し上げさせていただきます」

おいおい、目頭が熱くなってんぞ、稲葉……頼むから男泣きとかするなよ……

「……最後になりましたが、在校生の皆様、…私達がこの一年で蒔いた種を、絶対に絶やさないようにしてください。その種を育て、芽を出し、花を咲かせ、見事な樹へと育てる。それができるのは、在校生の皆さんしかいないのです。在校生の皆さんが、この種を育てる番なのです。…あなたにしかできないことがある。あなただからこそできることがある。私達は、皆さんを信じてます。皆さんが、種を立派な樹に育て上げられることを、心から切に願っています。……これにて答辞とさせていただきます。本当にありがとうございました」
「平成十七年三月一日 卒業生代表 稲葉高氏」



・再び三年五組の教室
なんだかんだで、卒業式は去年と同じような、いや、それなりに去年とは違った形のテンプレ通りに終わり、最後のHRが始まる。稲葉は答辞の大役を終えて、心なしか顔に疲れが見えているようだったな。他の生徒達も、卒業式が終わりホッとした顔をしているのが多い。俺はまだ、何故か緊張が残っているけど……。
で、多くの卒業生達は岡部先生が来るまでの間、稲葉に卒業アルバムに寄せ書きしてくれとお願いしている。稲葉はそれに嫌々することなく応じている。ホントいい人だよな。…って思ってる内にやって来た!

「卒業おめでとう」
「何だよそのテンプレ通りの言い方はよ!…とにかく、涼宮に話しつけてくれてありがとうな!…お前がいなきゃ、俺はこんなに真面目になれなかっただろうし、それに優しさや真面目さ、格好良くはないけど、どんなことでもそつなくこなす才能、どれか一つでも俺に与えて欲しかった…って思うぜ」
「はははは、ありがとう。君も大学生活は楽しくて辛くて大変だろうけど、頑張ってくれよ。途中で退学なんかしたら許さないからな…」
「WAWA、当たり前だろ!この学歴社会の中、せめて大学は出ないとどーしようもないからな!…だけどさ、そんな学歴社会が一番いけないと思ってるのは…俺だけか?」
「谷口だけじゃないはずだが…とにかく、今日はそんなのを考える日じゃないと思うんだけどな」
「そ、そうだな。変なこと言ってゴメンよ稲葉!HRが終わったらよろしくな!」
「……涼宮に聞こえてるよ。多分」
「WAWAWA」



そんな他の生徒から危うく白目で見られる(た)短い会話があって、稲葉は自分の席に戻っていく。卒業アルバムへの寄せ書きはほとんど終わったみたいで、あとはHRの終わりという、ある意味終末へと向かって落下していく。
これが終わったら、いよいよ涼宮に告白するんだな……。なんかある意味怖くなってきた。別にフラレるのは分かってるけど、拒絶されたときの怖さ、悲しさというのは、ナンパに失敗したときのそれよりも恐ろしく大きいんだろうな…。だったら告白せずに逃げてしまおうか…と、とんでもないことを一瞬思いついてしまいやがった。逃げちゃダメなんだよ、男なら正々堂々と告白して散るべきだ!俺の心にそう言い聞かして、岡部先生のはなむけの言葉を聞こう。まずはそれからだ。

「…三年間、本当にお疲れ様だった。お前達も色々と楽しいことや辛いこと、受験生にとっては放課後の補習やら朝の学習とかで本当に大変であっただろう。(中略)…人は、現実から逃げる事をついつい選びがちだ。だが、逃げ続けても特にいいことは起きないし、逆に世間から取り残され、破滅すら招く可能性もあるかも知れない。俺は、お前達にはそんな結末にはなって欲しくないと願っている。真っ正面から現実を受け止め、これからどうするのか、どうやってこの局面を乗り越えるか…。あまり大した手助けは出来んかもしれんが、もしも困ったことがあったり、この学校が懐かしくなったら、学校に電話してから俺の下を訪れればいい。俺は、お前達を信じている。お前達が未来を切り開いてくれることを本当に期待している。以上だ。お前達の前途に幸有らんことを」

岡部先生の最後の一言とほんの少し時間差を置いて、チャイムが鳴る。天国か地獄かどっちか分からんが、扉はついに開いてしまった…そういう感じだ。高校生活最後の礼が終わり、ほとんどの生徒は喜びと若干の不安の入り交じった笑顔としばしの別れの一言を友達や岡部先生と交わしながら教室を出ていく。俺はというと、涼宮が気になって気になって仕方がなくなってしまい、

「なぁ…涼宮!…校門で待ってるぜ!」

と、俺としては黙っているのが最善の選択肢だったはずなのに、声をかけてしまった。しかも大声で。なんて無様で無謀なことをやったんだよ俺!!おかげでクラスに残っている生徒ほぼ全員と岡部先生の視線が俺と涼宮に集まってるじゃねぇか!!…でも本当に何となくだが、みんなは「恋が実ることを期待して(や)るよ」っぽい感じだし、岡部先生に至っては見て見ぬ振りをしている。

「…谷口、朝『HRが終わったら校門の所で待ってなさい』って言ったけど、ここで何か言いたいのなら言ってもいいわよ。そんな大声で念を押すなんて、みんなの前で大切なことが言えるという度胸があると見てもいいわよね?」

涼宮はそれなり引き締まった表情で俺を見ている。つまりは『どうせ告白するんならここでやってしまいなさい』ってことか?慌てて俺はチャックが開いてないかどうか確認する。…うん、開いてないな。そうして覚悟を決めた俺は、緊張を隠しきれないまま涼宮に近づく。…そういやこの間に、成崎が稲葉に「友達から始めませんか」って言って、稲葉の奴、至極真っ当にOKを出してたような……こんちくしょう、モテる奴は羨ましいぜ!…と、とにかく、まずは中学時代の無礼から謝らなきゃな……。

「で、話って何よ?」
「…涼宮、とりあえず謝らなきゃいけないことがいくつかある」
「とりあえず聞いてあげるわ」
「あのさ…、中学時代、電話で強引にナンパしたり、とんでもなく失礼なことを言って、本当にすまなかった。…数年前のことになるけど、どうしても謝りたいと思ったんだ。『尻軽女』とか、『頭がおかしい女の子』とか、今考えなくても、本当に、本当に、俺も馬鹿で失礼で心を傷つけることを言ってしまった。……本当に、すみませんでした」
「…いいわよ。許してあげる。あの時は本当にはらわたが煮えくり返りそうだったけど、こうやって謝ってくれたのだから、もうあの事は無かったことにしてもいいわ。…ところでぐっちゃんも、もうちょっと素直になんなさいよ?そうした方が、もう少し格好良くなれるかも知れないし」
「あ、あ、ありがとうな…。お前にそう言われるなんて、予想できなかったぜ。…俺も昔は『超能力者はいない』と思ってたけど、古泉の奴とか、長門がそれっぽい事をやるたびに、いても別にいいじゃねぇかって思った。…古泉って格好いいよな。ホモっぽいところが玉に瑕過ぎて迂闊に近づけないのがアレだけどさ」
「ありがと。古泉は確かにSOS団の一員としては大切な存在だけど、…あたしも迂闊に言ったら迷惑をかけそうだからこの辺に留めておくけどね」
「あとさ…一年生の頃、キョンに対して『涼宮に近づかない方がいい』とか『関わるな』とか言っていたけど……、あれも本当にすまなかったって考えてる。…だけど、本当は、本当は……お前がキョンや古泉に奪われたくないからと思って、つい……」
「ぐっちゃん……。あんたって本当に馬鹿でアホだけど、一途すぎるその心意気や真面目さ、そして優しさ……輝くものがあったわよ。…い、いや、これは冗談で言ってる訳じゃないからね…」

…俺が涼宮に対する謝罪から始まった、恐らくは告白へと続くと思う二人の会話を、教室に残った生徒も、岡部先生も、誰一人帰ることなく真剣に聞いているじゃねーか!…それどころか噂を聞きつけた他のクラスの生徒達も、教室の外の窓から見ている。もうダメじゃんかよ!謝るとこだけはここでやって、告白は校門で……と思ったが、もうここで告白するしか…ないな…。愚かにも神に突っ込む俺を許す奴なんて…いる訳無いよな……。



「おやおや、五組の教室で何の騒ぎですか?担任の岡部先生もじっと見ているようですし」
「…谷口が涼宮に告白してるんだよな。今は昔やってしまった馬鹿なことを謝罪して許して貰ったところらしい」
「教室の生徒や先生も巻き込んでの公開告白ですか。僕だったらあまりにも恥ずかしすぎて、やろうとする勇気も持てないですけどね。若さ故の過ちというか何か……。とにかく、幸せに出来なければ、僕としても説教しなきゃいけませんかね。谷口君には頑張って欲しいですよね…」
「そーいうお前もホモ疑惑のフラグが立ちまくりなんだけどな。谷口にも言われてたぞ」
「…僕は同性愛者じゃありませんよ。むしろ好きな人はいるんですけどね……」



「あのさ……涼宮。これから本題に入るけどさ…。……どうしても、どうしてもお前を諦められなかったんだ。お前の笑顔に惹かれて、お前の行動に冷や冷やさせられつつも、それでも、どうしても、お前の存在を嫌いになれなかった俺がいた。お前の全てに見取れてしまったんだ。惚れちまったんだ。…俺の前だけで、200ワットくらいのとびっきりの笑顔を見せて欲しい……。そう思うんだ。……涼宮。お前が本当に好きなんだ。ずっとお前だけを見ていたい。俺だって、他の女を好きになるなんて馬鹿な真似は絶対にしないと誓う。だから…、俺と…俺と付き合ってくれ!!」


つづく
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ある平行世界での可能性①『どうしても、お前を諦められなかったんだ』 その2

2007-09-24 18:45:03 | 涼宮ハルヒの二次創作
・卒業式当日の朝
チャカチャラチャカ ピッ

携帯電話の目覚ましのアラームで目が覚めた。特に身体に変化もないし、周囲も変化はない。
今日は高校生活最後の日(恐らく)、そして卒業式。
思えば長くて以外と短い三年間だった。いろいろと出来事もあったし、恋心も芽生えるようなことも…って、

「稲葉、朝早いけどお客さんがおいでよ~」

母の声が聞こえる。「まだ起きたばっかりなのに」と言いつつ、まだ覚めやらぬ目を擦りながら制服に着替えて部屋を降りる。
「昨日の夜は答辞の練習をやってたから少し寝不足なんだよ」と冗談交じりに喋って視界に飛び込んできたのは、玄関に立つ涼宮さんとキョンの姿だった。

「やっほー、稲葉!…って、こういうのも今日で最後なんだよね。とにかく、泣くんじゃないわよ稲葉!笑顔で卒業式を迎えなさい!」
「今日はわざと朝早く来てやったんだぞ、稲葉。…母には迷惑かけたかな、多分」
「まぁ、そうだけど。別に今日は市議会の開会日でもないし、母も卒業式を見に来るみたいだから。…ところで、一見するとキョンと涼宮はカップルみたいだね、ふふ」

よく見てみると、今日の涼宮さんは頭をポニーテールにしている。今となっては少し苦い思い出だったけど、初めて見たときは自分も結構興味を抱いてしまったかな。
それと、涼宮さんのあの元気な笑顔。あの笑顔があったから、自分はこの三年間を走り抜けられたんだと思う。
そりゃ、入学当初の奇行といえる数々には半ば呆れそうになったし、(女性を差別する気はないけど)野球大会に出ろって言われた時は行動力が凄いのか、それともただ単に興味があっただけなのか、
突飛すぎてどうすればいいのか分からなかったけど。

「…ば、馬鹿言えよ稲葉。偶然ハルヒと会ってそのままお前を迎えに来ただけであって。そういうお前はどうなんだよ、彼女はできる気はしたか?」
「とりあえず涼宮さんに聞いてください」
「じゃあいい?稲葉ったらね、昨日の夜電話であたしに突然告白してきたの!だ、だけど、好きな人がいたから諦めて貰ったんだけどね……。生徒会長としては珍しい形の告白だったわ」
「夜に稲葉から電話がかかってきて教えてもらtt」
「そ、そりゃ、卒業するし、こ、ここで告白しないとダメかなと思って……///でも、後悔はしてないよ。後悔なんてしたらダメだって、幼い頃から両親に言われ続けられたから。『自分の意志を貫け』とね」
「そりゃありがと」
「でさ涼宮、『好きな人がいる』って言ってたが、一体誰が好きなんだ?すぐにバレるのは分かるが、先に俺達だけにでも教えてくれないか」
「もぅ…//谷口よ、谷口こと『ぐっちゃん』。あたしね、二年前とはガラリと変わった谷口の頑張りぶりとか、行動一つ一つから沸く優しさとかに惹かれてしまったわけなのよ!あいつとなら、結構楽しい大学生活が過ごせそうだし、結婚できたら、ふつーの家族になるけど、そこそこ幸せな未来が見える。そんな気がするのよ」
「あのさ、涼宮。確か一年の自己紹介の時に『普通の人間には興味がない』とか言ってたke」
「確かにあのときは興味はなかったわ。でも、宇宙人、未来人、超能力者を見つけてしばらくしてから、別に普通の人間と付き合ってもいいんじゃないかな…と思うようになったのよ!そりゃ、ぐっちゃんはごく一部を除いて普通の人間だけど、中学時代に欲望剥き出しでナンパしてきたことを謝ってくれれば、…つ、付き合ってあげてもいいなって思うわ//」

涼宮さんの浮かれ具合と、朝なのに早くも赤く染まってた彼女の頬をまじまじと見る自分。…そりゃ幸せだろうけど、谷口は本当に涼宮さんの想いを受け止められるんだろうか?と思うとちょっと首を傾げたくはなるな。彼には悪いけど。だけど、谷口の恋を実らせてあげたいのは自分もそうだし、キョンだってそう思ってるはずだ。だから相当迷惑だと思うけど、お前の告白を見守ってやろうかって思うが、いいかな?

「稲葉、朝食ができたわよ~。キョン君に涼宮さんも召し上がったらどう~?」
「え、いいんですか?それじゃあありがたく頂きますよ」
「稲葉のママって凄く優しいよね。あたしのママと性格は瓜二つだし」



「どうもありがとうございました。俺は涼宮が家を訪れてきてそのまま出てしまったから朝食を取ってなくて」
「涼宮さん、せめて連れて行く際は食事は終わったかどうかくらいは聞くものだと思うけどね。夕食時ならともかく、朝食というのは死活問題なんだけど」
「わ、分かってるわよ稲葉の母さん!一秒でも早くキョンを連れて稲葉の家に行きたかったから、つい、朝食を取ってるのか取ってなかったのか聞いてなかったから…ごめんなさい」
「別にいいよ。腹は減ってもコンビニとかで何か買ってしまえばいいし…、あ、今日はわざわざ朝食を作ってくださってありがとうございました。コーヒーも、紙パックに入ったそれよりも格別でした。手作りというのはすごくいいですよね」
「どうもありがとう。また暇があったら連絡して来てくださいな。ある程度の食事も用意できるから」
「ありがと、稲葉と母さん。今後は立ち寄る事はないと思うけど、万が一の時はよろしく!ってね。…じゃあ学校に行くわよ!」
「はいはい。じゃあ母さん行ってきます。卒業式に来てくださいね。自分、答辞役を任されましたから」

そう言って、自分は二階に上がり、放置していた学生鞄を持って、涼宮さんとキョンと共に最後の通学に出た。

「この通学路を通るのも今日で最後なんだよね…。そう言えば、あたし達は兵庫県立大学に、稲葉は神戸大学へと進学して少しバラバラになっちゃうけど、この絆は絶対に切らさないわよ。SOS団はまだまだ続こうと思ってるし、団員じゃないけど、稲葉も時々生存確認のためにメールしてきなさいよ!そして年一回くらいは、みんなでパーティを開くから、絶対に来なさいよ!来なかったら罰金だからね!」
「生存確認って…。分かりましたよ。でも授業中とかバイト中とかはメールは控えて欲しいなとは思うけど。あとはパーティには必ず行きますよ。食材とかも持っていきますから。もし暇が出来たら、SOS団の不思議探検に一緒に行っても…良いかな?」
「お前もSOS団の楽しさが身にこびりついたのか?お前としては意外とアブノーマルな発言だな。…まぁ、暇だったら来いよ。新しい拠点とか見つかったらメールとかで連絡してやるからさ」
「本当にありがとう。…本当にありがとう。あなた達と出会って、本当に良かったと思いましたよ…いや、本当に」
「連絡が来たら、余程のことがない限りは絶対に来なさいよ、団長命令だからね…。そして…、あんたも意中の人が誰だか知らないけど、素敵な恋をしなさいよ…。あんたも結婚して、すっごく可愛い子供を儲けて、幸せな家庭を作って欲しいからね」
「え、え、え、え、e」

自分がとっさに「まだそう言うのを考えるのは早いと思うけど」と言おうとしたが、自分の視界にそれなりの勢いで走っていく人の姿を確認して言うのを止めてしまった。その人は谷口だった。彼は自分たちの約10m位前に止まると、

「おはよう!稲葉!キョン!……涼宮!!…お前達泣くなよ!泣くのは家に帰ってからでいいんだぜ!」
「ふふっ、おはよう、谷口…じゃなくて『ぐっちゃん』!あんたの話聞いてあげるから、HRが終わったら校門の所で待ってなさいよね…」
「え?いいのか、涼宮……だけど俺のことを『ぐっちゃん』と呼んだりして、なんかしおらしくなってねぇか?」
「…だ、だから、あんたの話は聞いてあげるんだから、そういった事は無かったことにしてくれない?とにかくあんたも泣いたら死刑…とまでは行かなくてもビンタさせて貰うわ!だからね、高校生活最後のイベントなんだから、笑って卒業しなさい!」
「お、おう…。じゃあ先に教室で待ってるぜ!みんな!」

そう言って、谷口はハイキングコースになっていた長い坂を走って上っていく。…半分くらいの所でぜぇぜぇと息を切らせて立ち止まって歩いてしまってるけど。
空は今にも、雪が降り始めそうな雰囲気を醸し出していた。…何となく、悲しそうな気配すら漂わせて。

「「今日も元気だよな谷口は」」




・三年五組の教室
…俺は、ただ単に椅子に座って朝のHRが始まるのを待っているだけなのに、何故か緊張してくる。
窓際ではキョンが同じく早めに登校していた古泉と他愛のない会話を繰り広げている。涼宮は楽しそうに、教室に来た生徒達におはようの挨拶をかけている。
稲葉は…自分の机との最後の別れを惜しんでるかのように、机の上で寝ている。端から見れば「肉体は残っているタダのしかばね」の様だ。
本当に卒業なんだよな……この三年間で俺もずいぶん変わったもんだな。涼宮に好かれたいから真面目に勉強するようになったし、ナンパもやめた。ついでにちょっとは女の子からモテるようにもなった。…けど、俺は涼宮にしか恋心を抱けなかった。何故か、どうしても諦めきれないんだ。せめて5分以上付き合ってみたい。高校一年の時はいろいろとキョンに対して「あいつと関わらない方がいい」とか「なんであいつと関わろうとするんだ」とか涼宮の前で言って、心を傷つけたと思っている。けど、どうしても「涼宮と付き合いたい」という感情が、俺の中で渦巻いていた。キョンにも、古泉にも、稲葉にも、涼宮を渡したくないと思ったんだ。ダメだったらそれで構わないし、もし付き合ってくれるのなら、アホで馬鹿だけど、一途にお前だけを愛し続けてみせるからさ……
って、またキャラが変わってないか、俺!?ともかく、俺は…もうすぐ卒業なんだよな…

「やぁ谷口、卒業おめでとう」
「WA…山根じゃねーか!卒業おめでとう!」
「お前もずいぶん変わったよな。まさか大学受験までやって後は合格発表待ちになるなんてな…。僕も驚いたさ。あらゆる意味で」
「おいおい、そんなに俺がニートかアルバイターになるとでも思ってたのか?きつい冗談はよせよ。俺だってやるときはやるし、涼宮だって志望は大阪の大学だったらしいけど、『みんなと一緒にキャンパスライフを過ごしたい』ってことで数ランク下の兵庫県大を選んだって言ってたな。あいつ、本当は人思いなんじゃねぇか?って思ったぜ。…だけどさ、お前とはしばらく別れ別れになるのが、ちょっと辛いけどな……」
「もしかしたら今日が最後の別れになるかもな…。まぁ同窓会には行くと思うし、弁護士を目指す僕でも気晴らしは必要だと思うからさ。その時は大学での出来事とかじっくり聞かせて貰うから、よろしく頼むよ」
「あ、ああ…。そっちも弁護士目指して頑張ってくれよな、俺は大学を出たら進路をどうするか分からないけどな」
「ところで谷口君、…どうでもいいかも知れないけど、緊張しすぎだよ」
「WAWAWA、わ、分かってるって。今日が卒業式だし、いろいろ思い出に耽っていたら何故か緊張していて…」

…そういや、大学を無事に卒業できた後はどうするか全然考えてなかったな。とりあえず俺の親父はビジネスホテルの経営者であるわけで。商売的にはちょっと苦戦しているみたいだけど、リスクを背負って親父の事業を引き継ぐのも悪くない…かもな。大学に入るのも経営のノウハウとか、…あまり気に食わないけど、学歴社会であるが故に、大学に入って就職しないとまともな職に就けないからだな。…余裕が出来たら、教員免許でも取って北高の教師になるのも…ああ、もうどうでもいいや。とりあえず、この卒業式の日を満喫しようじゃないか!

「よーし、HRはじめるぞー」
「とりあえず君たち、卒業おめでとう。…これからもだが、変に暴走したりして人生を台無しにするんじゃないぞ。とにかく、お前達ならその心配は無用だと思っているが…」

気が付いたら最後の朝のHRが始まっていた。俺は何故かまだ緊張している。…涼宮に告白するのが影響しているんじゃないかな、と思うくらいに。ど、どうせ、フラレる訳なんだからそれでいいわけだし、別に緊張することでもない…はずなんだが。
そんな俺は、涼宮が少し気になって視線をそっちに移す。ほんの少し引きつった顔で岡部の方を見ていた。…あいつも、結局は卒業するのが寂しいんだろうな。大学はSOS団のメンバー全員、同じ大学に行くというのは分かってるけど、…この高校の思い出を忘れたくないんだろうな。きっと。


つづく
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ある平行世界での可能性①『どうしても、お前を諦められなかったんだ』 その1

2007-09-24 18:44:23 | 涼宮ハルヒの二次創作
「俺、卒業式が終わったら涼宮に告白するんだ」



『ある平行世界での可能性① どうしても、お前を諦められなかったんだ』



・卒業式前日の三年五組の教室
卒業式の前日、最終練習が終わってからのHR前に、突然こう切り出してきた谷口。
自発的に死亡フラグを立てたのかよ谷口。そしてこれで何回目の告白なんだよ谷口。
いい加減…諦めたんじゃなかったのか?それとも、最後に壮大に打ち上げ花火を打って散るつもりか?
俺はただただ、コイツの某政党の元代表のキャッチフレーズだった「日本を、あきらめない。」を実践するような真剣そうな顔に半ば呆れそうだったな。

「谷口、君は本気かよ?ハルヒへの想いはよく分かるけど、…まぁ、いいと思うけどね。やるべきことをやって、潔く散ればいいと思うよ」
「それって…ひょっとしてギャグでi」
「ギャグなんかじゃないけどね。まぁ、僕もそれなりに応援するつもりだから。…頑張れよ」

俺の友達(と言っても、強引に仲間の輪になれと誘っただけだが)の稲葉も、『はいはい無理無理』とさじを投げやがった。
そんなに俺の高校時代最後のイベント(勝手に定義)が、「間違いなく失敗する」と勝手に決めつけるんだよ!?
俺は覚悟は決めたんだ。涼宮に告白して…、ダメならダメだった、良かったら良かったでいいじゃねーか!
だからよ、せめて涼宮に誰か、一言かけて……

「…涼宮さんには僕が伝えておくから。『最後のHRが終わったら、校庭に来てください。谷口君から話があるそうです』って。あとはお前次第だけどな」
「稲葉、お前もハルヒが好きだったんだな?真面目に言っても顔にはそう書かれてるぞ」
「確かに好きだったけど、…他に想っている人がいそうから、遠慮した。それだけだよ。というかキョンとハルヒはお似合い」ガッ
「俺は阪中さんと付き合っているのに、何頓珍漢なことを言ってるんだよ?浮気なんて御法度だし、『不倫は文化だ』と言ってた人と同じだと思われたくないしな」
「…とにかく、涼宮さんには伝えておくから。…だからさ、だからs」ガッ
「稲葉、お前には夢があるんだろ?遠慮するようじゃ夢は(略」

あー、稲葉とキョンが口喧嘩してるぜ。まぁ真面目すぎるアイツとキョンの間では「よくあること」で済まされるけどな。
…でもよ、伝えてくれるってだけでも本当にありがたいぜ!稲葉!お前と友達になれて本当に嬉しい!…本当は嫌々だったかもな。すまん。
だけどな稲葉、お前も早く正攻法で彼女を作れyo…

「ところで谷口、涼宮さんに伝えておくと言ったけど、ちょっと条件がある」
「何だよ稲葉?」
「一つ、もし告白が成功したら浮気を絶対にしない。二つ、失敗してもこれからは絶対にナンパしない。そして三つ目…」
「WAWAWA、あ、当たり前じゃねーか!俺は…俺は、一年の頃に見事にフラれまくってからナンパしなくなったじゃんか。それに、無言で学校を後にするよりかは、何か一つ、好きな人に告白して、潔く散って高校生活を終わらせた方が…いいに決まってるじゃないか」
「ふぅ、谷口もあれ以降何かキャラが変わったように真面目になったよなぁ。本当に革命的だったよ、真剣に物事に取り組んで、真面目に授業を受けていた。…二学期はじめはいつも居眠りすることが多かったけどね」
「バレンタインデーのチョコの数はあんまし増えなかったけどな。とにかく条件、全部受け入れておくぜ。あとな、稲葉」
「何だよ」
「俺も告白するんだから、お前も早く彼女を作れよな?生徒会長という地位だったのに、お前のユーモアぶりの無さは歴代生徒会長一と呼ばれてたくらいだし。昨年の生徒会長はいつも隣に喜緑とかいう女の子がいて噂には困らなかったよな…」
「…朝倉さんが好きだったけどね。あの人はカナダに留学しているそうだけど、もう帰ってきてもいい頃だと思うんだ。少しだけど『逢いたい』と思うし。だけど…あんまり夢想するのもアレだと思うし、忘れてしまおうとしているけどね…」
「稲葉…」
「とにかく、僕から伝えておくから。…頑張れよ」

…まぁ、俺は谷口の最後の告白を、生暖かく見守っておくことにするかな。ほどほどに頑張ってくれ。
それにしても、生徒会長の稲葉は本当に生真面目だったな。スポーツ系部活動費の増加の実現とか、SOS団擁護とかいろいろと生徒達のために頑張ってたという印象があったけど。
俺だってお前に感謝しているさ。


・その日の夜
トゥルルルルルル トゥルルルルルル

「はい。涼宮です」
「同じクラスの稲葉ですが、涼宮ハルヒ様はおらっしゃれru」
「こんばんは稲葉。あたしに何の用?いたずらだったりしたらすぐに切るからね!!」
「…あの、言いにくいとは思いますが、谷口君から連絡があって」
「そう?じゃあてきぱきと言いなさい」
「…『明日の卒業式終了後のHRが終わったら、校庭に来てください』以上です」
「…ありがと。ところであんた、好きな人はいるの?それとも、明日、告白する人はいるの?」
「…いないですよ。いないというか、学校の外に、告白したい対象はいるけど」
「ふーん。誰かは聞かないけどね。…あと、卒業前に一つ言っておくわね。SOS団の存続に力を貸してくれてありがとうね、稲葉。あんたがいなければ文芸部室を没収されて、あたしも世界に絶望するところだったわ」
「ありがとうございます。僕としても一年の時の奇行というか…涼宮さんの行動力には驚いたよ。結成されてから数回ぐらい部室を訪問して、PCで県議会のネット中継も見てたしね」
「そういや、あんたの父は県議会議員だったわね。その生真面目ぶりと機転の効かせ方は父親譲りだよね。あんたに投票して本当に良かったわよ。普通の人間だけど、何となく普通じゃない感じがして」
「…どうも。涼宮さんにこんな事を言われて嬉しいなと。でも、…突然だけど、ちょっと言っておく事がある」
「なによ」
「…僕は、その、あの、…涼宮さんが、…好きでした。変な人だと入学当初は思っていたけど、時間が経つ内に恋心が芽生えてきてしまって……。涼宮さんの笑顔で、僕はそれなりに幸せになれたときもあるし…。もっと涼宮さんの事が知りたかった。だかra」
「(何よその過去形に丁寧な言葉使い…)大丈夫よ、あたしはあんたの事、感謝はしてるけど、個人としては好きでも嫌いでもないから。…ごめんね。だけど、あんただけに言っておくけど、逆に明日、告白されたい(したい)人はいるんだよね…」
「わ、分かってるよ!(ちょっとというか、結構ショック…)…じゃ、じゃあ、涼宮さんの親にも迷惑をかけますからもう切りますね」
「ふふふ、あのね、まだ切らないで。…あたしにちょっと嫌われてショックだった?それともa」
「(ふぅ…)…明日の谷口君の主張というか、思い、しっかり聞いてくださいな。全て聞いてから、拒否するなり、受け入れるなりしてくださいな。じゃあ」
「…ち、ちょっと!あたしの好きna」ガチャ

…稲葉、あたしの想い、既に気づいちゃってたのかな?
確かに谷口は昔はナンパばっかりして、ズボンのチャックは閉めていたと思ったら瞬間的に開いてたり(凄く謎だったわ…)、周辺の女生徒からは結構嫌われていたわね。
けど、二年生になったあたりから結構真面目になってナンパをキッパリやめちゃったり、目標の大学に入学するために勉強も頑張るようになっていった。でもチャックの件は直らなかったけど…
ある意味稲葉が少し軟派になってるような気もした。ネタ候補だと思われていた生徒会長選挙でもそこそこ健闘したしね。とりあえず谷口君、あんたの「主張」、聞いてあげるわ。
…そして、高校生活も明日で最後か。学校のみんなに(多大な)迷惑をかけ続けて、本当にごめんなさい。
それと稲葉君、三年間ありがとう。けど…、あんたは真面目すぎるのよ。だから付き合いたいとは思ったけど、あまりにも真面目でユーモアがないから、あたしには似合ってないと思ったのよ。…でも、あたしはあんたの事は応援してるから。夢を実現させるために頑張ってよね…うん。
……そう、明日は髪型、どうしようかな…。高校最後の日だし、ポニーテールでもいいかな。





「……キョン、僕、生徒会長としての一年、そして、いろいろと面白くも恐ろしい高校生活がようやく終わったかな」
「稲葉、お疲れ。お前の生真面目ぶりと成績の優秀ぶりはちょっと呆れたけど、生徒会長としての手腕は凄かったな」
「北高を兵庫上位のスポーツ優秀校にしたかったからだし、奇跡的に鶴屋家の支援もあったからね。それと、SOS団も教師達が黙認してくれたし、生徒達にも会誌でアピールできたのが大きいかなと。…そして涼宮さんへの電話が終わって、一息が付けたと」
「そうか。…だけどな、まさか、稲葉、俺が好きだとか?…だから『アッー!』だけはやめてくれ、本気で」
「はははははははは、僕にその気はないですよ!僕にその気があったら女子生徒からチョコは来てませんし『キモい』の連呼で鬱になりますよ!…でもですね、別に成績なんかに嫉妬する必要はないと思うけどね」
「俺も大学に入るために、ハルヒに家庭教師まがいに手伝って貰ったし、補習も結構受けたんだぞ?そりゃ少しは嫉妬したくもなるさ」
「ところでキョン、僕、涼宮さんに告白しちゃった。駄目だったけど」
「あは、ははははは(やっぱりなのか、これ?)」
「じゃあ、また明日学校で」
「明日、思わず号泣するなよ、稲葉」
「キョンもな。じゃ」ガチャ

…恋は卒業前日で散ってしまった。けど、涼宮さんの滅多に聞けない優しそうな声が聞けたのと、明日への道筋を一応開けただけで、自分はもうどうでも良くなってきた。
本当は朝倉さんがいれば、思いっきり告白したかったけど、…いつか適うはずだからもういい…訳ないか。でも何となく逢いたい。もう一度、朝倉さんの笑顔に逢いたい。
明日も早いことだし、おまけに答辞もする事になっているし。僕としちゃ、答辞の本文はうまく書けたかなと思ってるけど…。
そう考えながら、僕…いや、自分は、眠りの世界の入り口へと入り込んでいった。




「親父、卒業式を迎えたときはどんな感じだった?」
「まぁ…思わず号泣しちまってな……。卒業式後も泣きしゃくってしまい、おかげで想いを伝えるつもりだった今の嫁に一言もかけられなかったな。今思うと、『チャンスを逃せば、回り道をしなければならない』のを具現化している様だったがね」
「うわぁ…結構モテモテだった父さんらしくねぇエピソードだな」
「人生チャンスばかりじゃないぞ。というかお前はいつもピンチどころか風に流されっぱなし、おまけに17歳の誕生日まで女にナンパばっかして、勉強も真面目に出来ず、危うく未来に絶望しているところだったぞ」
「そ、それは……ごめん。だけどさ、クラスメイトのみんなのおかげで俺も大学受験できるとこまでできたし、ほのかに想いを持っている女の子もできた。…その子、学校に入った頃は奇行ばっかりで興味を失ってたし、そっちから話しかけられても素っ気なくスルーしたり、傷つけるようなことを言ってたりしていた。…それらの事も明日、まとめて謝っておきたいと思うんだ」
「お前が誰に惹かれているかどうかは知らんが、まぁ、適当に頑張って大学に受かっていれば、俺は嬉しいんだがね。…そろそろ寝る時間だが、明日は感極まって号泣なんて、馬鹿げたことはするなよ。あと、想いを告げるときは、勇気を振り絞れ」
「はーい…おやすみなさーい」

俺、もう覚悟は出来たぜ。どんなことがあっても涼宮に想いを告げるってさ。
キョンが(呆れながらも)応援してくれるし、稲葉だって(少し嫌々ながらも)涼宮に声をかけてくれ…たと思う。親友ってもんがいて、本当に良かったと思える…はずだ。
…あの頭に付けている黄色いカチューシャとリボンを見るたび、何となくだが生きる勇気や壁に立ち向かう力を与えてくれた気がする。
…お前が人差し指を向けて、100ワットの微笑みで何かを言ってお前の友達をからかっている姿が、何となく魅力的に思えてくる。
確かに俺は普通の人間だ。超能力者を否定する気はないし、くしてや宇宙人や未来人というのはいると分かっているし。
かと言ってそんなに腕っ節は強くない。喧嘩なんかされたら一方的に殴られ続けるかも知れない。それでもいいのなら……
…その明るさを、その勇気を、俺だけに与えて欲しいんだ…。中学時代に突然電話でナンパしたこと、失礼なことを言ったのは本当にすまないと思っている。
ましてや高校時代も、いろいろとお前を遠ざけようとした発言ばかりして心を傷つけたかも知れない。だけどこれからは、お前とは優しく接していくからさ。
…とにかく涼宮、お前が好きなんだ!付き合って欲しいとは言わない、俺の想いを聞いて欲しい……
WAWAWA、というかキャラが若干丸くなってる気がする!恋というのはキャラまで変えてしまうのか!?





『兵庫県南部の明日は、東の風やや強く、後に西の風となり、くもり、昼前から雪、所により一時的に強く降るでしょう。沿岸の波の高さは……』


つづく
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